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1.変化が訪れる

お越しいただきありがとうございます。続編スタートです。

よろしくお願いいたします。恋愛の話になりますが、純粋な恋愛ものにはならないことを前もってお知らせしておきます。

そして恋の自覚は早いです。

 その日お兄から話があると言われていた私は、指定されたファミレスで会うことになった。料理を注文して食べている最中のことだった。そこで告げられた言葉に衝撃を受けることになる。

「さなに聞きたいことがあるんだけど……過去だか未来だかの自分と手紙の送り合いをしたことあるか」

「えっ!?」

 お兄の思いもよらない言葉に、驚きのあまりフォークを落とした。

「やっぱりあるんだな……じゃあ白いポストも知ってるのか」


 まさかお兄から白いポストの話が出るとは思わなかった。私が祖父から白いポストの話を聞いたときはすでに田舎には来ていなかったし、実家に帰って母から話を聞いたときもお兄はいなかったので、知らないはずだ。もし祖父がお兄にも内緒の話だと言っていたとすれば知っていても不思議ではない。ただ、私が過去の自分と手紙を送り合っていたことは、裕之さんと佑真さんしか知らない事実である。何故お兄は3人しか知らない事実を知っているのか、理解できない。


 このときの私はまだ知らなかった。桔根町で起こった出来事は手紙が送れなくなったことで終わったかに見えていたが、まだ続きがあったこと。そして過去の私が後悔を乗り越えたように今度は私が未来を変えるべき行動する立場になることを……。


 お兄からもたらされた私が迎えるであろう最悪な未来に両腕をさすりながら震えるのだった。


☆☆☆


 季節は進み秋から冬に移り変わるとき職場での人間観察が功をなし、周りとのコミュニケーションがだいぶ取れるようになってきた頃のことだ。水野先輩に雑誌を見せられて『これさなちゃん?』と聞かれた。裕之さんが写真家になると言ってから、私の写真を撮らせてほしいとお願いされたことが何度かあった。どうやら裕之さんはそのときの写真を地域の写真コンテストに応募して、入賞したらしい。それが雑誌に載っていて、私に似てると思って確認しに来たようだ。


 水野先輩はお兄の大学時代の後輩だ。今までほとんど話したことはなかったのだが、こうして話しかけられるようになったのは、佑真さんとすれ違うときは挨拶するようになったことが関係している。以前佑真さんに『職場で話しかけても良い』と言われて、その言葉を無視するわけにはいかないと思っての結果だ。とは言え佑真さんとは挨拶くらいしかしていないが。


 佑真さんは職務上水野先輩と行動を共にするので、挨拶するとき隣にいる確率が高い。そこで私と佑真さんが知り合いだとわかるやいなや言葉を交わす機会が増えたのだ。


「佑真に聞いても何にも答えてくれないしさ、ここに書いてある裕之ってのはあいつの弟の名前だろ? 撮影者栗原裕之になってるし、この写真の子が気になって聞きたかったんだ。そこでふと、さなちゃんの後ろ姿見たときピンときた」

 雑誌に載っているページを指さしながら、水野先輩は興奮した様子で聞いてきた。

「えっ雑誌に載ってるんですか……確かにこの写真は私です」

 驚いた。顔は映ってないが、何だか少し恥ずかしい。見る人が見れば誰だか分かりそうだから。

「やっぱりね」


 何でもチラッと見えた佑真さんの携帯ロック画面が、写真コンテストの入賞作品だったらしく、それを見て疑問に思った水野先輩はこの女性は誰だか気になって確認しに来たのだ。

「佑……栗原さんのロック画面その写真なんですか!?」


 私は思わず佑真さんと言いかけて、しまったという顔をしながらも何事もなかったかのようにふるまった。しかし水野先輩は私の言い間違いを気にするそぶりはなかったので少しホッとした。佑真さんと呼んでいることが知られてしまったら。何か色々聞かれそうなので、交流があることは隠しておきたいのだ。やましい気持ちはないが、後々面倒になりそうだから。


 佑真さんはきっと、裕之さんが入賞した作品だからロック画面にしているだけであって、私の写真だからと言うことはないだろうが、写真とは言え何だかいつも見られていると思うと非常に恥ずかしい。


 少し照れていると、噂の佑真さんが登場して『外回り行きますよ』と水野先輩を引きずって行った。まだ話し足りないと言いたげな表情をしている水野先輩を見送りつつ、佑真さんより先輩なのにどうも扱い方がどちらが年上か分からないと考えていた。本当に不思議な関係性だと思う。


