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召喚から始まる人生二周目〜今度の召喚は赤子から!?〜  作者: 谷口 水斗
学園 初等部編

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19/21

19 神器

こんな話タイトルですが神器はあまり出てきません


「───メアリ嬢?」


そんな声が聞こえた。ルークの声だ。

私はどうやら⋯気を失っていたようだ。


「目を覚ましてよかった」


気を失っていただけで大げさな。大したことは⋯


「君は丸2日、目を覚まさなかったのだ。よかった。本当に⋯」


その言葉を聞いて思わず私は飛び起きた。


「⋯⋯2日?」

「あ、あぁ。そうだが⋯」


飛び起きたせいで身体が痛い。また横になる。


「君はニーシャ殿より重傷なのだから安静に」

「⋯あの後、どうなったんですか」


気を失ってしまったために、あの神器とその所有者の処遇に関われていない。わざわざ生かしたのだから、殺されていなければいいが⋯


「あの剣はミレーヌ家が回収したよ。マーシャが動いてくれてね。それを持っていた女の子はそこにいる」


言われるがまま横を見るとベッドの上にあの女の子が寝かされていた。


「マーシャは剣がほとんどの力の源だろうと言ってね。遠ざけておけば問題はないと思われるから、拘束はしていない」


確かに拘束具の類は見えない。彼女は今は寝ているようだが⋯


「彼女もまだ⋯起きていないんですか?」

「いや、一度起きているよ。ただすぐに眠ってしまってね」

「そうですか⋯」


彼女を見つつ、私は自分の怪我の状況を調べた。

骨が何本か折れているようだ。後は血が少し足りないぐらいか。


「⋯魔法で怪我を治したら怒られますかね?」

「その怪我を治せるのかい⋯⋯?」

「えぇ、まぁ⋯これぐらいなら」


欠損を治せるのに骨折ごとき治せないわけがない。


「私としては構わないが⋯それでも安静にはしておくべきだろう」

「それはそうですね⋯骨折を治せても足りない血はどうすることもできませんし、ダメージがゼロになるわけでもありませんからね」


とりあえず少しも動けないのが億劫なので治すことにする。


「君には使えない魔法とか無さそうだね⋯」


ルークに苦笑いされる。確かに適性外の魔法は使いにくいし、魔力消費も適性がある魔法よりは多い。

が、使えないわけではないのだ。


「使えない魔法なんて理論上存在しませんよ」

「はは⋯君の魔法に対する視点は既存とは少し違うようだね」


ルークとそんな会話をしていると、病室のドアが開いた。


「⋯メ、アリ」


フェル兄上だった。起きている私を見て呆然と立っている。


「おはようございます、でいいでしょうか」

「今は真っ昼間だけどね⋯」

「メアリ!」


フェル兄上が抱きついてきた。治したからいいものの、骨が折れてた重傷者なのをわかっているのだろうか。


「フェル殿」

「あ、すまない⋯」


申し訳なさそうに離れるフェル兄上。あまり表に出さないだけで、私への愛が一番重いのはフェル兄上だと思っている。


「大丈夫ですよ。ついさっき魔法で治したので」

「そんなに高度な光属性魔法が使えるのか⋯凄いなメアリは」


心底、安心したような顔をするフェル兄上。


「すまなかったメアリ。我々があれを止めていればこんなことには⋯」

「⋯⋯フェル兄上のせいではありませんよ。自分を責めないでください」

「⋯⋯⋯」


苦虫を噛み潰したような顔をしている。フェル兄上は責任感が強いから、こういう時自分を責めて追い込んでしまいそうだ。

かといって言えることも無いのだが⋯


ルークはあの時のことをどう報告したのだろうか。ありのままに伝えられていたら困るが⋯


「メアリが目を覚ましてくれてよかった。ずっと心配だったんだ」

「心配してくださりありがとうございます」

「先に起きたニーシャや家に、お前が起きたことを伝えよう」


フェル兄上は見舞い品を置くとそう言った。


「ありがとうございます」

「あぁ。また来るよ」


忙しい中無理矢理時間を作って来ているのだろう。


「一昨日も昨日も彼は来ていたよ」

「でしょうね」


フェル兄上は、というか私の兄上たちはそういう人たちだ。


「⋯殿下、あの時のことは──」

「誤魔化しておいたよ。あまり知られたくないだろうと思ったからね」

「ありがとうございます」

「でも、せめて私だけでも知っておきたい。全てでなくても良い。少しでも教えてもらえないだろうか」


隠してくれたお返しとしては妥当か。


「あの剣⋯あれは神器です」

「神器?神の武器ということだろうか」

「神が作った物ですね。武器だけではないですよ」

「なるほど⋯」


神が作った物ならなんだって神器だ。武器が多いのは事実だが。


「まぁ⋯あの神器はこの世界の神の神器ではありませんが」

「主神マーラカルト様の物ではない?」

「えぇ」

