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第506話 残された希望

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。アカウントは「@dinagiga」です。なお、毎週木曜日に更新していく予定です。


【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 元惑星調査船サン・ファン・バウティスタ号の副長・山下美咲は、“過去の”宇宙船ハーフムーンの船内にいた。なぜ過去なのかと言うと、美咲にとってその船は、およそ10年前に遭難し行方不明になっているからだ。

 これまで美咲は今自分がいるこの場所は、袴田素粒子であるアイが、美咲自身の脳内でシミュレーションしている世界だと考えてきた。だが、この時間に長くとどまるにつれ、その感覚が次第に変化してきていた。

 アイは素粒子である。袴田教授によると、人間には簡単には知ることの出来ない宇宙の真理に近いところにいる存在であるらしい。そのため量子テレポーテーションなどの、超と呼んでもいいほどに高度な技術を使うことが可能だ。であれば、美咲にとって理解の及ばない量子力学的技術により、彼女の精神を本当の過去に送り込むことができてもおかしくないのではないだろうか?

 美咲には、アイになら可能なような気がしていた。

 だがその場合、美咲の手で過去の出来事を変えてしまったとしたら、いったい何が起こるのだろう?

 脳内シミュレーションであれば、美咲が目覚めればそこで全ては元通りだ。だがもし、本当に過去に飛ばされているとしたら、世界線そのものに変化が現われるかもしれない。美咲が目覚めた時、そこは彼女が生きてきた世界線ではなく、分岐した別のタイムラインになっている可能性があるのではないだろうか?

 そう思うと、この場所での自分の行動が恐ろしくなってくる。

 だが何もせずに、全てを見過ごすわけにはいかなかった。

 彼女の制服には、澄み渡る宇宙空間をイメージした紺色に、副長を表す金の星が三つ並んでいる。そう、美咲は誇り高き宇宙士官なのである。

「まずはこの船のコントロールを取り戻しましょう。そして、彼らの侵略を止める手段を見つけましょう」

「具体的には、どうすればいいと思うかね?」

 館山船長の問いに、美咲は即座に答えた。

「まずは、この船のメインシステムから彼らを排除することです。袴田素粒子は電子機器に侵入し、その情報を書き換える能力が確認されています。彼らがシステムを完全に掌握する前に手を打たないと、手遅れになってしまうかもしれません」

 正明が腕を組んで頷く。

「現在、船の各所に設置されているセンサーやカメラからの情報も、ここには断片的にしか届いていません。おそらく、彼らが重要な情報を遮断しているのでしょう。制御を奪い返すには、まず彼らがどの程度システムに深く侵入しているのかを特定する必要があると思います」

 ドクターが不安げな顔を正明に向ける。

「しかし、素粒子が電子機器に侵入するというのなら、迂闊にネットワークに接続するのも危険なのではないか? 彼らに新たな侵入経路を与えかねんのでは?」

 美咲は、その懸念に同意した。

「その通りです。だからこそ、船全体のシステムを一旦、完全に遮断するしかありません。そして、オフラインの状態で、システムから素粒子を排除するプログラムを走らせる。それから、段階的にシステムを再起動し、監視しながら安全を確保していきます」

「船のシステムを完全に遮断するだと!?」

 船長が目を見開く。それは宇宙を航行中の船にとって極めて危険な行為だった。

「はい。短時間ではありますが、船は航行不能に陥ります。しかし、このままではいつ船が彼らに完全に掌握されるかわかりません。最悪の場合外部への……他の船や地球への攻撃に転用される可能性すらあります。リスクは承知の上で、実行するべきです」

 美咲の言葉を受け、あかりが状況を分析していく。

「船長、ドクター、山下中佐、野沢くん、田中くん、そして私。この情報システム部にいる6人だけが、今、自由な意志を持っています。他のクルーは素粒子の感染によって、敵の意のままに動かされている……」

 その言葉に、船長とドクターの顔に絶望の色がよぎる。

「では、船の各所にあるシステムを遮断するのは不可能ということか…」

 ドクターが絞り出すように言う。

 船内は広大で、システムが複雑に絡み合っている。たった6人で、しかも素粒子に操られたクルーが妨害する中で、それを実行するのはあまりにも無謀だった。

 美咲は、船長に視線を向ける。

「船長、一気に船をシステムダウンさせる方法、ありますよね?」

 彼女はサンファン号の元副長である。宇宙船には必ず組み込まれているであろう非常時に対応するためのプランを知っているのだ。

 美咲に目を向け、ゆっくりと船長がうなづいた。

「その通りだ。だが……」

 一同の目が船長に集中する。

「それにはブリッジへ行かねばならん。あそこからなら、私の命令でシークレットコマンドの起動が可能だ」

 だが素粒子は電子機器だけでなく有機生命体にも感染し、クルーたちの意識を乗っ取っているのだ。ブリッジまでの道のりは容易いものではないだろう。

 途方に暮れる一同に、美咲の楽天的な声が響く。

「まぁ、物理的な方法でやるしかありませんね」

「物理的な方法?」

 正明が不思議そうに首をかしげた。

 そんな彼に、結菜がやはり明るい口調で言う。

「あれよ、こうやってガツン!てやるのよ」

 彼女は右手のこぶしを挙げている。

 船長の苦笑は、ニヤリとした笑顔に変わった。

「実力行使ってわけだ。まぁ、まだまだ若いものには負けない自信はある。なあドクター」

「もちろんですよ」

 ドクターも、右の口角を上げて笑顔になる。

「遠野くん、ここにも非常用ビームガンが装備されているね?」

 船長の問いに、あかりがうなづいた。

「はい。三丁あります」

「山下中佐、私とドクターと三人でブリッジに向かってくれないかね?」

「喜んで」

「システム部の三人は、私達が失敗した場合を考えて、ここで他の手段を探って欲しい」

 あかり、結菜、正明の三人がうなづく。

 今から、たった6人の戦いが始まるのだ。

 彼らが情報システム部の扉を開くと、船内は不気味な静けさに包まれていた。しかし、その静寂は、いつ爆発するかわからない緊張感をはらんでいるのだ。彼らの行く手には、素粒子に操られたクルー、そして未知の脅威が待ち受けているのだから。

いよいよ動き出す“過去”!

はたして美咲の運命は!?

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