第9話:真実の力、そして裏切りの影
王都の広大な魔術省の中庭で、リリアは深く息を吸い込んだ。
「ここが……王都か」
壮麗な塔と光る魔法陣が空に向かって広がる。
だが彼女の心は複雑だった。
(普通に生きたいだけなのに、なぜこんなことに……)
しろまるがひょいと膝から飛び降り、静かに彼女の足元にすり寄る。
「にゃあ」
「ありがとう、しろまる。あなたがいると心強いよ」
そんな時、魔術省の長官が現れた。
「リリア、君のスキルはただのチートではない。我々はそれを“原初の魔力”と呼んでいる」
「原初の魔力……?」
長官は静かに話し始めた。
「それは、世界の根源に繋がる力だ。君が無意識に発動してきた《視認対象完全排除》は、その一端に過ぎない」
「そんな……!」
リリアは言葉を失った。
その夜、彼女は自室で静かに黒板に書いた。
『私はただ、平和に過ごしたいだけです』
しかし、部屋の扉が激しくノックされる。
「リリア、すぐに来てくれ!」
声の主はレイラだった。焦った表情で、彼女を連れ出す。
二人は秘密の部屋へ向かった。
そこには、魔術省の若きエリート研究員がいた。
「リリア様、申し訳ありません。ですがあなたの力は、王国の安全保障に欠かせません」
リリアは混乱しながらも、強い決意を胸に刻んだ。
(これ以上、隠れてばかりはいられない)
しかし、その裏で――
“影”は動いていた。
黒いローブをまとった人物が密かに動き、暗殺者を使ってリリアの暗殺を企てる。
「リリアの力が覚醒すれば、我々の計画が崩れる。絶対に阻止しなければならぬ」
冷酷な声が響く。
翌日、ギルドに戻ったリリアは、再びギルドの壁の前に立った。
「ああ……また壊れてる……」
だがその表情は、以前のような恐怖ではなかった。
「私には、守るべきものがある」
しろまるが彼女の足元で鳴いた。
「にゃあ」
リリアは黒板に書いた。
『どんな困難が来ても、負けない』