「ならなぜこの世界に⋯」

「聖教国の聖女にでも聞けば分かるんじゃないでしょうか」


神の声が聞こえるという聖女。その者ならあの神(主神マーラカルト)の声も聞こえるだろう。


「君はどうしてあの神器のことをそんなに知っているのだろうか」

「魔力がこの世界のものとは少し違うことと⋯神殿で感じる神聖さとはまた別の雰囲気を感じたからですかね」


前者は本当だが後者は適当だ。


「そうか⋯なら、君が持っていたあの剣⋯あれは一体⋯」

「東方の国で使われる刀という武器です。あれは少し特殊なものですが⋯」

「⋯それ以上は聞いても答えてくれなさそうだね」


そのとおりだ。これ以上言う気は無い。


「どこからともなく出したことを聞くのは大丈夫かい?」


異空間収納か。難しい魔法だから説明したところであまり意味は無いのだが、特に隠す理由も無い。


「異空間収納、という魔法です。教えてもいいんですが多分使えないので⋯」

「隠しはしないのか」


ルークが意外そうな顔をしている。


「使う難易度がとても高く、まず無理なので教える意味が無いんですが、隠す理由もあまり無いんですよ」

「なるほど⋯そう言われると逆に知りたくなるな」

「そういうものですか」

「そういうものだ」


そういうものらしいので、過去に書いた異空間収納の魔法理論をルークに渡す。紙束が出てきて少し顔が引き攣っていたが、逆にやる気が上がったようだ。


そんなことをしていると、部屋の外からドタドタと足音が聞こえてきた。


「メアリ!」


お父様が飛び込んできた。その後ろにはお母様も居るようだ。


「目が覚めてよかった!ずっと心配していたんだ」

「ご心配をかけてすみませんお父様、お母様」

「いいのよ。あなたが生きていたらそれでいいのよ」

「あぁ。生きていたらなんだっていいんだ。本当によかった」


お父様にもお母様にも、目の下に隈が見える。

心配のあまり、よく眠れていないようだ。


「骨折は魔法で治したので、数日で問題なく活動できるようになると思います」

「そうか⋯しっかり治すんだぞ。この病室はフェルが用意してくれた部屋だからな。長く使っても大丈夫だろう」


そう言われるとさっさと出たくなるが、その子を放置する気も無いので、長く居ることになりそうだ。


「その女の子については殿下から聞いたか?」

「一応どういう形になっているのかは聞きました」

「そうか。メアリはその子をどうしたい?」

「そうですね⋯話を聞かない分には決めることは出来ませんね。あの剣をどこで手にしたのか⋯記憶があるのかどうかも」

「それもそうだな。一応、危険は無いはずだ」


内包魔力が多くないからな。もう一度あの剣を手にするとかしない限りは大丈夫だろう。


「あ、お母様」

「なにかしら」


処理などに追われて忙しいらしく、来たばかりだが帰ろうとしていたところに声をかける。


「ある鍛冶師に特注で剣を打っていただいてるんです。すぐでは無いでしょうがもしかしたら屋敷に届けに来る可能性もありますので⋯」

「分かったわ。もし届けに来たら、取りに行く旨を伝えておくわ」

「え?いや⋯」

「自分で受け取りたいでしょう?」

「それは⋯はい」

「じゃあ、あなたが帰ってくるまでに来たらそう伝えておくわ」

「⋯ありがとうございます」


自分で直接受け取りたいというのは思っていた。が、見抜かれるとは思っていなかった。

⋯⋯⋯改めて、良い家族に恵まれたなと実感した。


両親が帰ってしばらくすると、女の子がもぞもぞと動き始めた。

そろそろ起きるだろうか。


私はベッドから降りてその子の側に行く。

横を向いていたので、顔の前でしゃがみ込みなんとなく顔を見つめる。


「なにをしているんだい⋯」

「なんとなくです」


ルークにそう返答した時、女の子が目を覚ました。


目覚めたら目の前にあるのは私の顔。私は微笑んでみた。


「⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯」


数秒見つめ合った後


「──────!!!」


言葉にならない声をあげながら女の子がびっくりしてベッドから転げ落ちた。


「だ、大丈夫かい!?」

「そんなに驚きますかね⋯」


ルークが慌てて側に行くと、女の子は縮こまって震えていた。


「ど、どうかいのちだけはゆるしてほしいのです⋯」


命乞いだった。


「私のこと、覚えてますか?」

「ひっ」


覚えてるようだ。神器に飲まれ自我があるようには見えなかったが⋯


「そんなに怯えなくても。何もしませんよ」

「ほ、ほんとうですか?」

「えぇ。何もしません」

「⋯⋯⋯」


恐る恐る顔を上げる女の子。まだ恐怖の色は見える。


「まず⋯名前を教えてもらってもいいですか?」

「なまえ⋯?」

「はい。あなたのお名前を⋯」

「⋯⋯⋯」


まさか名前が無いのか?

どういうことだ⋯


「なにか⋯こう呼ばれていたとかありませんか?」

「しぐま⋯」


シグマ?ギリシャ数字か?


