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左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!  作者: 武蔵野純平
第六章 スタンピード

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第98話 スタンピードに備えてバリケード作り

 オークの集落からサイドクリークの町へ戻る道すがら、聖サラマンダー騎士団の皆さんから色々なアドバイスをいただいた。

 俺たち冒険者パーティー『ひるがお』の面々は真剣に耳を傾けた。


 ソフィーは魔法について聖サラマンダー騎士団のナイスミドルであるハインリッヒさんにアドバイスをもらいフンフンとうなずいていたが、感覚派なのでどこまで理解していることやら……。

 マリンさんやアシュリーさんが聞いていたので、後ほどかみ砕いてソフィーに教えてくれるだろう。


 聖サラマンダー騎士団団長のフレイルさんによれば、俺の戦闘はパワーを生かしていて素晴らしいが、無駄な動きが多いそうだ。まだまだ素人の域を出ていない。


「リョージ殿は、もっと上を目指せる。精進されよ」


「ありがとうございます!」


 とても励みになる言葉をいただいたが、スローライフが遠ざかっているのは気のせいだろうか?

 スローライフとやり甲斐の板挟みに、俺は内心身もだえるのである。



 サイドクリークの町へ近づくとバリケード作りの賑やかな音が聞こえてきた。

 バリケードを作る人が増えていて、街の人や冒険者に混じって、聖サラマンダー騎士団の団員さんたちも汗を流している。


 力のある人は丸太を運び、手先が器用な人は丸太をロープでくくる。

 子供たちがはしっこく動き回り、邪魔なロープの切れ端を拾い集めたり、大人に道具を渡したりしている。

 スタンピードに備えて、各々出来ることをやっている。

 スタンピードに向けて町が一体になっている。

 これなら乗り切れるんじゃないかと、俺は頼もしさを感じた。


 作業する人たちの中で一際目立つのが冒険者ギルド長のババさんだ。

 ババさんは両肩に丸太を軽々と担いで、壁の外にあるバリケード作りに精を出していた。


 俺たちはババさんに近づき声を掛けた。


「ババさん。お疲れ様です!」


 俺が声を掛けると、ババさんは両肩に担いだ丸太を地面に下ろし、額の汗を手で拭った。

 人懐っこい笑顔を見せる。


「おー! リョージ君! 森の様子はどうだい?」


「オークの大規模集落が出来てました。町から近かったですよ」


「えー!? 本当かい!?」


 俺と聖サラマンダー騎士団のフレイル団長が中心になって、ババさんに状況報告を始めた。


 俺たちがババさんに報告を始めると、周りに人が集まってきた。

 冒険者、聖サラマンダー騎士団の団員、町の住人。

 みんな森の様子――スタンピードが気になるのだ。

 何せ生死に関わる。

 俺たちの周りにどんどん人が増え、俺たちの話に真剣に耳を傾けている。


「――という状況でした」


 俺たちの報告を聞くと、ババさんは深くため息をついた。


「ふう、そうか……。町の近くで二百匹規模のオークの集落か……。こりゃ本格的にスタンピードが近いな。もう、スタンピードが起っても不思議じゃない」


 ババさんは俺たちの報告を信じたが、一部の冒険者が不信の声をあげた。


「本当かよ?」


「嘘じゃねえか……」


「子供が交じったパーティーじゃねえか……」


「フカシこいてんじゃねえぞ!」


 声をあげたのは、見かけない顔の若い冒険者たちだ。

 多分、彼らは他所の町から来たのだろう。

 だから、ソフィーの強さを知らないし、俺たち『ひるがお』のことも知らない。


(まあ、知らない人が見たら、オッサンと子供の弱そうなパーティーだよな……)


 俺は思わず苦笑いした。

 知らないって幸せだ。

 ソフィーが怒ったら、君たちは雷魔法『ビリビリ!』を喰らってその場でスタンしながら失禁するかもしれない。


 俺はムッとしているソフィーの頭を優しく撫でて微笑む。


「ソフィー。大丈夫だよ」


「おとーさん! ソフィーは嘘つきじゃない!」


「うん、うん、そうだよね。大丈夫、大丈夫。あの人たちは、町の外から来た人たちだからソフィーのことを知らないんだ。怒らないであげてね?」


「むう!」


 ソフィーが口を尖らせ、ユーモラスな表情になる。

 俺はソフィーのご機嫌を取るべく、ソフィーを抱き上げてヨシヨシと背中を叩いた。

 きっとお腹が空いているから機嫌が悪いのだ。


「これが終ったらお昼にしようね。お昼はバーベキュー、焼き肉にしよう!」


「やった! お肉!」


 もう、ニコニコである。

 子供は気持ちがコロコロ変わって面白い。


 さて、ソフィーのご機嫌は戻ったが、一部の冒険者の不信感は払拭されていない。

 どうしようかなと考えていると、フレイルさんがズイッと前へ出た。


「諸君が信じられないのも無理はない。だが、証拠がある。これを見たまえ!」


 フレイルさんはマジックバッグから次々とオークを取り出し積み上げた。

 俺たちを疑っていた若い冒険者たちは、驚き後ずさりする。


「うおっ!?」

「マジか!?」

「こんなに沢山のオークが町の近くに!?」

「いや、済まねえな。疑ってしまって……」


 疑っていた冒険者たちは、オークの山を見て俺たちの話を信じてくれた。

 情報共有が出来て一安心だ。


 ぐ~。


 ソフィーのお腹が鳴った。

 太陽は真上に来ている。もう、お昼だ。

 早くソフィーにお昼ごはんを食べさせなくては!


 俺は冒険者ギルド長のババさんに申し入れた。


「ババさん。オークを沢山狩ったので、作業している皆さんに肉を振る舞いたいのですが、ここでバーベキューをしてはどうでしょう?」


「いやあ! ありがたいな! じゃあ、昼休憩にしよう。お~い! リョージ君がオークを提供してくれるぞ! みんな手伝ってくれ!」

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