表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

495/508

第495話 密会

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。アカウントは「@dinagiga」です。なお、毎週月曜と木曜の週二回更新していく予定です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】


「本当にあなたは変わった方だ。ずいぶんと珍しい場所に私を呼び出したものです」

 ダスク共和国国軍資材調達課課長のドルジが、やれやれと肩をすくめた。

 ここは東京スカイツリーの施設、スカイツリータウンにあるソラマチ商店街の入口前広場だ。そのままの名前のここ「ソラマチひろば」では、夏は涼し気な噴水が上がり、それ以外の季節には休憩スペースとしてテープルと椅子が並んでいる。後藤とドルジは、そんな広場でひとつのテーブルを囲んでいた。

「ここはよぉ、内調の兄ちゃんに教わったのさ。木を隠すなら森の中ってな」

 そんな後藤の言葉にドルジが呆れ顔になる。

「いえいえ、私のようなダスク人とあなたのように大きな方は、全く隠れられていませんよ」

 二人に同席している女性が、フフッと小さく笑った。

「確かにそうですね。インバウンドの観光客のほとんどはアジア人ですから、あなたのような顔立ちの方は珍しい」

「まぁそうなんですが、私はゴッドさんの巨体の方が目立つと思いますけどね」

 そんな会話に、後藤がわざと苦笑して見せる。

「俺ゃあ目立ったりしてねぇぜ。慎ましやかに暮らしてる一般人だからなぁ」

「砂漠で暴れていた一般人なんかいませんよ」

 ドルジの声には、皮肉なのか称賛なのか判別がつかない色が乗っていた。

「それはそうと」

 ドルジが後藤と並んで座っている女性に話を向ける。

「どうしてあなたが、ゴッドさんと?」

 ニヤリとした笑みを浮かべる後藤。

「まぁ成り行きと言うか、彼女の方から頼み込んできたんだぜ、なぁ?」

「頼み込んではいませんが、そんなところでしょう」

 ドルジが目を丸くする。

「驚いた。お二人は敵対しているとばかり思っていましたが」

 後藤の目がギラリと輝いた。

「ああ、今でも敵対してるぜぇ、なぁお姉ちゃんよぉ」

「そうですね。私達は敵同士です」

 ドルジが、わけが分からないとばかりにポカンと口を開いた。

「ところでよぉ」

 後藤がドルジに身を寄せ、声を潜める。

「あんた、どうしてこのお姉ちゃんのこと知ってるんだぁ?」

 ドルジは今更何を聞くのか、という表情を後藤に向けた。

「新宿で後藤さんが私に接触した後ですが、あの日のことは詳細に調べさせてもらいましたので」

「さすがダスクのスパイだな。いや、シャンバラのエージェントだからか?」

「ご想像にお任せします」

 その時、二人と同席している女性、小池葵が立ち上がりスーツの内ポケットから名刺を取り出した。

「もちろんご存知だとは思いますが、ちゃんとご挨拶を」

 名刺には、霧山グループ総帥・霧山宗平の第二秘書の肩書きがある。

「霧山の秘書、小池です」

「あ、すいません。私の国には名刺というものが無いので」

 そう言うとドルジは名刺を受け取ってから、すまなそうに頭を下げた。

「あなたもご存知だとは思いますが、ダスク軍の資材調達課課長、ドルジです」

「そしてシャンバラの?」

 ニヤリとした笑みを葵に向けるドルジ。

「それを言うのは、ちょっとはばかられますので」

 そんな二人のやりとりを面倒臭そうに見ていた後藤が、やれやれとばかりに爆弾発言を投下した。

「今日はよぉ、ぶっちゃけた話をしにきたんだぁ。このお姉ちゃん、霧山の秘書と同時に、黒き殉教者の幹部でもあるんだよなぁ」

 とっさに、すごい勢いで右手を懐に差し込むドルジ。

 一方の葵も、すでにその手をスーツの右ポケットに入れていた。

「おいおい、物騒だなぁ。ここは東京の超有名観光地だぜぇ? こんな場所で野暮はよそうぜぇ。話をしに来たって言ってるじゃねぇか、ドルジさんよぉ」

「ですが、黒き殉教者の、しかも幹部って」

 ドルジの額に、いつの間にかじんわりと汗が浮いている。

 先に右手をポケットから抜いたのは葵だった。そしてゆっくりと金属の椅子に腰を下ろす。

「ほらよぉ、お姉ちゃんは戦う気は無いってよぉ」

 葵の様子に、ドルジも右手を取り出して不安げに腰を下ろした。

「シャンバラと黒き殉教者の関係は、ゴッドさんも知ってるでしょう?」

「ああもちろんだぜぇ。付かず離れずってやつだろぉ? 敵になったり協力したり」

「そんなに簡単なものじゃありませんよ」

 憤慨するドルジの声に、再び後藤の顔が面倒そうになる。

「霧山の手下で黒き殉教者の幹部のお姉ちゃんが、わざわざあんたに会いに来たんだぜぇ。こんなにおもしろいことってないじゃねぇか。ちゃんと話を聞こうぜ?」

「確かに、興味はありますが」

 そんな会話を聞いていた葵が、フッと後藤に視線を向けた。

「ゴッドさん」

「何だぁ? 俺何か間違ったこと言ったかぁ?」

 葵の顔に苦笑が浮かぶ。

「どうして私が、黒き殉教者の幹部だと?」

 今度は後藤の顔に驚きが浮かんだ。

「おいおい、今さら何言ってるんだぁ? あんた、あの時の巫女じゃねぇかよぉ」

 葵の苦笑が笑みに変わり、プッと小さく吹き出した。

「あなたって人は」

「なんだぁ? 俺の言ってること、正解だろぉ?」

 葵とドルジが、顔を見合わせて笑みを深める。

「確かに変わった方ですよね」

「そうなんですよねぇ」

「なんで二人が意気投合してんだよ? 意味分からねぇぜぇ」

 憤慨する後藤を無視して、ドルジが真顔を葵に向けた。

「それで、そんなあなたが危険を犯してまで私に会いに来たのは、どうしてなのです?」

「実は、どうしてもお話を聞きたいことがありまして」

 スカイツリーを吹く風が、ザッと枯れ葉を舞い上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