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第61話 決戦

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「部長、上の判断は?」

 夕梨花の声にトクボ部長の白谷の顔が険しくなる。

「やはり、テロには屈せず、だ」

「分かりました。では仕掛けます」

「ああ。だが、アイアンゴーレムの機関砲は20ミリだ。連射されたらこの通りは廃墟になる。策はあるのか?」

 無線からザザッとノイズが鳴る。

「我々三機で同時に、単射であいつの機関砲を狙います」

 キドロパイロットの沢村、門脇も聞き耳を立てている。

「そのうち一発でも当たれば、機関砲を無力化できます」

「それから格闘戦に持ち込むってわけですね」

 沢村が少し明るい声で言った。

「そうだな。三発の単射なら、外れても街への被害は最小限というわけか」

「はい」

 白谷の言葉に夕梨花がうなづいた。

「よし、その手でいこう」

《了解!》

 三つの声が指揮車内に響いた。

「おい、返事はまだなのか?」

 後藤の声が無線機に入電する。

「もうあんぱん食っちまったぞ。もっと買っておけばよかったよなぁ」

 実にのんきである。

「あんぱん食ったら、もっと腹が減ってきやがったぜ」

 そんな声を聞きながら、夕梨花たちキドロは機関砲のレバーを単射モードに切り替える。

「おーい、お嬢ちゃん。聞こえてるんだろう?なんとか言ってくれねぇかなぁ」

 機関砲をかまえ、慎重に狙いをつける。

「カウントダウンに合わせて、同時にシュートだ」

 白谷から指示が飛んだ。

「五秒前、四、三、二……」

「なにっ?!」

 夕梨花は自分の目を疑った。

 自機の横に違法駐車されていた自家用ロボットが突然立ち上ったのだ。

 沢村機、門脇機にも同様の事態が起こっている。

「どういうことだ?!」

 驚愕に包まれるトクボ指揮車の面々。

 いきなり動き出した自家用ロボットは、キドロの機関砲に飛びついてくる。まさに不意打ちだ。ガゴン!大音量を響かせて、キドロ二台の機関砲がネジ曲がった。

「わりぃ。俺一人じゃないんだわ」

 闇の殉教者のメンバーが、駐車ロボットに潜んでいたのである。

 かろうじて自家用ロボの直撃を免れた夕梨花機は、そんな事態に目もくれずアイアンゴーレムへ発砲した。

 ズガン!ゴーレムの手から、機関砲が跳ね飛ばされる。ズガガガと轟音を立てながら、30ミリ弾で穴の空いた機関砲が舗装道路を転がっていった。

「へぇ、やるじゃないかお嬢ちゃん」

 後藤が不敵に笑う。

「くっ!」

 ゴーレムの得物を撃ち抜いた夕梨花機だったが、直後に自家用ロボの突進を受ける。その直撃に、夕梨花機の機関砲も跳ね飛ばされた。

「これで思う存分暴れられるってもんだぜ。俺は飛び道具が嫌いなんだよ」

 だが、ゴーレムの近くに駐車されていた自家用ロボットが、いきなりゴーレムの足を掴んだ。

「おい、何すんだ?!」

「すまんゴッド!俺じゃない、こいつが勝手に動いてるんだ!」

 トクボ指揮車内に、また違った警報音が響く。

「部長!袴田素粒子反応です!」

 美紀の言葉に目を見開く白谷。

「あの自家用ロボは、テロリストが操縦しているんじゃないのか?!」

 夕梨花機に猿のようにとびかかる自家用ロボ。超硬合金の特殊警棒をひと振り。ジャキン!と三段式に伸びたそれで、自家用ロボを払いのける。だが、全くひるむ様子もなく再び挑みかかろうとしてくる。

「おいおい、そっちでキドロとやりあってるのも、勝手に動いてるのか?!」

 後藤の問いに悲痛な声が響く。

「何が何やら、俺、操縦レバー触ってねぇんですよ!」

「ちっ、暴走か。仕方ねぇ、ロボを捨てて今すぐ脱出しろ!」

「分かった!」

 夕梨花機の周りで動き出した自家用ロボは五台。その全ての乗降口が開き、転がるように男たちが飛び出してくる。事故などの緊急事態に備えて、自家用ロボにも脱出装置が義務化されているのだ。

