第493話 新たな謎
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
地球のどの国の宇宙船でも無いと思われるその形は、見るものを圧倒した。幾何学的直線や円形などが見られないぐにゃりとしたいびつな外形。そこには、太陽電池パネル、アンテナ、アルミの外装、スラスターなど通常の宇宙船や人工衛星にあるものが何ひとつ見当たらない。
「何度見ても、不気味なカタチをしてやがる」
ダンがうなるようにそう言った。
手にしていたオニギリを保存ボックスに放り込むと、守はコンソールに向かってテキパキと操作していく。するとモニタースクリーンに、まるでスペクトル解析のような色鮮やかなグラフが現われた。
「やっぱりあの光、電気推進みたいです」
「通りで、やけにスピードが速いはずだ」
レオも、ダン同様に低い声でつぶやいた。
「野口くん」
愛菜が守に視線を向ける。
「この情報を至急、国連宇宙軍と中央指揮所に伝えて。最新の映像を添えることも忘れないでね」
「了解です!」
守は再び、少し慌てるようにコンソールを操作し始めた。
愛菜が再びスクリーンに目を戻し、不安げに言う。
「これって、あとどのくらいで地球圏に到達するのかしら」
レオが、少し考えてから首をかしげた。
「速度が変化しているから、簡単には予測できないかもな」
「よし」
ダンがコンソールの前に移動する。
「俺に任せろ。予測到達時間を割り出してみる」
「お願い」
プロジェクトルームに、ダンの叩くタップの音が響いていた。
「おばちゃ……違った、お姉ちゃ〜ん!何か食べた〜い!」
放課後の学食に、ひかりの元気な声が響き渡った。
腹ペコの生徒たちが、全員揃って到着したのである。
厨房から、学食チーフの福田幸代がひょっこりと顔を出した。
「どうしてまだ間違えるのよ!お姉ちゃんでしょ!」
ひかりがペロッと舌を出す。
「しまった!学食のおば……ねえちゃん!」
「おばって、お化けみたいじゃない!」
「てへぺろ。おば……お姉ちゃん!まだ何か食べられるかな?!」
幸代が大きなため息をついた。
「カレーライスなら出せると思うわ」
奈々が人数を数える。
「じゃあ、カレーを九人分お願いします」
「両津くんは除く」
「なんでじゃーっ!ボクも食べるで!」
愛理が首をかしげてひかりを見た。
「どうして両津先輩の分を除くんですかぁ?」
ひかりがニンマリと微笑む。
「だっていつも覗いてるから」
「何をですぅ?」
「女子更衣室」
学食に沈黙が広がった。
それを破ったのは奈々だ。
「ちょっとあんた!いつもみたいに、覗いてへんわ!って言いなさいよ!」
頭の後ろに手をやり、ポリポリとかいている両津。
「それじゃ本当に覗いてるみたいじゃないの!」
「いや、それよりちょっと気になることがあるんや!」
「何ごまかしてるのよ?!」
奈々が両津に食ってかかろうとした瞬間、厨房から幸代の大声が響いた。
「食券買ってらっしゃい!」
「はーい!」
ひかりとマリエが、食券の券売機へ向かって駆け出す。
それを視線で見送った奈々が、ふうっとひとつ大きなため息をついた。
「まぁいいわ。で、気になることって何なのよ?」
両津がホッとしたように顔を少し緩める。
「遠野さんの言うことは、火星大王が考えてるってのは分かったんやけど」
「けど?」
「火星大王が近くにいないこともあったやん?」
「どういうこと?」
「ここにいる時は、近くに格納庫があるから、ピピッて伝わるのも分からへんでもないと思う。けど、東京ロボットショーへ行った時とか、火星大王とめっちゃ離れてても遠野さん、ダジャレ言っとったやん?」
一同ハッとする。
確かにそうである。ひかりの言動は、火星大王が近くにあろうが無かろうが変化が無いように思われる。これはどういうことだろうか? いや、それ以前にひかりと火星大王はどんな仕組みでつながっているのだろう?
謎がひとつ解けると、またひとつ謎が現われる。
ロボット部の全員が頭を抱えていた。




