13 入学式
少し前に宣言しました通り、一気に時間を飛ばしました。
「我が娘ながら相当な破壊力ね⋯」
制服を着た私を見たお母様がそういう。
鏡を見たときに自分でも思った。
この世界の文明レベルはあまり高くないのだが、なぜだかこの学園の制服は先進的だ。
お約束といえばお約束なのかもしれない⋯⋯が、まぁどうでもいいことだ。むしろ着慣れているこういう服のほうが助かる。
貴族が着るような服は動きにくいのだ。
「出発の準備はできたかしら?」
「はい、お母様」
ついにこの時がやってきた。
学園への入学だ。
初等部だと毎日授業があるわけではない。
あくまで高等部が本体なのだが、初等部では魔法やこの世界の歴史などの基礎知識が教えられる。
高等部は戦闘訓練などをメインに初等部で教えられた魔法の更に進んだ内容が教えられる。
「緊張してる?」
「⋯⋯少し」
あまり貴族とは接してないのもあって貴族しかいない今日の入学式は少し緊張している。
というのも初等部に通えるのは貴族のみで、平民は高等部から受験によって入ることができる。
貴族も高等部に進学する際には試験があるが、平民ほど難しくはないそうだ。
お母様に教えられた道を馬車で進んでいく。周りにも学園へ向かう貴族の馬車が居る。
「今年は第二殿下が入学するのもあって皆気合い入れた馬車ね」
「うちはしないんですね⋯」
「パーティーの時から面識があるのに今更でしょ?」
お母様は王族に対しての敬意が薄いように感じる⋯
私は表面上だけは取り繕っている。他家に目をつけられても面倒だからだ。
「奥様、お嬢様。ご到着いたしました」
ゼバスが馬車の扉を開け、エスコートしてくれる。
「ありがとうゼバス」
「ありがとうございます」
ゼバスは大したことではないといった様子で肩を竦める。
パーティーで豪勢に着飾っていた連中も皆同じ制服だ。
入学式に出席する上級生も来ているので、かなりの人が校門に居る。
「メアリさん!」
「マーシャさん、お久しぶりです」
「一年以上一緒に居ましたから、この一ヶ月は違和感がすごかったですわ」
私もこの一ヶ月は少し暇だった。概ね目標としていたことが終わっていたのもあって、マーシャが居なくて暇だったのだ。
「二人とも、久しぶりだね」
「お久しぶりです殿下。背が高くなられましたね」
「ははは。ありがとう。マーシャ嬢も少し顔つきが変わったかい?」
「そ、そうでしょうか?そんなつもりはないのですけど⋯」
「そろそろ時間だね。会場に行くとしよう」
私たちは親と別れ、会場に入る。
入学式の会場は非常に大きな講堂で、入学生全員が入ってもまだ余裕がある。
「私は代表挨拶があるからここで失礼するよ」
代表挨拶なんて面倒な⋯よくやるものだな。
「王国中、そして近隣国からこれだけの貴族が入学するというのは凄いですわね⋯」
「⋯怖気づきましたか?」
「そんなわけありませんわ!むしろ楽しみですのよ」
マーシャは実家に戻った後、私たちから学んだ魔法を見せてないらしい。
なのでマーシャは親が来ていない。どこまで関心が無いんだ本当に⋯
マーシャの知り合いと挨拶を交わしたりしていると、時間になった。
こういうのは退屈だ。退屈なので聞いてるふりをしながら魔力循環を小規模に行う。残念ながらマーシャは少し離れた席なのだ。
殿下が登壇してきた。周りの貴族令嬢の目の色が変わった。
殿下は整った顔をしているので女子人気が高い。講堂に入るまでにも同学年だけでなく上級生からも声をかけられたぐらいだ。
殿下が私を見て少し微笑んできた。何を考えているんだ?
周りの女子たちがざわめいている。私に向かってしてくれたとかそんなことを言っている。
殿下の新入生代表挨拶が始まった。
やはり殿下はこういう演説が上手い。
そして次に登壇したのは⋯ニーシャ兄上だった。
この初等部の入学式には副学長が出るらしいのだ。
ニーシャ兄上は私の入学に合わせて副学長になっていた。
当然のように私の方を見て笑った。ニーシャ兄上も例に漏れず顔がいいので周りがざわつく。
殿下といいニーシャ兄上といいなぜ私の席をそんな一瞬で見つけられるのだろうか。魔力は周りと同じぐらいしか見えないようにしているのに。
滞りなく進んだ入学式が終わり、新入生は割り当てられたクラスへ向かう。
向かっていると殿下から声をかけられた。
「私の代表挨拶はどうだっただろうか」
「登壇してすぐ私を見ていなければ完璧だったと思います」
「手厳しいね」
挨拶自体は完璧と言えるものだったので私を見て微笑んだことに苦言を呈しておく。
「メアリさん」
「マーシャさん。同じクラスですね」
初等部のクラス分けは爵位で分けられ、同じ爵位ではその家の影響力の強さで上から分けられる。
高等部は貴族は初等部での成績で、受験組は入試成績で振り分けられる。
なので爵位の低い貴族はここでの逆転を狙っている者も居るし、爵位の高い貴族はその家名に恥じぬ成績を取らなければならない。
「本番は高等部⋯ですがそれまでにこのクラスから脱落するわけにはいきませんわね⋯」
「あなたなら大丈夫でしょう。隠すというのならギリギリかもしれませんが」
最悪ニーシャ兄上に言ってしまえばどうにかなりそうな気もするが、マーシャがそれを望まないだろう。
「マーシャ嬢があれから何をしたのかは知らないが⋯どうやら前評判とは変わっていそうだね?」
