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第二十八話 配信者という生き物 前編


◆◆◆


「は、ははっっ!!」

「…………っ!」


 宙返りしながら跳んだ少女エターナルシーズ……いや少女に取り憑いた虚獣インヴィディアは、被せた冷笑の仮面から笑い声をあげ、かかとを振り下ろす。

 両腕で受けなんとか弾いたシラハエルは、くるくると軽やかに地面に戻る彼を、険しい表情で睨み続けた。


「うん、さすがによく動く。……まあまあ、そう怒らないでよ。

この子だって最初は君と戦いたいだとか“バカみたいなこと”言ってたんだろう?

魔法少女の切なる望みを叶える……ぼくと君は志を同じとする仲間じゃないか」

「…………」


 シラハエルと、それ以上にリスナーに向けて挑発するような語り口で、インヴィディアは言葉を紡ぐ。


「それとも、大技で力を消耗したエターナルシーズなら?

使い慣れていない身体に振り回されている間に制圧できる……なんて楽観視してたかな?

残念、羨望のカタチたるぼくは()を操ることに特化した五つの虚念(クィンク・ネブラ)だ。

初見でも操作に迷うことなんて無いし、彼女の戦い方は間近で見せてもらったし……力の方だって、ほらっ!」


 高揚した気分のまま饒舌に語ったインヴィディアは、みなぎらせた魔力を見せつける。

 その光は、配信をつけたエターナルシーズやシラハエルが見せたものと遜色ない……それでいて禍々しい雰囲気を隠そうともせず放つものだった。


「ああ……完璧、最高の身体だ……!

罪のない、かつ最強格の魔法少女エターナルシーズ。

この究極の盾にして矛さえあれば……ぼくは絶対安全なまま、世界を虚念で満たすことが出来る!」


(────最悪、最悪じゃっ……!)


 状況が明るみになればなるほど、置かれた状況がいかに致命的であるかを痛感しコンジキは内心頭を抱えた。

 エターナルシーズ本人では無いにしろ、準ずるかあるいはそれ以上の脅威であることは、当人の口ぶりからも疑いようがない。


 そしてそんな彼が見せた、今もなお身体からみなぎらせている魔力の出どころは。


<おいおいおいおいおい>

<は??? 意味わからんなんなんこいつ>

<いやいや最悪じゃんどうすんのこれ>


 これまでの応援ムードが一転、混乱と動揺の極地に陥ったコメント欄の、負の感情。

 シラハエル側は魂の動きがネガティブに転んだことで魔力供給が落ち、一方魔法少女に取り付くという形を取った虚獣インヴィディアは、正負両方の感情を余さず取り込む存在へと成っていた。


 ……そして何よりも、何よりも。


「……っ、ふぅ────…………っ!」


 なんとか気持ちを落ち着かせ、最善を尽くそうとシラハエルが大きく深呼吸をする。

 だが額に汗をかき、知恵熱が出そうなほど脳を回す彼の表情に余裕は、無い。


(先ほどの、鎧から羨望が弾かれたような挙動を考えれば、今度はエターナルシーズ殿に大ダメージを与えれば同じように出てくる可能性は高い……

出てくることが分かっているなら、あのヘドロに対処することは難しいことではない。

だが、白羽殿が……魔法少女シラハエルが、何の罪もない魔法少女と戦うなどと……!)