「シグマ⋯か。私はルーク・ハル・マーラカルト。この国の第二王子だ」

「私はメアリ・ハル・ネーデルといいます」

「⋯⋯⋯」


やはり私のことが怖いらしい。


「⋯殿下、お願いしてもいいですか」

「ははは⋯分かったよ」


私と入れ替わるように殿下がシグマの前に座る。


「聞きたいことはいくつかあるのだが、これだけは先に聞いておきたい。君には我々と戦っていた時の記憶はあるか?」

「⋯⋯⋯」


コクッと頷くシグマ。まぁ私に対する反応で分かる。


「そうか。⋯君が吹き飛ばしたであろう要塞のことは?」

「⋯⋯⋯ぅ」

「殿下、お気持ちは分かりますが怒気が漏れてますよ」


間違いなく言葉に少しの怒気が籠もっていた。子供はそういうのに敏感だ。少しでも気づかれるだろう。


「これはすまない。だが聞いておきたいのだ。少なくない犠牲が出ているのだからな」

「⋯⋯⋯」


シグマが目を伏せる。覚えているからこそ罪悪感が強いのだろう。


「⋯殿下。その子に罪を負うような責任はありませんよ」

「ならばあの事は仕方なかったこと(・・・・・・・・)とでも言うつもりか」

「⋯⋯少なくともその罪はその子に問うことではありません」

「⋯⋯⋯」


要塞の崩壊で多数の死者が出ていることは知っている。今回の学園襲撃では私が全て守ったので死者は出ていない。


その犯人が自我を失っていた子供で、その原因が罪の問いようが無い剣ときてる。殿下もそうだが、王国の重鎮もやり場の無い怒りを抱えているのだろう。


それをシグマにぶつけるのも理解はできる。記憶はあるのだからなおさらだ。


「シグマさん」

「⋯⋯?」

「私はあなたに罪を問う気はありません。私が知りたいのはあなたがどこの誰で、あの剣をどこで手にしたのかです」

「⋯⋯⋯」


今回の罪はこの子にあの剣を渡したやつに背負わせればいい。そもそもミレーヌ家から盗んでいるのだからそれだけで重罪だ。


「少しでもいいので、何かありませんか?どこに住んでたとか」

「ていこく⋯のじっけん?っていってた⋯」

「実験⋯」


神器を使った実験?それも帝国が噛んでいるのか?非常に面倒くさい香りしかしない。


「⋯君はその実験台だったのか?」

「⋯⋯?」

「そこまで自分のこと分かってないと思いますよ。その程度にしか教育されていないんでしょうね」

「⋯⋯⋯」


しかし名前から考えるに間違いなくその類だろう。ギリシャ数字の18番目。なら姉が17人居ると考えられるか。


「シグマさん。姉とか居たりしませんか?」

「おねえちゃん⋯いる」

「何人ぐらい居ますか?」

「ひとり⋯みんなとおくにいったって⋯」


その一人以外は実験台として命を落としているのか。

その一人はなぜ生きているのだろうか。


「あいたい⋯⋯」

「⋯いい姉だったんですか?」


頷くシグマ。少なくともシグマには懐かれているようだが⋯実態がわからない以上警戒はしておくべきか。


「まいにち⋯あえなかったけど⋯おねえちゃんはいつも⋯たべものをくれたり、いろいろおしえてくれたのです」

「⋯そのお姉さんの名前って知ってますか?」

「⋯ひとにはおしえちゃダメっておねえちゃんが」

「そうですか」


うーむ。その「姉」とやらとはぜひ接触したいところだが⋯


「そういえば一つ聞きたいのだが、君は一度起きたあとすぐに寝てしまったが、なぜ一度起きたのだ?」

「⋯?おきてもねむかったからねたのです」

「そ、そうか⋯」

「一度起きたのは習慣的な何かなのでは?ただ身体にかかっていた負担は相当なものだったと思いますから、それでもう一度寝たのではないでしょうか」

「なるほど」


まぁしっかり回復するべきだろう。外傷は無いはずだから寝れば大丈夫だ。


