表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/508

第72話 追いかけっこ

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「佐山さん!レスキューロボットの操縦は?」

 佐山三等陸佐の無線機から陸奥の声が響いた。

「もちろん、訓練でマスターしています」

 すかさず佐山が答える。

「では、私と一緒にあいつらの所へ向かってもらえませんか?暴走ヒトガタの対処は機動隊のキドロに任せるとして、その補助や生徒たちの救助ならレスキューロボでも可能だと思うんです」

「了解、すぐそちらへ向かいます」

 そう言うと佐山は、格納庫前広場にいる生徒たちを見渡した。

「聞こえていましたね?私はこれから陸奥さんと一緒に、トクボの補助に向かいます。危険なので、君たちはすぐに校舎へ避難してください。いいですね?」

「了解ですわ」

「同じくですぅ」

 奈央と愛理が答えた。

「では」

 そう言うと佐山はきびすを返し、レスキューロボットの格納庫へ走り出した。

 救助関係のロボットや装備は、こことは違う専用の格納庫にある。佐山と同時に、陸奥もそこへ向かっているはずだ。

「ひかり……心配」

 ぽつりと、マリエのつぶやきが聞こえる。

「そうやな。大丈夫やろか?」

「暴走している遠野さんと暴走しているヒトガタって……いったいどうなってしまうのでしょう?」

「泉崎先輩のことも心配ですぅ」

 一同押し黙ってしまう。

 正雄がスッと顔を上げた。

「なら、俺たちも二人を助けに行かないか?ベイビー」

「軍用ロボットに、俺らの教習用ロボでかなうわけないやん」

 両津が苦しげに言う。

「そうですわね」

「困ったですぅ」

 そんな皆の顔を、正雄はニヤリとして見回した。

「別に戦って勝とうなんて思ってないさ」

「ほんならどうするんや?」

「さっきも佐山さんと陸奥教官が話してただろ?補助ならできるって」

「ほじょってなんですかぁ?」

「そうやな……みんなで遠くから岩とか投げてぶつけるとか」

「鉄骨とかなら、投げるだけでも威力がありますわ」

「棚倉キックはどうかな?」

 両津が首を横に振る。

「近づいたらアカン。俺らは遠くから手助けするんや」

「じゃ、決まりだな」

 キラリと正雄の歯が輝いた。

「マリエちゃん、みんなで行こうぜ」

「うん」

 マリエは微笑みながらうなづいた。


「奈々ちゃん!あれ、どんどん追いついて来るよ〜!」

 その頃奈々とひかりは、暴走ヒトガタからひたすら走って逃げていた。

「いいから頑張って走りなさい!追いつかれたら大変よ!」

 奈々から激が飛ぶ。

「でも近づいて来るの、とっても怖いよ〜」

「遠野さん、いつも暴走してすごいスピードで走ってるじゃない!あれよ、あれ!」

「わざとじゃないもん!」

 次第に迫ってくる暴走ヒトガタ。

「あれって、今私達が乗ってるロボットと同じ機種よ、そんなに怖がらなくてもいいわ」

「本当?奈々ちゃん。でも……」

「でも?」

「あれって無人なんでしょ?」

「そうよ、暴走してるんだから」

「オバケが操縦してたりして」

「ひぇぇ〜!」

 奈々機のスピードが上がった。

「待ってよ奈々ちゃん!追いつけないよ〜」

 そんなやりとりのなか、暴走ヒトガタはどんどん加速して来ている。このままではすぐに追いつかれてしまいそうだ。

 ひかりのスピードを上げるのに、何かいい方法は無いのか?

 奈々はひらめいた。

「遠野さん!もっと速く走れたら、あなたのこと、遠野さんじゃなくて『ひかり』って呼んでもいいわ」

「へ?」

「何度も言わせないでよ、ひかり!」

 ばひゅーん!

 ひかりのヒトガタがすごい勢いで加速した。

 先行していた奈々を追い抜く。

「やればできるじゃない」

 やっぱりこの子には才能がある。私が伸ばしてあげたいな。

 そんなことを思い、奈々はほんの少し頬を赤く染めた。

「奈々ちゃん、顔が赤いよ?暖房の温度下げた方がいいよ?」

 こんな状況でも、ひかりはいつものボケた突っ込みを入れてくる。

 絶体絶命の危機のなか、奈々の心に温かいものが広がっていた。


 海上自衛隊の護衛艦白龍の甲板には、二機のキドロが立っていた。

 海上運搬中に、キドロトランスポーターの荷台から降りたのである。

 トクボで採用しているトランスポーターは、陸上自衛隊が戦車の運搬に使用している特大型運搬車に、ガルウィング式の銀色のカバーを取り付けたものだ。全長16.99mにもなる超大型車両だ。こいつにはキドロの補修パーツや手持ち用の様々な武器、予備バッテリーなどが積まれており、一台で小さな要塞ともなり得るシロモノである。

「詳細が分かって来ました」

 キドロのコクピットに、指揮車にいる田中美紀技術主任からの無線が入る。

「あのヒトガタは昨日、教習所に到着した三台のうちの一台です」

「防御シールドの起動は?」

 夕梨花の問いに美紀が答える。

「シールド起動前に、袴田素粒子に感染したとのこと」

「あの逃げてる二台はどうなってるんだ?」

 後藤が首をひねる。

「あの二台は、それぞれここの生徒が操縦しています」

 夕梨花が息を呑んだ。

「名前は、遠野ひかり。それから泉崎奈々」

「泉崎だって?」

 後藤の声が夕梨花の心に突き刺さる。

「私の妹よ」

 奈々がそう言ったその時、美紀の声が大きくなった。

「もうすぐ接岸します!」

「了解!」

 夕梨花が決前と言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