 おまけにその相手はよりにもよって、殺すつもりで挑んでも勝てるか怪しいあのエターナルシーズ。

 手加減しながら制圧などもってのほかで、どう考えても本来の意味での修羅場は避けられない。


 さらにさらに、大人である魔法少女シラハエルが操られた少女を本気で殴りつけるという光景を見せてしまえば、当然配信の炎上は不可避だ。

 万が一今回の戦闘がなんとかなったとして、お互いの今後の活動への悪影響は甚大だろう。

 魔法少女の未来をも救いたいシラハエルの急所を突く一手……そこまで分かったからこそ、コンジキは最悪だ、とこの状況を正確に分析できてしまったのだ。


「…………クソ! おい、めぐる! しっかりしろ、こんなやつに呑まれてんじゃねえ!」


<そうだ頼む頑張って>

<こわいこわい嫌だ嫌だ>

<いやいやエターナルシーズでしょ? ここから逆転するよな?>

<勝ってくれ、こんなやつに負けないで>


「あー、無理無理。そもそも取り憑いた時点で意識は強制的に寝かされるからね。

精神力とかみんなの想い~だとか、そういうのでどうにか出来るものじゃないよ。

シラハエルが上手く痛撃を与えられたら、そのショックで起きる可能性ぐらいは0じゃないけど……ねえ?」


 大きな声で呼びかけたマスコットセキオウと、すがるような願いを追従させるコメント欄。

 だが、それも無駄な行為だとインヴィディアは言うと、あえて可能性を口に出してほのめかす。

 何も手立てがないという完全な絶望ではなく、一筋の希望を見せてそれを通さないことこそが、最も視聴者の魂に悪影響を与えられると知っているからだ。



「………………いきます。エターナルシーズさんは、何に代えても助けます」


 それでも、こんな状況でもなお、シラハエルはやらなければならない。

 このまま手をこまねいていても状況が好転することはない。

 どころか、今はまだ虚獣への怒りに向いている視聴者の魂の動きも『シラハエルやエターナルシーズがもっと上手くやれば』などという流れに傾きかねないことは、この場の誰もが分かっていた。


「ふふ、何も考えずにエターナルシーズごと()れてしまえれば楽なのに、配信者って生き物は大変だねえ。

こんな状況で未だに取り乱さないのはさすがだけど、色々と限界は来てるんじゃない?」


 そんな様々な覚悟を背負いながら、沈鬱な表情で重い足を踏み出すシラハエルに、半ば勝利を確信し。

 見なよ、と全身が砕かれ粒子化し始めた、虚飾のカタチヴァニタスの残骸を指差しインヴィディアは笑う。


「あの固くて強くて、君も歯が立たなかったかもしれないヴァニタスすらも倒してのけた、エターナルシーズ相手に。

やせ我慢がどこまで続けられるのかリスナーに見せてあげなよ。

────それじゃあそろそろ、いく……よ……?」



 ぼた、ぼたぼた。

 ぼたぼたぼたぼたぼた。


「…………?」


 そのインヴィディアの……正確には魔法少女エターナルシーズの口から。

 大量の赤黒い液体、つまり血が流れ落ちたのは、彼が足を踏み出そうとしたタイミングでのことだった。


(…………なんだ?)


 直前のヴァニタスとの戦いでエターナルシーズにもダメージはあったが、いきなり吐血を起こすような怪我ではない。

 当然、今のシラハエルとの一瞬の攻防で気づかない間に攻撃を受けた、というのも考えられない。


(内臓への負荷……? いきなり強く動かしすぎた……? そんなはずはない、この程度の動きならさっきのほうが……なら……いや、これは────!?)


 まさか、と気付いた瞬間。

 少女の顔の大部分を覆う冷笑の仮面にガッ、と力強く手がかけられ……次に軋むような音を立て、仮面が引っ剥がされ始めた。


「な、な、なっ……!?」

「め、めぐる……めぐるなのか……?」


 かたや狼狽、かたや困惑を見せるインヴィディアとセキオウの声にも構わず、仮面を剥がそうとするのはエターナルシーズ自身の右手。

 完全に人格を眠らせ、主導権を握っていたはずの身体が、その手が。

 今、虚獣の支配に全力で抗っていたのだ。


「お、おまえ……なんてことを、なんてことをしていたんだっ!」


 この異常事態の真相を最初に見出すことになったインヴィディアの叫び。

 その声と同時に、ベッ、と少女の小さな口から吐き出された何かが、地面にべちゃりと音を立てて落ちた。


「ぅ……あぁ……!」


 インヴィディアのうめき声をバックに落ちたのは、赤黒い血でコーティングされ艷やかな輝きを放つ、黒く尖った鎧の破片。

 他の鎧と同じく粒子化が始まったそれは……彼女自身が砕いた、虚飾のカタチヴァニタスの残骸だ。


「あ……あの時、ヴァニタスが砕かれ飛び出したぼくが中に入った時……お前は、手を口の中に突っ込んでいた!