「まぁ⋯期待してもいいと思いますよ」
「君が言うのならそうさせてもらおう」
殿下から期待を向けられたマーシャはどこか居心地の悪いような顔をしている。流石に殿下から向けられる期待は重いようだ。
教室の席は自由席ということだったので、最上段の列に三人で座る。
他の同級生も続々と教室に着き、各々席に座っていく。
侯爵から伯爵しか居ないが、その狭さでも派閥というのは存在するらしく、自然と派閥に別れた座席となった。
「あ、あの⋯」
「む?なんだい?」
「こ、ここ⋯よろしいでしょうか⋯」
「構わないよ」
「あ、ありがとうございます⋯」
殿下の隣に女子生徒が座った。えらく気弱な様子だったが殿下に声をかけるのがそんなに恐れ多かったのだろうか。
「⋯伯爵家の方ですわね。確か魔法研究の家系だったはずですわ」
マーシャが小声で教えてくれた。顔に出てただろうか。
伯爵家か。それなら声が震えても仕方ないか。このテーブルには侯爵と王族しか居ないからな。
「君の名前は?」
「⋯⋯⋯へ!?わ、私ですか!?」
「君以外誰が居るんだい⋯」
声をかけられると思っていなかったのかオーバーなリアクションだ。
「わ、私は⋯で、殿下に名乗るような者では⋯」
「学園は基本は実力至上である。交友において身分を問うつもりはない。教えてくれないだろうか」
「⋯⋯⋯⋯」
初等部には試験がないので爵位でのクラス分けが行われているが基本理念としては実力至上だ。
「は、伯爵家の⋯ミレイ・ハル・ザルードです⋯」
「ザルード⋯研究塔で有名な家じゃないか。そうか、君が一人娘の⋯」
「わ、私なんか⋯お父様には遠く及びません⋯」
ふむ、そう言う割には机に開いている魔導書は上級魔法のものだが⋯
「私はマーシャ・ハル・ミレーヌですわ。よろしくお願いしますわミレイさん」
「み、ミレーヌ家!?わ、私なんかでよろしければ⋯よろしくお願いします⋯」
これは私も挨拶したほうが良いか。
「ミレイさん。はじめまして。メアリ・ハル・ネーデルです」
「ネーデル⋯⋯しょ、所長さんの⋯」
「兄上がお世話になってます」
「す、スーザ所長にはよくしてもらっていて⋯メアリさんのこともよく聞きました⋯」
「なんだかメアリさんだけ距離が近いのですわ⋯」
スーザ兄上も私への感情は重いから、ミレイにもすごく話してたんだろうな。
挨拶を終えたと同時ぐらいに教室の扉が開かれた。
「皆揃ってるね!てことでこれから初等部の三年間、君たちの担任を僕が持たせてもらうよ!自己紹介は必要かな?」
入ってきたのはニーシャ兄上だった。副学長が担任とか何考えてんだ。
「週三回程度しか授業日は無いけど、高等部までに必要なことはみっちり詰め込むからね!」
あまり身長が高くなく童顔ということもあり可愛がられることも多いニーシャ兄上だが、教授として改めて教鞭に立つのを見ると、ちゃんと雰囲気がある。
「じゃ、この後は学園の案内になるから、早速行こうか!」
ニーシャ兄上の呼びかけで各々席を立ち、ニーシャ兄上についていく。
「私たちも行くとしよう」
殿下に続いて私たちもニーシャ兄上についていく。ミレイは最後尾についてきている。
「ミレイさん」
「ひゃ、ひゃい!」
「⋯ミレイさんはこの学園で何か目標とかありますか?」
「目標⋯ですか⋯?」
「はい」
「⋯⋯ザルード家に恥じないような⋯研究者になれるように⋯頑張りたいと思ってます⋯」
「⋯ミレイさんならきっと良い研究者になれますよ」
実際魔力特性は生成型のようだし、研究者向きだ。
自己肯定感が低すぎるのが気になるが⋯
あと研究者志望がこの学園に通うというのも不可解だ。
「⋯どうして、学園に通うことにされたのですか?」
「え?」
「研究塔所長⋯スーザ兄上はこの学園には通っていません。16のときに魔研都市に行きました」
「⋯はい。聞いたことがあります」
「研究者を目指すなら魔研都市に留学⋯が大体だと思うのですが⋯」
「確かにそれは気になるね」
殿下も話に乗っかってきた。マーシャも耳を傾けている。
「⋯私は、魔法が使えないんです。魔研都市で研究者を目指すには魔法が使えないとだめで⋯」
以前のマーシャより魔力量がありながら魔法が使えない?
「⋯この学園には魔法を使えるようになるために来たんです。この初等部の間に使えるようにならないと⋯」
道は閉ざされる、か。だが上級魔法の魔導書を読んでいるあたり、魔法がわからないというわけでは無いようだが⋯
「魔法がわからないとか覚えてないとか、そういうことではないのですのよね?」
「は、はい。中級までなら術式は全て書き出せます」
マーシャの顔が引き攣った。マーシャも中級までなら干渉して消せるのだが、完全に術式を理解してるわけではなく、中級魔法に共通するある術式に干渉しているだけなのだ。
だが中級魔法からは特殊な魔法もあるので、全て消すためには結局すべての魔法を暗記してしまうのが早い。
勉強はできる方であるマーシャもそこまではまだできていない。
「す、凄いですわね⋯私にはまだ出来ませんわ⋯」
「使えないので⋯無駄です」
無駄なのは否定できない。使えなければ確かに無駄だ。
その後、私たちはちょっとした話をしつつ、校内案内を受け、今日の日程は終了した。
筆が進めば4000〜6000…進まないと2000…
文字数の変動がひどいですが、頑張って更新してまいります




