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歴史資料館にて得られたこと

短めです。

 歴史資料館にたどり着き、そこまで人出は多くなくゆっくりと見て回れそうだった。そこで最初に目に飛び込んできたのは、町の由来が書かれていたところだった。読み進めていくと、その昔この地域一帯は狐が住み着いている場所だったことが分かった。


 1組の若い男女が休息場所を探していたところ、狐が生息している地帯に足を踏み入れた。その場所を気に入った男女は住むことを決め、なるべく生態系を崩さぬよう家を建てたことが始まりのようだ。少しばかり狐の棲みかを脅かしてしまうことのお詫びの気持ち込めて、小さなほこらを作り植物や木の実等をお供えし敬っていたようだ。


 しかしある冬の日に大寒波が訪れ、多くの狐たちが食べ物にありつけず亡くなったのだ。それ以来狐の姿はほとんど見られなくなったが、この地域に生息していたという証しと弔いを込めて狐の名前を残すことになったのだ。


 何故今現在は狐の文字が使われていないのかというと、当時は狐村と呼ばれていたそうだが徐々に人工が増え、狐が人を呼んで来たと考えられ木を伐採し家を建てながら村が発展していった経緯から、村から町になることができたからである。つまり村人に吉報が届いたのだ。それにあやかって町に人が根付くようにと桔根町と言われるようになったのだ。


「へぇーこの辺は狐が沢山生息していたんだね」


 裕之さんの言葉に私も同意した。


「そうですね。そんな言われがあったなんて初耳です」


 いくら私にとって田舎とは言えそんな町の成り立ちなど聞くことはなかったから少し驚いた。


「あっそういえば旅館の敷地内に狐の像があったよね! なんか関係あるのかな」


 それは私も不思議に思ったことだった。


「うーんどうなんでしょう……もしかしてほこらがあった場所とか」


 しかし私は見当違いのことを口にしてしまったようだ。


「ほこらだったらそのままにしておかないかな。由来を見る限りだと壊したり移動させたりしたら祟られそうだし」


「たっ確かにそうかもです。じゃあどうして旅館なんかに狐の像があるんでしょう」


 裕之さんと一緒になって考えていると、横から佑真さんに先を促されてしまった。


「まぁそれは旅館に帰ってから聞いてみれば良いだろ。とりあえず、他のブースも観ないか」


 ずっと同じ場所で立ち止まっているわけにもいかないので、館内をひと通り見て回ることにした。結局のところ、狐が生息していたこと以外は特段気になることはなかった。強いて言えば、ほこらは照須野神社の裏手から離れた場所にあったそうだ。早速私たちは旅館に帰ると、狐の石像について女将さんに訪ねることにした。


「すいません。外にある狐の石像について聞きたいのですが」


 裕之さんが真っ先に聞いてくれた。


「あぁ狐の石像ですか」


「はい。先程歴史資料館に行って来たのですが、桔根町は昔狐が生息していたところに創られたと書かれていたので、何かこの旅館と狐は関わりがあるのかと疑問に思いまして」


「そうですねぇ。私が嫁いで来た時に聞いた話になりますが、なんでも狐の石像を建てたことでこの旅館も繁栄していって先祖代々大切に守られてきたと聞き及んでおります。ですがそれ以上のことは分かりかねますね」


「そうですか。ありがとうございます」


「いえ、とんでもないことでございます。確かに不思議ですよね。いくら狐が由来になっているとは言えこの辺りのどこを探しても他では見かけない石像が建ってるんですもの。あるのが当たり前になりすぎて疑問にさえ思いませんでしたわ」


 私は他では見かけないという言葉に引っ掛かりを覚えた。だからなんとなく知りたくなってしまった。狐の石像が建てられた経緯があるはずだと。


「あのう……いつ頃狐の石像が建てられたのかご存知ありませんか」


 私は普段は疑問に思ってもほとんど口にせずにやり過ごすのに、今回ばかりは謎の解明につながる可能性にかけて質問していた。しかし女将さん自身はご存知ないようで、先代の女将が何か知っているかもしれないからと、連絡を取ってくださることになった。ついでとばかりに、闇に葬られた都市伝説について何かご存知ならその話も伺いたいと言付けを頼んだ。


 女将さんは何とも言いがたい表情をしていたけれど、了承していただけた。色々と気になるところではあるが、私たちは部屋に戻ることにした。白い光との関係性は分からないが、狐のほこらと言いどうも照須野神社とこの旅館が無関係でないように思えてきた。


 物事には原因があって結果があるからだ。結果や目の前の事実にばかり目を向けがちだが、大事なのは原因を知ることだと思う。


 それから数刻後、部屋に総支配人の男性が訪ねてきた。観光客であろう私たちが狐の石像のことや都市伝説について知りたがっているとなれば、当然何か訳ありだろうと思っただろう。私は訳あって闇に葬られた都市伝説を真実だと思っていて、照須野神社へ行く目的があったことと、この神社が半壊したことで火の玉のような白い光がとある神社で目撃されるようになったことで照須野神社との関連性を調べていることを話した。


 もしかしたら何かしら謎につながるヒントが得られるのではと思っていることを伝えた。そしたらまさかの回答が得られた。総支配人が言うには、我が家の直系の血縁関係者でありなおかつ旅館の跡継ぎになりうる人物しか知らない秘密の伝承があるそうだ 。その伝承こそ都市伝説につながる因果関係があるかもしれないと教えてくれた。詳しいことはここでは話せないそうなので、ある人物を訪ねるようにと住所を記載したメモを渡された。


 その人物は、総支配人の母であり先代の女将にあたる人物だった。

お読みいただきありがとうございます。


本日、あともう1話投稿します!夕方以降の予定です。


次話でいよいよ白いポストが何なのか明らかになりますが、果たしてその正体とは!!

予想ついた人もいそうな気がしますが……。

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