あれは、吐き出そうとか尖らせた指でぼくを掴もうとしたんじゃなくて……飛び散った破片を入れていたのか!?」



「────正、解、や……!」


 インヴィディアの言葉に答え、辿々しくも力強く。

 エターナルシーズは答える。


「おは、ようさん……“よう寝た”わ……!

ほんまは、破片であんたを突き刺せれば一番やったけど……まあ、口入ったまま動いてくれた、から、はあ、ズタズタなっていい気付けなったわ……!」

「…………っ!」


<え、どういうこと、エターナルシーズ大丈夫なの?>

<いやグロいって大丈夫なんかこの配信>

<戻った? なんとかなる?>


「ぐ……ぅ、うぅ……!」


 少女が明かした言葉に、シラハエルは真っ先に驚愕と……そして苦しそうな感情を見せながら息を呑み。

 彼女と主導権を奪い合うインヴィディアは、それ以上の苦悶の声を漏らした。


(い、イかれてるっ……! あの土壇場でぼくを刺そうとしたのも、躊躇なく口の中に破片を入れたのも……!

動いた拍子にもし飲み込んだら喉に突き刺さって即死しかねない……いや、それすら織り込み済みだったのか……!?

クソ、クソ……! 乗り移った直後に気づいて、吐き出せてさえいればっ……!)


 念願のずるい身体を手にした高揚感。

 そして何より、“操った身体の痛みを感じない”という、安全圏から不平を嘆くだけの虚念の特性が、この事態の発見を遅らせてしまっていた。


「さ、て……!」


 エターナルシーズは震える手で仮面を掴んだまま、さらに思い切り引き剥がそうとする。

 身体の支配権を奪い合うインヴィディアの抵抗もあり、まるで彼女の皮膚と一体化したかのようにこびりついた仮面は、容易には剥がれない。


「ふ、ぎ、ぎぎぎっ……」


 が、一切構わず指を立て、全力で仮面を引っ張る彼女の様子に、インヴィディアは慌てて声をあげる。


「せ、せっかくのぼくの身体が……! やめろ! 余計なことするんじゃないっ!

シラハエルと戦うことは、お前の望みでもあったはずだろう!」


 精神力でインヴィディアとせめぎ合いながら、無理やり動かす少女の身体。

 その身は強烈な負荷によりすでに指先からも血がにじみ始めており……このまま無理に続ければどうなるかは、誰の目にも明らかだった。

 故に、彼女を宿主としたインヴィディアは必死で止める、止めざるを得ない。



「コンジキ様。…………────────」

「────っ、あい分かった。あとは任せたぞ、白羽殿」


 シラハエルとコンジキが神妙な顔で手短に交わした会話に、当然彼らが気を取る余裕などもなく。

 少女は全身を痛みに苛まれながらも口を歪め、いっそ誇らしげに笑った。


「は……! ヘタレ寄生虫のいいなりに、嫌がってる人と無理やり戦って、何が楽しいんや……!

このままうちの身体ぶっ壊れたら、飛び出したあんた、絶対やられるよな……?