「しかし、この子は今後どうしようか」


帝国に帰すわけにはいかないし、一応重要参考人と言える。自由にさせるわけにもいかないか。


「うちで預かりましょうか?」

「君を怖がっているのにか?」

「王家よりは楽でしょう⋯」

「⋯それは否定できないな」


もちろんこの子の意思も大事だ。この子が行きたいと思える場所に居るほうがいいだろう。


「シグマさんはどちらがいいとかありますか?」

「えっと⋯⋯」

「あなたの姉に関しては調べておきます。もし会えそうなら会っていただくのも可能だとは思いますよ」

「⋯⋯⋯」


この子にとってその姉は唯一の家族のようなものだろう。完全に引き剥がすものではない。会わせることができるなら会わせてやりたい。


「それなら⋯⋯」


私を見るシグマ。


「だそうですよ」

「分かった。そう報告しておこう。ネーデル家にも私から伝えておく」

「お願いします」


─────────────────────────────────


夜、少し部屋から出て戻ってくると、シグマがテラスに出ていた。


「身体は元気になりましたか?」

「は、はい⋯」

「そうですか。ならよかったです」


春の夜風が部屋に吹く。この国の中心は北寄りなのもあって少し冷たい。


「あの⋯めありさん」

「はい、なんでしょうか」

「あの⋯けんは⋯その⋯」

「⋯あの剣はある神の神器です。この世界の主神の物ではありません」

「べつのかみさま?」

「そうですね。その神がどういう神なのかは分かりませんが、ろくな神ではないでしょうね。あんな神器を作るぐらいなんですから」


もし会う機会があったら一発ぶん殴る。いや、いろんな人の代理もしてボコボコにしてやる。


「⋯めありさんは⋯どうしてしぐまをころさなかったのですか?」

「理由ですか?理由が無いから、ですかね」

「りゆうがない⋯?」

「殺す理由がないですから。殺さずに済むなら殺しませんよ。それに、神器からは強い敵意を感じましたが⋯|あなたからは感じませんでしたから《・・・・・・・・・・・・・・・・》」

「⋯⋯⋯」


シグマは再びテラスの外に向いた。ここは見晴らしがそれなりに良い。高台の建物の三階だからだ。


「〜♪」


何やらシグマが歌い出した。歌詞はあまり覚えていないみたいだが、この曲は⋯


「聖教国で歌われる聖歌の第四曲「幸せがあらんことを」ですね」

「しってるのですか⋯?」

「知識としては。ですがその曲は帝国などでは聞く機会は無いと思いますが⋯」

「おねえちゃんが⋯よくうたってくれたのです」

「へえ」


この子の姉は聖教国の人間なのか?だが帝国と聖教国はかなり仲が悪いはずだが⋯


それに第四曲は曲名の通り願い祈る曲だ。子守唄としてはあまり向くものではない。そもそも聖教国ですらあまり歌われていないマイナー曲。この曲を知らない神官が居るぐらいなのだ。


「いつも⋯おねえちゃんはこれぐらいしかできないっていってたのです」

「⋯⋯⋯」

「たまにしかあえなかったけれど⋯いつもこのうたをうたってくれたのです」

「好きですか?その曲は」

「はい!」


シグマが姉のことを話す時はどこか楽しそうだ。本当に姉のことが好きなのだろう。


この子の姉は聖教国でもそれなりの地位の人間だろう。末端はともかく、中央に近い人間ならこの第四曲も知っていて当然だ。


「シグマさん。ここは帝都と違って、まだこの時期は冷えますから中に入りましょう」

「はい」


気になることも問題も多いが、今は回復に努める時だ。


少し早く眠ることにした。

ロリ登場です。

主人公も大して変わらない?

細けえこたぁいいんだよ

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