表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/501

第94話 チキチキプレゼント交換大会

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「第一回チキチキプレゼント交換バトルロイヤル飛んで走って底抜け脱線栄光のプレゼントへまっしぐら〜交換大会じゃーっ!」

 南郷の言葉が、学食中に響き渡った。

「そしてそのやり方は、白い象じゃーっ!」

「白い象?」

「white elephantだな?オッケーだぜ!」

 正雄以外の全員の顔に、ハテナマークが浮かんでいた。

「説明せねばなるまい!ホワイトエレファントとは、アメリカでめっちゃポピュラーなプレゼント交換のやり方なんや!」

「俺もミネソタじゃいつもやっていたぜ、ベイビー」

 正雄がニヤリと笑う。

「まずはツリーの足元にみんなのプレゼントを置く。次にくじ引きで順番を決めて、その順にプレゼントを選んでいくんや」

「それ、普通のプレゼント交換やないですか?」

 両津がいぶかしげに首をかしげた。

「ここからがホワイトエレファントの真骨頂や!」

「しんこっちょーや!」

 ひかりが繰り返す。

「誰かがプレゼントを選んでその中身を出したとする」

「出したとする!」

「次の人が、前の人のもらったものがいいなぁって思ったら、横取りできるんや」

「できるんや!」

「つまり、新しくプレゼントを選ぶか、前の人のものを横取りするかが選べるっちゅーわけや」

「わけや!」

「横取りされた人は、また新しくプレゼントを選べばええ。よー分かったか?」

「分かったか?」

「ひかりは分かったの?」

「わかんな〜い!」

 ズッこける奈々。

「まあやったら分かるわ」

「ほな、くじびきからですね?南郷センセ」

「めんどくさいから、出席番号順でええやろ。俺ら教官ズは君らの後でええわ」

「じゅあ私からね」 

 奈々が一歩前へ出た。

 ツリーの下には、すでにみんなからのプレゼントが置かれている。大きな箱、小さな箱、手さげの紙袋、スーパーのレジ袋などなど、様々なラッピングである。

 こういう時には、欲張らずにあまり大きくない物を選ぶべきよね。

 奈々はひとつうなづくと、小さめの紙袋を選んだ。

「これにする」

 そう言って振り返ると、ひかりが目をキラキラさせて奈々を見ていた。

 分かりやすい!

 これって多分ひかりが用意したプレゼントね。あの子、どんなものを選んだのかな?

 そんなことを思いつつ紙袋を開く。

「これって……ノート?」

 中には一冊のノートが入っていた。

「当たり〜!遠野ひかりのポエムノートでーす!」

「なんやそれ?」

 一同がそろって首をかしげた。

「ひかりのポエムが書いてあるノートなの?」

「雲さんの向こうには何があるんだろ。

 青い空かな。

 暗い空かな。

 それとも、また雲さんがいるのかな?」

 暗記している自作のポエムを語り始めるひかり。

「はいストップ!」

 だがそれは南郷に止められた。

「遠野のポエムが書いてあるノートや。次は伊南村か、どうする?横取りするか?」

「いらないですぅ」

 キッパリと愛理が答えた。

「あちゃちゃ〜」

「大丈夫よひかり、私はこれ欲しいわ」

「ホント?」

「うん、ありがとうひかり」

「てへへ〜」

 二人はなぜか照れたように頬を赤く染めた。

「ほんじゃ伊南村は新しくプレゼントを選ぶんや」

「はーい!」

 元気よくツリーのところへ飛び出す愛理。

 うーん……と、ちょっとだけ考えて、パッと紙袋を手に取った。

 どこかのブランドのロゴが入った袋である。おそらくショッピングでもらったものの再利用だろう。

「きっとこれ、宇奈月先輩のプレゼントですよね?」

 愛理の目は、ひかりとはまた違うキラキラで輝いている。

「あらあら愛理ちゃん、当たりですわ」

「宇奈月先輩なら、きっとコスパのいいお得なものを入れたに違いないですぅ!」

 パッと袋を開き、中からなにやら薄い封筒のようなものを取り出す愛理。

「なんか二枚入ってますぅ……えっと株主優待券?」

 小首をかしげる愛理。

「これ映画のチケットですぅ!しかも、宇宙検事野蛮の!」

「株主優待券をクリスマスプレゼントにするって、めっちゃコスパええやん」

「宇奈月先輩!いっしょに見に行きましょ!」

「しかも自分も見にいったらもっとコスパええやん!」

「愛理ちゃんが選んでくれて、一番コスパのいい結果になったですわ」

 奈央がニッコリと笑った。

「ほな次の人、あのチケット横取りするか?……って、次は宇奈月やないかい。自分からのプレゼントを横取りはせえへんわな」

 一同が笑いに包まれる。

「んじゃ宇奈月、新しいプレゼント選びや」

「かしこまりました」

 奈央も愛理と似た、封筒のようなものを選ぶ。

「これは……金一封ですわ」

「なんやて?!そんなんもありか?」

 両津が驚きの声をあげる。

「これは俺からのプレゼントや」

「南郷センセから?」

「そうや。何選んだらええか分からんかったから、お小遣いっちゅーわけや。これで好きなもん買ったらええ」

「あら?もうひとつ金一封の袋が入ってましたわ。両津くんに渡してくれ、って書いてあります」

 奈央がそれを両津に手渡す。

「南郷センセ、ボクにだけ特別に金一封ですか!ありがとうございます!」

「まあ開けてみ」

「えーと……新型ロボット試乗券」

 両津がぽかーんと口を開ける。

 大爆笑に包まれる学食。

 その後もプレゼント交換会は続き、以下の結果となった。


 棚倉正雄は、木彫りの熊をゲット。

「私が彫ったのよ」

 久慈にそんな趣味があったのかと驚く一同。

 遠野ひかりは、マリエが用意したナインチェのぬいぐるみをゲット。

 ナインチェ(Nijntje)は、日本ではミッフィーと呼ばれているウサギのキャラクターだ。ミッフィーはオランダ生まれ。マリエの住んでいたアムステルダムでは、街中いたるところでミッフィーが見られる。特にマリエがお気に入りなのは、ユトレヒト美術館のミュージアムショップだ。

 マリエ・フランデレンは、愛理が作った「泉崎奈々の手作り写真集」をゲット。

「こんなにたくさんの写真、いつ撮ったのよ?!」

「えへへ」

 奈々の突っ込みに、愛理は照れた笑顔で答えた。

 両津は、陸奥がどこかで買ってきたお土産のガイコツキーホルダーをゲット。

「これ、どこのお土産なんですか?」

「忘れた」

「誰かもらってくれ〜!」

 久慈教官は、奈々の手作りクッキーをゲット。

 ひかりがあまりにも欲しそうにしていたので、久慈は中から一枚をひかりにあ〜んした。

 陸奥教官は、正雄からの「果たし状」をゲット。

「決闘だ!俺と戦える権利をプレゼントするのさ!ベイビー」

 南郷教官は、両津からのスノードームをゲット。

「雪の中に通天閣が立ってるやん。関西人に関西土産って、センス無いなぉ」

「いやいや、誰が引くか分からんかったからや!」

 こうして、クリスマスの夜はふけていく。

 校舎の外では、いつしか雪が降り始めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