ええで、それで勝てるなら、うちはなんぼでも────」


 『────ずっとこのまま、死ぬまで魔法少女として戦ってたい。季節なんて……一度も巡らないまま、この瞬間だけ生きてられたら、それでええんです』


 元より、魔法少女として戦い抜いた末の死すらを望んでいた永遠と闘争の魔法少女(エターナルシーズ)


 彼女は今こそその時だと、“今日”を救ってくれたシラハエルたちへの感謝を胸にさらに全霊の力を込めようとし────



「すぅ────────お互いにぃ、礼ッッ!!!」



「は……? ……なんだ……?」


「────っっ!? ふぇ、あ、お、押忍っっ!?」


 突如。


 血と覚悟に沈みそうな重苦しい空気を切り裂くように、力強い掛け声が放たれる。

 シラハエルの願いにより、マスコットコンジキが発したそれは……シラハエルとエターナルシーズが良く知る、空手の試合前の礼儀作法だ。


 あまりに唐突で、これまでの流れとの繋がりも理解できないインヴィディアは、ただ困惑の声を上げ。

 空手が拠り所となっていた記憶も新しいエターナルシーズ……四季織巡は、目を向けた先でシラハエルが、両腕を斜め十字に切る見慣れた挨拶をしていることに気づき、慌ててそれに倣う。


 そして、息をふぅーっと吐き出したシラハエルは……少女を真っ直ぐ力強く見つめると、口を開いた。



「魔法少女エターナルシーズさん。自分はあなたに()()()()()()()()()

よろしければぜひ、自分と今ここで……全力で戦っていただけませんか?」

「ぁ…………」


 彼の静かな問いかけに、少女が小さく、空気の抜けるような声を漏らすと。


 直後、最初に劇的な反応を見せたのは……エターナルシーズではなく、取り憑いたインヴィディアの方だった。


「あ、あ、ああああああぁぁぁっっ!? しま、や、やめろ、やめろやめろ!!

ふざけるな、お前っ操られた魔法少女を虚獣退治にかこつけて殴るなんて、許されるはずが────」


「────押忍っ! もちろんですっ!

────はは、あははははははっっ! よろしくお願いします、シラハエルさんッッ!」



<??????>

<え、何この流れ>

<虚獣倒すんじゃないの? 何やってる?>

<あーなるほどね完全に理解したわ>


 インヴィディアの悲痛な叫びも、コメント欄の困惑も。

 全て置き去りに答えた少女の目にはもう、シラハエルしか映っていなかった。



------------



「ふっ……! は!」

「くそ、くそ……こんなっ……!」


 一合、二合。

 シラハエルと、エターナルシーズに取り憑いたインヴィディアがぶつかり合う。

 戦いは今のところ均衡が保たれているが、インヴィディアの口からは悔悟にまみれた悪態が途切れず続いていた。


 そんな彼らを見ながら、今しかないとマスコットセキオウは口を開く。


「……で、どういうことなんだ、コンジキ。

いや、やろうとしたことは分かるんだが……あいつは、アレだけ余裕だったインヴィディアのやつは何故、急にあそこまで取り乱しやがったんだ?