 運転者がいなくなっても、自家用ロボの動きに変化はない。夕梨花、沢村、そして後藤のロボットを狙ってじわじわと近づいてくる。大きな輪になり、その包囲を縮めてくる。

 互いに背を向け、その輪の中心に追い詰められる三台のロボット。

「なんだかおかしなことになっちまったなぁ」

 後藤がうそぶくように言う。

「なぁお嬢ちゃん、一時停戦といかねぇか?」

 一瞬の逡巡の後、夕梨花が答えた。

「分かった。とりあえずこいつらをなんとかしましょう」

「よし。じゃあ俺はこっちの二台をぶっ潰す。オタクらでそっちの三台を頼むぜ」

「沢村くん、その一台をお願い!私はこっちの二台を!」

「了解!」

 指揮車では美紀がすごい勢いでキーボードを叩いていた。

「泉崎さん、沢村さん、門脇さん、各機種のどこにコントロールモジュールがあるか、それぞれのディスプレイにオーバーレイさせます!」

「お願いします!」

 自家用ロボットを捉えているディスプレイに、オーバーレイで構造図が映し出される。コントロールモジュールが赤く点滅していた。

 夕梨花がジャンプした。その動きに追いつけない自家用ロボは、一瞬動きを止める。そのスキを見逃す夕梨花ではない。超硬合金の特殊警棒をコントロール部に突き立てる。自家用の薄い車体を貫いて、超硬合金が食い込んでいく。腰を落とし、足に力をいれてぐっと押し出すと、警棒が根本まで自家用ロボに突き刺さった。

 ガコン…プスン…そんな音を立てて停止する。その瞬間を狙ったのか、もう一台が夕梨花に飛びついてきた。

 ブン!と言う音を立てて夕梨花の左アームが振るわれる。その直撃を受けた自家用ロボは吹き飛ぶように数メートルを転がった。

 再び夕梨花のジャンプ。そのまま転がっている自家用ロボに馬乗りになり、特殊警棒を振り下ろす。

 グチャン!とボディがひしゃげ、ジタバタともがく自家用ロボ。そのコントロール部に向けて、左マニピュレーターを手刀のように突き立てる。豆腐に包丁を入れるかのようにグズっと手首まで突っ込むと、コントロールモジュールを掴んで引き出した。

 プチプチと切れるケーブル類。ガコンとひと揺れして、自家用ロボは沈黙した。

「ほらほら、俺に追いつけるかねぇ」

 劣化コピーと言えども、アイアンゴーレムは軍用である。自家用ロボの速度や機動力に劣ることはない。ガシガシと大股で走るゴーレムに、二台の自家用ロボは追いつけずにいた。

「よし、こっちだ!」

 後藤はハンドルを切るように操縦レバーを動かし左折、公園通りをNHKに向かって走り出す。怒りに我を忘れたように痙攣しつつ追う自家用ロボ。

 その頃には沢村機、門脇機共に相手のコントロール部を破壊していた。

 その時、渋谷に大きな爆発音が轟いた。

 後藤機は左に曲がり、夕梨花と沢村の視界からは消えている。

「援護に行くわよ!」

「了解!」

 だが、二人が公園通りの坂を登ろうとした時、大破した二台の自家用ロボが目に飛び込んで来た。さっきの爆発音はこれだろう。そのすぐ近くに、アイアンゴーレムが静かに立っている。

 そのコクピットは開き、中は無人である。

「部長!後藤が逃亡しました!」

 夕梨花の叫びに白谷が、トクボ部員に司令を出した。

「緊急配備だ!絶対に後藤を逃がすなよ!」

 美紀が白谷に言う。

「やられましたね。まさかここからの死角に入られるとは」

 白谷は苦々しげな表情を浮かべていた。

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