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第71話 暴走するヒトガタ

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

 ドッカーン!

 とてつもない音を響かせて、ロボット格納庫の壁が破壊された。

「なんや?!」

「何が起こったんだ?!」

 驚いた両津、正雄、奈央、愛理、そして佐山三等陸佐が格納庫を振り向く。

 始めはもうもうとした土煙で、事態の把握は困難だった。

 だが、時間と共にその巨体があらわになっていく。

「おいおい、やばいんじゃねぇか、あれ」

 珍しく正雄が怯えたような声で言った。

 格納庫の横壁を突き破って姿を表したのは、陸自の軍用ロボット25式人形機甲装備通称ヒトガタである。

「ヒトガタ?!あれって、誰も乗ってへんよな?」

「そうですわね、恐らく無人さんではないでしょうか?」

「オバケが運転してるですぅ」

 とまどう一同。

「しまった!ここに泉崎くんがいたら、すごく面白いことになったのに!」

「なぜですかぁ?」

「オバケだからさ!」

 正雄がニヤリとマイトガイスマイルを見せた。

「陸奥さん!」

 佐山が無線機に叫ぶ。

「佐山さん、何かありましたか?!」

「残ったヒトガタ三号機の暴走です!」

「なんですって?!」

 しまった!

 陸奥は心の中で舌打ちをした。そうなのだ、ヒトガタは三台搬入されたのだ。もちろん三台目にも、陸奥のいる対袴田素粒子防衛線中央指揮所からの遠隔操作機能は付いていない。

 こちらの感染リスクも考えるべきだった!

 顔をゆがめる陸奥。だが、起こってしまったことを悩んでいる時間はない。早急に対処しなくてはならないのだ。

「陸奥くん、ここにあるロボットでヒトガタに対応できると思うかね?」

 雄物川の問いに、陸奥は首を横にふった。

「ここの最強戦力は救助用のレスキューロボです。重機一台にあれだけ手こずったんです。恐らく、ヒトガタには手も足も出ないでしょう」

「ならどうする?!」

 一瞬の間の後、陸奥は意を決して雄物川に言った。

「機動隊のトクボに、出動を要請しましょう!」

 雄物川は重くうなづいた。


「遠野さん大丈夫?ケガはない?」

「うん、大丈夫だよ奈々ちゃん」

 ひかりのヒトガタは、やっと暴走がおさまっていた。

 都営第6ロボット教習所教習コースの外周、もう海が目の前に迫っている。

「大丈夫じゃないわよ。もう少しで海にドボーンだったじゃない」

「どぼ〜ん!」

 ひかりが嬉しそうに繰り返した。どうやら彼女は擬音が大好きなようだ。

 キュッキュッ、キュー。クゥー、クゥー。

 越冬するために日本に渡ってきたカモメたちの鳴き声が聞こえている。

「きゅきゅきゅのきゅ〜!」

「ひぇぇ〜!」

 ひかりによるカモメの鳴き真似が、奈々には某オバケアニメの主題歌に聞こえたようだ。

「怖い歌歌わないでよ〜!」

 カモメは海と航海を象徴する鳥で、海で亡くなった水夫の魂が姿を変えたものだと言われている。むやみに傷つけることは不吉であり、家や船の窓にカモメがぶつかると、何か良くないことが起こるとも言われている。

 そんなカモメたちに見守られながら、ひかりと奈々は、やっと穏やかな日常を取り戻そうとしていた。

「二人とも、ここにいたら危険や!」

 そんなことを許さない声が、二人の無線に飛び込んできた。

 南郷だ。EVで二人の元に近づいてくる。

「南郷教官、どうしたんですか?」

 もうひかりの暴走は収まったのに、何のことだろう?

 そんな気持ちで奈々が問いかけた。

「もう一台のヒトガタが暴走してるんや!しかも、こっちへ向かっとる!」

 驚愕する奈々。だがひかりにはまだピンと来ていないようだ。

「私みたい。誰が暴走させてるんですか?」

「ちゃう!無人の暴走や!」

 南郷のその言葉に、ひかりと奈々の脳裏に先日の暴走重機の姿が浮かんだ。

「奈々ちゃん、どうしよ〜?!」

「軍用ロボットの暴走って、ヤバすぎじゃない!」

「陸奥さんの指示で、すでにシールドは張ってるんやな?」

 目の前のモニターに浮かぶ「対袴田素粒子防御シールド起動中」の赤文字を見る二人。

「はい。何のことかは分かりませんが、起動中の文字がディスプレイに出てます」

「やっぱり漢字だらけで読めないよ〜」

 無線から南郷のホッとしたような息が聞こえた。

「とりあえず今は読めんでも大丈夫や。とりあえずここから離れよ。ヤツが来たら大変なことになるで」

 だが、南郷の心配は現実のものとなりつつあった。ガシン、ガシンというロボットの走る足音が聞こえ始めたのだ。

「奈々ちゃん、なんか近づいて来てるよ」

「やばいやばい!遠野さん、逃げるわよ!」

「ええっ?!どっちに逃げればいいの?!」

「いいから、私に追いてきなさい!」

 暴走ヒトガタがやって来る方向とほぼ逆に、海沿いを走り出す奈々。

「待って奈々ちゃん!」

 ひかりも後を追った。


「もうすぐ見えてきます!」

 夕梨花と軍用ロボット専門の傭兵、後藤茂文の乗るキドロの警察無線に、トクボ部技術主任田中美紀の声が響いた。

 今回、機動隊のキドロチームの編成は特殊だった。別件に対応するために出動中の沢村、門脇に代わって、先日までテロリストだと思われていた男が参加しているのだ。

 夕梨花たちキドロチームは、それを専門に運ぶトレーラーのトランスポーターごと、海上自衛隊の護衛艦の甲板にいた。

 海外からは空母だと言われているヘリコプター搭載護衛艦の白龍である。

 全長248メートル、基準排水量は19,500トンの巨体の甲板には、軍用ヘリ14機の搭載能力がある。そこにキドロ部のトレーラー二台と指揮車が乗せられている。

「お嬢ちゃんよぉ、すげーなこれ」

 ゴッドこと後藤が口笛を鳴らす。

「あら、機動隊のことは何でも知ってるんじゃなかったの?」

「いやぁ、海自とこんな連携をしているとは、驚きだぜ」

 暴走ロボット事故の急増で、島しょ部での事案を警戒した警察上層部の心配により、海自との連携が結ばれた。いざと言う時に白龍に乗り込めるよう、東京港にはトランスポーター専用のスロープが作られているのだ。

「あれです!」

 美紀の声にディスプレイに目をこらす夕梨花と後藤。

 見え始めた巨大な埋立地の海沿いに、何かが走る大きな土煙が見える。

「ヒトガタね」

「そうだな。でもどうして三台も走ってるんだぁ?」

 夕梨花と後藤が見つめる前で、三台のヒトガタが追いかけっこを繰り広げていた。

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