 そして私も仕事しようとその場から立ち去ろうと思っていたところに、とある女性社員が現れ声をかけられた。佑真さんと同じ部署の青野凉子さんだった。営業成績上位者として名が挙がるので、存在は知っていた。

「小森さんだっけ……。最近随分あの2人と仲が良いのね」

「えっ? そんなことないですけど」


 何の接点もないはずなのに、私の名前を知っていたこともそうだが、まさかの問いかけに嫌な予感がした。話しかけられたら会話をするのはごく普通のことだ。なので特別仲が良いとは思っていなかった。しかしどうも青野さんにはそうは見えなかったみたいだ。

「そうかしら。見かけるといつも楽しそうに話してるじゃない。ただの同僚には見えないわ」

 楽しそうにと言われても、よく分からない。話が不穏な方向に向かいそうで、少し身構えてしまう。そこでふと気づく。もしかして青野さんは佑真さんと水野先輩のどちらかを好きなのだろうか。このパターンは何か文句を言われると相場が決まっている。あまりことを荒立てないように説明する。


「あっあのですね、私には兄がいるんですけど……兄から水野先輩が大学時代の後輩だって聞いていたので、なんか兄に雰囲気が似ているせいか話しやすくて、お兄ちゃんみたいだなって……それに栗原さんは水野先輩とビジネスパートナーなのでたまたま一緒にいる機会が多いだけで、栗原さんとはあまり話はしてないんですよ」

 実際佑真さんとは挨拶は交わすものの、それ以外にほとんど話すことはないので、噓は言っていない。


「じゃあ洋介くんのこと恋愛の意味で好きなわけじゃないのよね」

 どうやら青野さんは水野先輩のことが好きみたいだ。

「ちっ違います! 洋介くん――」

 私はうっかりつられて水野先輩のことを下の名前で呼んでしまった。

「あなたたち下の名前で呼ぶ仲なのね」

「いいえ違うんです! 青野さんが下の名前で呼んでるの聞いてつられてしまいました」

 しまった! と思いながら青野さんの少し怒気を含んだような声色に私が慌てて否定すると、青野さんは虚をつかれた顔をして突然笑い出した。


「ふっあはははは、あなた面白いこと言うのね! 私の周りにいないタイプだわ」

「すっすいません」

 こんなに笑われるとは思っていなかった。でも文句を言われるよりかは良い。

「いいのよ怒ってるわけじゃないんだから。でどうなの実際のところ。洋介くんはお兄ちゃんみたいに思ってるとして、ミステリアス王子栗原くんは。いつもなら洋介くんが女性社員と話してると、王子はどっか行っちゃうのに、小森さんと話してるときはその場にとどまってるのがちょっと不思議なのよね。何かあるんじゃないかなって思ってるんだけど」


 私は青野さんの見解に少し驚いた。佑真さんとはほとんど職場で話しをしたことがなかったので、そんな事実は知らなかったが、知り合う前も女性を寄せ付けないという話は聞こえてきていたし、この話を聞く限りだと女性嫌いと言われるのには、佑真さんのこういった女性社員とは関わらないという徹底した行動も原因なのだろうと思った。青野さんは周りをとても良く見ているのだなと思った。もしかしたら水野先輩を見ているから隣りにいる佑真さんも視界に入っているだけかもしれないけど。


「それは……偶然栗原さんの弟さんと知り合いになって、成り行きで友達になったんです……私なんかが友達なんておこがましいですけど」

「へぇ~そうなんだ。女性嫌いの王子が珍しいこともあるもんだね。あっそろそろ戻らなきゃまたあとで話聞かせてね」

 そう言うと青野さんは颯爽と立ち去って行った。災難かと思えば逆に仲良くなれそうな雰囲気だったので、安心した。それからはちょくちょく青野さん……もとい凉子さんと話すようになった。私のことは小森ちゃんと呼んでくれている。親しげに呼んでくれるのが、嬉しかった。


 凉子さんと連絡先の交換もして、下の名前で呼ばせてもらうような仲になり職場で唯一心の許せる人に出会ったことで、仕事も気が楽になった。私はよく分からなかったが、凉子さんが言うには職場で私を見る佑真さんは少し表情が柔らかいらしい。裕之さんと同じ年齢なのでおそらく妹を見る感覚だと思うのだが、そのせいで1部の女性社員からは嫉妬で嫌がらせをされるようになった。大抵は佑真さんのことを目の保養として見る人が多い中で、本気で好きな人は当然いる。そんな嫌がらせから守ってくれるのはいつも凉子さんだった。


