10 訓練
更新遅くなりました
王都から領地へ帰ってから一週間。
私はギースと戦闘訓練に勤しんでいた。
魔法を使うと圧勝してしまうので、最低限の身体強化に留め、技術のみで戦っている。
今のところ負け越している。
この世界の剣術をすべて知っているわけではないので、ギースの剣術を打ち合いから学んでいる。
お母様いわく、冒険者は剣術を学んでいたとしても、冒険者としてやっていく間に自らに最も合う形に変わっていくのだそうだ。だから一定の実力を超えると、一人として同じ剣を持つ者は居ない。
ギースは冒険者としてはかなり上澄みだとお母様は言っていた。最初に戦ったときはギースも油断していた。
だがこうやって訓練で相手にすると分かる。強い。
ルレイ兄上やフェル兄上に比べれば劣るかもしれないが、それでも勝てるときもあるだろう。
打ち合いをしていると庭のテーブルから声が聞こえてきた。
「私を放置なんてあんまりですわ!」
「あら。一週間放置されているの?」
「そうですのよ!そもそも避けられているというか⋯なかなか会わないんですの」
そりゃな。そうしてるからな。
「良いのか?嬢ちゃんを頼ってここに居るんだろ?あの令嬢さんは」
「⋯⋯少し方針に悩んでいまして」
「大嘘つきだな。面倒なだけじゃねぇのか?」
面倒なのは面倒だが、ぶっちゃけるとそういうことでもないのだ。
「まぁ、いろいろ考えてるんですよ」
「そうかい」
まだその時ではない、というだけだ。頼られた以上はちゃんとやる。が、やり方には口出し無用だ。
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「⋯⋯そろそろ始めましょうか」
私はそうつぶやき、マーシャの部屋の前に行く。
驚いた。マーシャのやつ、自分なりに伸びようとしていたのか。
「そうやって魔力を練るのも大事ですが、あなたの場合それでは伸びませんよ」
「めめめ、メアリさん!?いつの間に」
驚きすぎだ。魔力を練るなら魔力探知ぐらいしておけ。
「そ、それでメアリさん。こんな夜に何の御用で?」
「あなたに訓練をつけようと思いまして」
「こんな夜更けからですか?」
「えぇ」
マーシャはなぜ?といった様子だが、文句は受け付けない。
「それで⋯何をすればよろしくて?」
「この場でできることです。魔力を身体から全部抜いてぶっ倒れてください」
「はい?」
「ですから、自ら魔力切れになって倒れてください」
「そ、それに何の意味が⋯」
説明してやろう
「まず、あなたは魔力総量が少なすぎます。あなたの魔力特性を活かすには魔力が足りません。なので増やします」
「ま、魔力総量を増やす?」
「はい。魔力を使い切って倒れて、起きてまた使い切って倒れて。それを繰り返すと魔力総量は増やせます」
「そんな方法で⋯」
知られていないからな。魔力総量は生まれつきだという固定観念が根強い。しかし魔力総量は伸ばせる。
お母様にこのことを教えたら、一ヶ月で魔力が少し増えていた。
今のお母様は私がこのことを教えたときから魔力総量が1.5倍ほどになっている。
「二年しかありませんし、戦闘訓練もしたいので時間がありません。なので時短でいきます」
「ど、どうやって?」
「魔力切れで倒れましたら、私が魔力を供給して叩き起こします。その繰り返しです」
「⋯⋯⋯⋯」
大変顔が引き攣っている。だが関係ない。
「時間ももったいないですから始めましょうか」
マーシャは言われるがまま魔力を放出し、ぶっ倒れた。
すぐさま魔力を供給し、雷魔法でパチっと起こしてやる。
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「お、鬼ですわ⋯」
「あらあら」
翌日、私がルレイ兄上と打ち合っていると、マーシャの悪態が聞こえてきた。
「でも実際魔力は増えるわよ?」
「それでも⋯鬼ですわ⋯」
残念ながら今夜もやる。週6でやる予定だ。
「程々にねメアリ。他家のお客さんではあるから⋯」
「そんなに時間の余裕がありませんので」
「⋯⋯⋯」
真顔で返してやったら黙ってしまった。
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「ん〜!疲れましたわ」
マーシャが伸びをしながら言う。
私たちは午後からニーシャ兄上の授業を受けていた。学園の初等部の内容を事前に学んでいる。
「ちゃんと身体を休めといたほうが良いですよ。今夜もやりますから」
「お、鬼ですわ⋯」
「ある程度魔力が増えるまでは何も出来ませんから。頑張ればそれだけ早く始められますよ」
「むぅ⋯」
葛藤しているようだ。確かに魔力切れで倒れるというのは結構辛い上に、起こされたあとのあの気持ち悪さはかなりのものだ。
「頑張ります⋯わ」
小さい声だがまぁ大丈夫だろう。それにどこかのタイミングで伸びが大きくなるはずだ。そこを過ぎれば及第点には届くだろう。
「お、いたいた。探してたんだ」
「ギース?どうかしましたか?」
ギースが私を探しているなんて珍しい。
マーシャはまだギースのことが苦手なようだ。
「嬢ちゃんに伝えなきゃいけないことがな。夫人からそう頼まれたんだ」
「お母様から?」
「あぁ。この間、竜が街道沿いに出ただろ?」
「えぇ」
「どうもその竜の元々の生息地に古代竜が居るみたいでな」
「つまりあの竜は生息地を奪われあのようなところに現れたと?」
「そういうことになるな」
ふむ⋯古代竜か⋯
魔力探知を伸ばしてみると古代竜らしき魔力を感じ取れた。
ネーデル領に来るつもりがないなら静観でいいだろう。わざわざ刺激して面倒なことにする必要はない。
「夫人はとりあえず静観の構えだが⋯嬢ちゃんはどうだ?」
「私もお母様と同意見です」
「そうか。用はそれだけだ。じゃあな」
そう言ってギースは来た道を戻っていった。
「あの男⋯慣れませんわね⋯」
マーシャももう少しギースに慣れてほしいものだ。
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「おえっ」
夜の魔力増強特訓中、マーシャが大変お見せできないことになってしまった。
だが心を鬼にして続ける。
その夜マーシャは三回ほどお見せできないようなことになった。
さっさと学園編に入りたいのですが謎に伸びてしまっています。あと2〜3話ほどで締めます。