見たとこめぐるの身体の支配権は、まだあいつが握ってるんじゃねえのか……?」


<それ>

<やろうとしたこともわかんないんだが??>

<わからんやつまじか 魔法少女エアプ多すぎでしょ>

<どういうことだ、説明しろ苗……コンジ木>

<魔法少女はほとんどエアプに決まってるだろ>


 この作戦を聞いていたわけでもなく、突然変わった風向きに理解が追いついていないセキオウ。

 彼はコメントの困惑を代表するかのような問いかけをコンジキにする。


 そして、そんな彼と……そして事態の把握で応援の後押しを頼むためにも、とコンジキはコメント欄に向け説明を始めた。


「前提が……全てひっくり返ったのじゃ。そもセキオウよ、この場における我々の勝利条件とはなんじゃ?」

「そりゃ虚獣ヴァニタス……いや、中から出てきたインヴィディアを倒すことだ。だが、それをしようにもめぐるの身体に入られちまって……」


 セキオウの返答に、そうじゃ、と頷くとコンジキは続ける。


「やつを倒すには、シラハエル殿がエターナルシーズ殿と戦闘し、ダメージを与えるのが必須じゃった。

じゃがそれは、シラハエル殿の魔法少女としての成り立ちから考えても、魔法少女のシステムを考えてもあまりにも困難な道じゃった。

なにせ、どうあがいても『操られた被害者の少女の身体を、大義のために全力で殴り蹴る大人』という事象は避けられないわけじゃからな」


<たしかに>

<絵面やばすぎるわそれ絶対荒れる 魔法少女界隈ごと燃える>


「そのリスクはみなも分かっておるようじゃから割愛するぞ。

付け加えるなら、万が一それでもシラハエル殿が上回ったと見るや、おそらくインヴィディアはエターナルシーズ殿の身体のまま逃走を選択したはずじゃ。

激戦直後に追撃でトドメを刺すなどほぼ不可能じゃし、それで少女の身柄が不明ともなれば界隈に致命的なダメージを与えられる……シラハエル殿の打倒ほどとは行かずともな」

「最悪すぎる虚獣だな、どこまでも……」


 補足された情報にさらにげんなりとした表情を隠せないセキオウに、コンジキも同意を返した。


「おそらくやつの行動原理は、世界を負の感情……やつが言う虚念で満たすこと。

ゆえに二重三重の策で手出しできない状況を作りながら、それを推し進めて成就しかけていた……が」

「そこに、めぐるのやつが勝手に目覚めちまった」


「その通り、勝手に目覚めたのじゃ! その後も抗う姿を視聴者に見せたことにより、乗っ取られた哀れな被害者という前提が崩れおった!

そこに、シラハエル殿は即座に二人の共通点である空手を取っ掛かりに、『シラハエルとエターナルシーズの組手』という形で合意の戦いとすることを判断した。

操られた魔法少女の悲劇を、魔法少女同士の力比べを経て虚獣を倒すという、かつて類を見ないエンタメに昇華させたんじゃ!!」

「そういう…………ことか…………」


<あーめちゃくちゃ気が楽になったのそういうことか>

<はえーすっごい>

<俺三分の一ぐらいの年齢の子に理解力負けてたの悔しいよ>

<エターナルシーズがやばいだけ定期>


 興奮しながら話すコンジキの言葉に、セキオウやコメントが得心したとばかりの反応を返す。

 特にコメントからその反応を引き出したかったコンジキは内心良し、と頷くと締めくくった。


「そして、一転苦境に追い込まれたのはインヴィディアじゃ!

こうなってしまえばもう、シラハエル殿がエターナルシーズ殿を倒したとしても悪影響は起こらん。

そしてそうなれば、種が割れたインヴィディアの乗っ取りは二度と通用しないじゃろう。

他者を操り、アンフェアを口にし安全圏で嘲笑っていた『羨望』はここに来て、負ければ終わりのフェアな場に引きずり出されおったのじゃ!」


<かわいそうなってきて草>

<頭おかしい修羅と関わったばっかりに陽の光に引きずり出されたのか>

<「アンフェアを口にし安全圏で嘲笑っていた」 急に俺ら刺すのやめてね>



<つまり、あとはシラハエル応援すりゃええんやな 説明感謝>



 そうして説明を終えたコンジキは、最も必要なシラハエルへの応援の空気を作れた手応えに満足し。



(……じゃが、それでも)


 と、今度は口に出さずに、内心でこの先の展開を思案した。


(それでも、インヴィディアが操るエターナルシーズ殿という戦力が強大であることには変わりがない。

逃げようなどという行動を取ればエターナルシーズ殿も抵抗するじゃろうが、戦闘中に無理やり身体を止めて殴らせる、というのは配信的にも無し……つまり戦いはガチじゃ。

白羽殿、ぬしは……勝てるのか…………?)



「………………」


 そう、コンジキが最後の懸念を脳内で言葉にしたタイミングで。


 今、眼の前で跳ねるように戦う少女……つけられた冷笑の仮面から覗かせた素の顔を見て。


 高司白羽は一人の大人として、改めて思った。



(ああ、すごいな……本当に)



 ────本当に、なんて楽しそうに戦い……配信をする子なんだろう、と。



◆◆◆


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