 だから私は凉子さんのことを徐々に信頼していった。きっかけはヒヤリとしたけれども、仲良くなれて本当に良かったと思っていたのだった。


☆☆☆


 水野先輩を通して裕之さんが写真コンテストに入賞したことを知った日から数日後、裕之さんの写真コンテストの入賞祝いをしたいと佑真さんから声をかけられた。そして『裕之にサプライズをしたい』と相談をされて、私も同じ気持ちだったので一緒に祝うことになった。どんなサプライズをしようか相談し合うため佑真さんと2人で会う機会が増えた。いつも裕之さんと3人だったので、佑真さんと2人は何だか緊張した。決まって会うのは個室のあるお店だった。最初はカフェとかで会っていたが佑真さんを見る周りの視線がうるさかったからだ。


 佑真さんのようなイケメンがいたらチラチラと見てしまうのは仕方のないことだと思うが、見られる方はきっと良い気はしないだろう。女性嫌いになった理由も聞いているので、モテる人は本当に大変だなと思った。ただ同じ女性としていつまでも嫌いなままでいてほしくないと思うのが本音だ。世の中には良い子も沢山いるので、そんな女性に出会えることを願っている。


 そして話は煮詰まり栗原家にてサプライズパーティーを開くことになった。パーティーとは言え3人ぼっちだったけれど、それなりに楽しめた。当日は裕之さんと佑真さんには外出してもらい、その間佑真さんに借りた合鍵で家にお邪魔して部屋の飾りつけをした。誰もいない友達の家に入るのは何だか不法侵入をしている気分になってしまったけれど、私がクラッカーを鳴らして裕之さんを出迎えたとき良い顔で驚いてくれたので、帳消しになると思いたい。『さなちゃんありがとう』と言いながら、裕之さんに抱きつかれたときは、顔に熱が集まり心臓が爆発しそうだったけど、すぐに佑真さんが引きはがしてくれたので、事なきを得た。


 家族以外の異性に抱きしめられることが初めてで、軽く混乱した。思い出すと恥ずかしい。お兄とは違う異性であることを実感させられた。

 本当は手作りをふるまいたかったが、材料を隠す場所の問題もあり現実的に難しく、断念した。ほとんどがデリバリーになってしまったけれど良い思い出が出来た。


 途中お酒が足りなくなったと佑真さんが買いに行ってくれたので裕之さんと2人きりになった。

「なんかさ、さなちゃんといるときの兄さんは昔に戻ったみたいで嬉しいんだ」

「そうなんだね。良かったね!」

 裕之さんからそう言われて、私もなんだか嬉しくなった。この兄弟はお互いが大切で大好きなんだなと、とても温かい気持ちになった。それで裕之さんは佑真さんの昔話をずっとしていた。モテエピソードが多かったことは、純粋に羨ましいと思った。モテたいと1度は思うものだから。


 そんな昔話をしていたせいか、話の流れで2人の両親の話になった。仕事人間ではあったけれど、休みの日は必ず遊びに連れて行ってくれたそうだ。だからそこまで寂しくなかったらしい。ただうなずいて聞いているだけだったけれど、裕之さんは思いついたようにこんなことを口にした。


「そうだ。今度僕たちの実家に来てよ! 両親に紹介したいんだ。さなちゃんのおかげで今幸せだよって」

 裕之さんから突然そんな提案をされて私は少しドキドキした。多少お酒が入っていたのもあるが真剣な表情をしていたので冗談ではないようだった。裕之さんに実家へ招待されることになり、まるで文言が私のことを彼女として扱っているようでなんか恥ずかしかった。おそらく顔が赤くなっているだろうが、酔いもあいまって気づかれてはいないだろう。


 実家に招待と言えば恋人を紹介か結婚の挨拶かのどちらかだと相場が決まっている。全く他意はないのだろうけれども、異性を意識してしまいドキドキする。


 それからは裕之さんと写真のために男1人で入りにくいお店へ一緒に行ったりした。私が被写体になることも多かった。2人で会うことも増えてずいぶん仲良くなった気がした。佑真さんとはサプライズパーティー以来2人きりで会うことはなかったが、ときには裕之さんと2人きりでときには裕之さん、佑真さんと3人で私たちは仲良く過ごした。



