表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/508

第70話 ゴッド

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

 警視庁機動隊の特科車両隊トクボ部の広い会議室は、重苦しい沈黙に包まれていた。

 メンバーはトクボ部部長白谷雄三警視長、キドロチーフパイロット泉崎夕梨花警部、酒井弘行理事官と板東保則捜査主任、そしてトクボ部所属の捜査員たちが十二名。

 キドロパイロットの沢村泰三と門脇進は出動中である。原宿駅前で違法駐車ロボットが暴走の通報を受け、その対処に出ている。小型の軽ロボット一台のため、チーフの夕梨花はこの会議を優先することになった。

「おいよぉ、いつまで俺とにらめっこしてるつもりなんだ?トクボの皆さんよぉ」

 ガタイのいい男が太い声で言った。

 軍事ロボット専門の傭兵、後藤茂文だ。

 冬だと言うのにモスグリーンのシャツ一枚に下はジーンズ。コートなどの上着は持っていない。バッグらしきものも無く、財布などは恐らくジーンズのポケットに押し込んでいるのだろう。

「私は部長の白谷だ」

 トクボ部から、まずは部長が口火を切った。

「こっちはよく知っているだろう。チーフパイロットの泉崎くん。こちらが酒井理事官と板東捜査主任、そしてトクボ部の捜査員たちだ」

 後藤は全員を値踏みするように見渡した。ほんの少しニヤけてはいるが、その目つきは恐ろしく鋭い。

「俺は後藤茂文、階級は……警部なんだぜ」

 そう言うと彼はジーンズの後ろポケットから、何かを取り出した。

 一同が驚愕する。

「ホンモノだよ」

 チョコレート色の革製で縦約11センチ、横約7センチ。二つ折りを縦に開くバッジケースタイプのそれは、紛れもなく警察手帳だ。

 上側には、後藤の顔写真と名前、階級「トクボ部付警部」などと記されたカード。下側には都道府県警名が組み込まれたエンブレムが付いている。後藤のそれは警視庁のエンブレムである。

「手帳なんて言うからメモ帳が付いてるとばかり思ってたぜ。書くとこねぇんだなぁ」

 後藤はのんびりとした口調でそう言うと、警察手帳をふるふると振る。

「2002年の改定で、手帳からこの身分証タイプに変更になったんです」

 美紀がまとはずれな説明をする。

 いや、今はそこじゃないでしょ。

 一同はそう思っていた。

「なぜあなたがそんなものを持っているの?」

 ここにいる全員を代表するかのように、夕梨花が後藤に言葉を投げた。

「細かいいきさつは、俺より部長さんの方が知ってるんじゃねぇのか?」

 後藤の視線に白谷がうなづく。

「後藤さんとの捜査は、」

「おっと、さん付けはくすぐったいぜ。ゴッドと呼んでくれよ」

「分かった、ゴッドとの共同捜査は、総監から直々に下ってきた命令だ」

 会議室の全員が目を見開いた。

 総監とは警視総監のことだ。東京を管轄する警視庁のトップだが、各都道府県警のトップは警視監のため、実質日本警察のトップである。

「そこから上は、俺にも分からん」

 白谷がフッと息を吐いた。

「まぁそれに関しては、俺だってよく分からんのさ」

 後藤がうそぶく。

「何を言ってるんだ?!」

 酒井理事官が後藤をにらみつける。

「そこのお嬢ちゃんにも言ったんだがよぉ、俺はクライアントのことをあまり詮索しないことにしてるんだ。金払いさえ良ければ誰だっていいからよぉ」

 後藤がニヤリと笑う。

「だがよぉ……今回はちょっと興味が湧いててなぁ。少し探りを入れてみたんだが、ピシャリと情報を探れなくなっちまった」

「どういうこと?」

 夕梨花が後藤を見つめる。

「警視総監殿さえ動かせる勢力……。公安や別班にもそれは無理だろ?」

 一同がごくりとつばを飲む。

「俺は、内調の仕業じゃねぇかと踏んでる」

「部長のご友人が言っていたのはこのことでは?」

 夕梨花の質問に白谷がうなづいた。

「確かに辻褄は合うな」

「お、さすが白谷部長だな。情報通でいらっしゃる」

 なぜか後藤は嬉しそうだ。

「あなた、部長の何を知っていると言うのよ?!」

 夕梨花の非難の言葉に、後藤は視線を向ける。

「結構知ってるぜ。まぁ機密事項らしいから、ここでは言えねぇ。なぁ部長さんよ」

「その話は後だ。まずは次のテロについて、君が知っている情報を聞かせてくれ」

「もちろんだぜ。そのために敵地に乗り込んできたんだ」

 やはり敵地じゃないか。

 夕梨花がそう思った時、大会議室に大音響でアラーム音が鳴り響いた。

「何事だ?!」

 白谷の言葉に、会議室奥のコンソールに向かっているトクボ部員が答えた。

「ロボットの暴走事案が発生、キドロによる鎮圧の緊急要請が来ています!」

「どこだ?!」

「場所は東京湾の埋立地、都営第6ロボット教習所です!」

 部長、そして夕梨花の顔が青ざめる。

「奈々……」

 都営第6ロボット教習所には、夕梨花の妹、泉崎奈々が合宿しているのだ。

「機種は分かるか?!」

 白谷のその声に、コンソール前の部員が一瞬絶句する。

「そんなことって……」

「どうした?!」

「暴走しているのは、陸自所属の25式人形機甲装備、ヒトガタです!」

 会議室の全員が驚愕した。

「沢村と門脇は?!」

「まだ原宿で対処中で、戻るにはあと数時間かかると思います」

 美紀が苦しげに白谷を見る。

 夕梨花がキッと顔を上げた。

「ゴッド、あなたキドロの操縦は?」

「もちろんだ」

「部長、ゴッドと行かせてください。彼はロボットでの軍事経験があります。陸自のヒトガタとやり合うなら、それが生きるかもしれません」

「お嬢ちゃん、大胆だねぇ」

「予備機の四号ロボのオーバーホールは終わっています!」

 美紀がコンソールの画面を見つめて言う。

 白谷は一瞬の逡巡の後、命令を下した。

「分かった。泉崎くんとゴッドはキドロで出てくれ。トランスポーターの運転は三国くんと森下くん、田中くんは俺と指揮車だ!」

《了解!》

 一同は会議室を駆け出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