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第92話 クリスマスパーティー

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「メリー冬至〜!」

 都営第6ロボット教習所の学食に、南郷教官の元気な声が響き渡った。

「南郷センセ、それなんですの?」

 両津がいぶかしげに聞く。

「今日はめでたい冬至やからな!」

「はぁ」

「だからこうして、みんなで祝うために集まったんやないかい」

「いや、今日はクリスマスパーティーちゃいますの?」

「そうとも言う」

 ここ最近、あまりにも不穏な事件が多発している。

 第2校舎工事現場の重機の暴走。新型軍用ロボット25式人形機甲装備、通称ヒトガタの暴走。そのどちらにも、同じ生徒たちが巻き込まれている。

「クリスマスパーティーなんてどうでしょう?きっとあの生徒たちも元気になるのでは?」

 そんな久慈教官の言葉が鶴のひと声となった。

 今日は全ての授業をお休みにして、巻き込まれ体質とも言えるいつもの生徒たちのためにパーティーが用意されたのである。もちろんクリスマスの。

「両津くんは冬至のことを知っとるか?」

「当たり前ですやん。一年で昼が一番短い日とちゃいますの?」

「正解や。北半球で太陽の位置が一年で最も低くぅなって、日照時間が一番短くなる日や。逆に太陽の位置が一年で一番高くなる夏至と日照時間比べたらビビるで。東京で約4時間40分、北海道の根室で約6時間30分もの差があるんや!」

 南郷が胸を張る。

「いやいや、クリスマスに冬至のミニ知識言われてもなぁ」

「両津くんはなーんにも知らんねんなぁ。クリスマスは冬至から生まれたんやで?」

「なぬ?!それどういうことなんや?!」

 南郷はニヤリと笑って先を続けた。

「クリスマスっちゅーのは、簡単に言うと太陽の復活を祝う古代ヨーロッパのお祭りと、キリストさんの誕生を祝うことが結びついたものなんや」

 ふむふむと、その場にいる生徒たち全員がうなづいた。

「聖書をよく読むと分かるんやけど、キリストさんのお誕生日はハッキリとは書かれてへん。まあ諸説ありってヤツや」

 南郷の熱弁に、一同が注目している。

「ほんで、クリスマスを決めた年の冬至が12月25日やったし、キリスト教徒以外の人もみんなでお祝いしましょーってことで、キリストさんの降臨日を12月25日にしたのがクリスマスっちゅーわけや。どや、メリー冬至やろ」

「ほえ〜」

 ひかりが分かっているような、何も分かっていないような謎の声を出した。

 おそらく理解できていないに違いない。

「クリスマスを決めてくれた当時の人らに感謝やで。冬至だけに」

 静まり返る学食。

「うわ〜っはっはっは!」

「まぁ、そういう説もあるってことだ。そうですよね、南郷さん?」

 陸奥の突っ込みに南郷が大きくうなづいた。

「そうや。まさに、諸説ありってヤツやな」

「とってもお勉強になりますわ」

「こっちのお勉強は楽しいですぅ」

 奈央と愛理は感心の目を南郷に向けていた。

「ああーっ!だからこのケーキ、パンプキン色してるんや!」

 両津が指差したクリスマスケーキは、カボチャのようなオレンジ色をしている。

「そや。冬至にはカボチャを食うのが日本のしきたりやからな、俺が特別に注文したんや。ついでにゆずも乗ってるでぇ」

「センセ……ハロウィンはもう終わりましたで」

「おいしかったら何でもええんや〜!」

 再び南郷の自信あふれる声が、学食全体に響き渡った。

「ねえねえジョニー、そのセーターとっても可愛いね!」

 南郷の話を理解できずにいるひかりが、全く別の話題を振った。

「だろ?これは俺の故郷、アメリカのミネソタで着ていたアグリーセーターさ、ベイビー!」

「あんた日本生まれでしょ!」

「マイトガイはそうさ」

「それもあんたのことでしょーが!」

「俺はジョニーなのさ、ベイビー」

 奈々と正雄は相変わらずである。

 今日のパーティーのドレスコードは「自由」。いつも制服姿の生徒たちも、このパーティーだけは好きな服装でそれぞれ着飾っていた。

 正雄が着ているのは、クリスマス関連の様々な図柄が大集合した大きめのセーターだ。

 ツリー、トナカイ、サンタ、星、鐘などが、セーターの真っ赤な地色に白や緑で編み込まれている。アメリカのクリスマスパーティーでは定番のアグリーセーターである。

「クリスマスを祝うパーティーじゃあ、このカッチョいいセーターを着るのがアメリカンってもんだぜ」

「カッチョいいと言うか……それ、ダサいわよ」

 奈々の反応は正解だ。

 「アグリー」とは日本語で「ダサい」のこと。

 アメリカでは毎年12月の第3金曜日は「ダサセーターの日」と定められている。これとクリスマスが結びつき、クリスマスシーズンにはドレスコードを「ダサいセーター」とするイベントやパーティーが、アメリカ全土で開催されているのである。

「カッチョ悪いけど可愛いよ?」

 ひかりが、ホメているのかけなしているのかサッパリ分からないことを言う。

「ありがとうベイビー!まさにカッチョ可愛いのが俺、ジョニーなのさ!」

 正雄の白い歯がキラーンと光った。

「ひかりはカッチョ悪いって言ったんだけどね」

 突っ込みをあきらめた奈々は、小声でそうつぶやいていた。

「みんな!そろそろプレゼント交換の時間やで〜!」

 南郷の言葉に盛り上がる一同。

 いよいよクリスマスパーティーの本番である。

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