第508話 動いた!
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。アカウントは「@dinagiga」です。なお、毎週木曜日に更新していく予定です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「動きはありませんね」
黒髪ショートの女性が、大型モニターで点滅する緑の光点を見つめながら言った。
泉崎夕梨花。ひかりの親友・奈々の7歳上の姉である。警察内部で「トクボ」と呼ばれる、警視庁機動隊特科車両隊所属のロボットチームの一員だ。
元々機動隊は、警察署の警察官では対応できない大規模な事件や災害に対応する警備部隊として発足された。だが、近年増加の一途をたどっているロボットによる犯罪やテロ、そして袴田素粒子による暴走には、これまでの装備では到底対応できない。そこでトクボである。これまでテロ等の鎮圧に使われていた放水警備車等を運用する特科車両隊、通称「特車」内に、ロボットチームが作られたのだ。
「そうだな」
そう言ってうなづいたスーツ姿のガタイの良い男は、トクボ部長の白谷雄三警視長である。彼はいわゆるキャリア組だが、見た目で叩き上げのノンキャリに勘違いされることが多い。スーツやネクタイが少しヨレヨレで、まるで現場の刑事に見えるからだ。四十代後半、柔道、剣道共に5段の有段者である。
トクボの会議室には、他にも数人の警察関係者がいた。
白谷の隣で、じっとモニターを見つめている白衣の女性は田中美紀だ。黒髪ボブ、キレイな直毛である。まだ二十代後半に見える彼女はトクボの技術主任である。
「じれったいですね、動いてくれれば、俺らの出番もあるだろうに」
そう言ったのは、起動ロボット・通称キドロのパイロット、沢村泰三だ。パリッとした暗いグレーのスーツを生真面目な感じに着こなしている。
「まぁ、ゴッドさんのことですから、上手く対処しているのでしょう」
沢村と同じキドロパイロットの門脇進が言う。彼は沢村とは違い、明るめのグレースーツを少し着崩している。ネクタイをほんの少しゆるめ、シャツの第一ボタンを外していた。
「そうだといいのだが」
「彼はやりすぎるきらいがありますからね」
酒井弘行理事官と板東保則捜査主任が、少し不安げにそう漏らした。
トクボ専属ドライバーの三国と森下もいる。
ここまでがトクボの主要メンバーである。今日はその他に、二人の目付きの鋭い男たちがいた。
一人は40歳前後の、ビジネス街へ出ると人混みに紛れて見つからなくなる、そんなありきたりのスーツ姿の男、内閣情報調査室の佐々木だ。
そして公安外事四課の花巻春人の顔も見える。
二人は、国際テロ対策として、今はトクボチームと行動を共にしていた。
その時、画面に表示されている光点が赤に変わり、鋭い発信音が響く。
「動いた!」
そう言って夕梨花が素早く立ち上がった。
光点の変化は、ゴッドこと後藤茂文からの出動要請だからである。
白谷も同時に立ち上がり、大声で指示を出す。
「泉崎、沢村、両名はキドロだ。トランスポーターの運転は三国くんと森下くん、田中くんと私、そして予備パイロットとして門脇は指揮車。佐々木さんと花巻くんも同行して欲しい」
《了解!》
同時にそう叫ぶと、一同は会議室を駆け出していた。
ゴッドからトクボへ出動要請が!
彼の身に、いったい何が起こったのか!?