 職場ではあいかわらず凉子さんと仲良くさせてもらっていて、何故か恋愛相談に乗ることが多い。どうやら水野先輩とは長いこと同僚で同期で飲み友達の関係が続いているようで、これ以上先の関係を求めて失敗したときに傷つくのが怖いらしい。恋愛未経験の私に相談されても、思いつくアドバイスは漫画の受け売りで『飲みの誘いをしばらく断って様子を見るとかどうですか』くらいだ。どの口が!? と思うけど『考えてみるわ』と返って来たので、取りあえずアドバイスになったようでホッとした。


 けれど凉子さんは、常に会いたいと思うようで『断るのは無理だわ』と言っていた。ちょっと可愛いところあるなと思うと同時に現実の恋愛は難しいんだなと思った。


☆☆☆


 それからまた季節は巡り新年度を迎える桜が舞うころ、お兄が地方勤務からこちらに戻って来ることになった。人事異動の発表があり知らせを受けたときはちょっと嬉しかった。兄妹仲は良いのでこれからは気兼ねなく会えるからだ。お兄が戻って来てから家族4人で実家に集まり団らんをした。久しぶりの雰囲気に心が和んだ。


 それからお兄の引っ越し先が気になり、住まいを訪れることにした。そのとき偶然だが水野先輩も来ることになっていた。2人は知り合いだろうからと、あえて知らされずにお互い来ることを知らなかった。ちょっとしたドッキリのつもりだったようだ。実際に驚いたので、お兄のドッキリは成功した。ちょっと悔しい。


 何故かそのときお互いの恋愛話になった。私は恋愛の意味で特定の気になる人はいなかった。そこで水野先輩が凉子さんに好意を抱いていると知った。

「同じ営業部の青野ってやつがいるんだけど俺ら唯一残った同期で、たまに飲みに行くんすよ。話が合うっつーかなんか段々かわいく見えてきてそんな感じっすよ」


 私は凉子さんが水野先輩に思いを寄せていることを知っているので、内心ドキドキした。

「でさーさなちゃん最近青野と仲良いだろ! いつも仕事終わりに飲みに行くことばっかでさ今度休みの日にデートへ誘てみようと思うんだけど、あいつどういうのが好きかな」

「えっ? うっはい」


 まさか水野先輩にも恋愛相談されるとは思っていなかったが、2人は両片思いなんだと分かった瞬間嬉しい気持ちになった。そしたら急にお兄が話に割り込んできた。


「なぁそいつってさ、もしかして青野凉子って名前か?」

 そうだと答えたらお兄の顔色が悪くなった。

「もしかしてお兄は凉子さんのこと知ってるの?」

「まあな……」

 お兄は眉間にしわを寄せながら神妙な面持ちで答えると、話に割り込んだにもかかわらずそれ以上何も言わず黙りこくってしまった。すごく変である。気にはなったが触れてはいけないような気がして、それ以上聞くことは出来なかった。


 そして私はお兄のことを放っておいて水野先輩と盛り上がった。水野先輩の大学時代の話や、凉子さんに関する話が多かった。常に話題を提供し続けてくれたおかげで、自ら話しを振る必要がなかったため、とにかく楽しくて飽きなかった。


 大学時代の話になったときは、さすがのお兄も会話に参加してきて、先ほどの神妙な面持ちは何だったのかと思えるほど楽しそうにしていた。頃合いを見て水野先輩と2人でお暇しようとしたところ、帰り際お兄に引きとめられた。


「なぁさな……明日って予定あるか」

「明日は行くところがあって……」

「もしかしてデート?」

 水野先輩が突然話をさえぎり、からかうように言った。

「ちっ違います! 栗原さんと弟の裕之さんと3人で、フラワーパークに行くことになってて。花をバックに私の写真撮りたいって言われて……」

「なぁーんだ。ついにさなちゃんも彼氏が出来たのかと思った」

 水野先輩の言葉に何故かお兄が動揺した。何故だろう。


「洋介は少し黙ってろ。さなに話あるんだけど、時間取れないか?」

「うっうん来週の日曜日なら……」

「分かった。じゃあ時間と場所また連絡する」

 難しい表情をする兄にただごとじゃない雰囲気を感じたが、気にしないそぶりを見せ、お兄の家をあとにした。

お読みいただきありがとうございました。


ブクマ、評価してくださった方本当にありがとうございます。

また明日の夜ごろ次話投稿予定です。

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