第491話 コンビ名は?
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
その頃、都営第6ロボット教習所の格納庫では、ロボット部の生徒たちが大はしゃぎしていた。いかにして火星大王からダジャレや古い言葉を引き出すか選手権、が繰り広げられているのだ。的確な質問を投げかけた場合、火星大王は、いやひかりの口からは予想もしないダジャレや古い単語、言い回しなどが飛び出してくる。こんなに楽しいことはなかなか無いだろう。生徒たちは我先に、ひかりに質問をぶつけていた。
「長年の観察から得たボクの予想やと、ちょっと難しい言葉を投げたら、それのダジャレが遠野さんの口から出てくる、そう思うんやけどどうやろ?」
そう言った両津に、奈々が珍しく同意した。
「私もそう思う。誰かから意味の分かりにくい言葉が出て、それについて愛理ちゃんが質問すると、ひかりがトンチンカンなダジャレで答える。そんなパターンがあると思う」
「それやそれ!ボクもそう言いたかったんや!」
「じゃあ、その最初の言葉を両津くんが言ってみて」
「よっしゃーっ!」
勢い込んで雄叫びを上げた両津だったが、その後はまた無言になる。
「どうしたのよ?」
「やっぱりこれ、難しいわ」
そこに奈央が笑顔で割り込んで来た。
「ではこれはどうでしょう? 今の状況は奇妙キテレツですわ。そして愛理ちゃん、質問をよろしく」
「えーと、じゃあ……キテレツって何ですかぁ?」
「それはね、愛理ちゃん」
愛理の質問を受け、ひかりが左手の人差し指をぴょこんと立てる。
「キター!」
生徒たち全員の目がひかりに向けられた。
「泉崎さんも、いつもの突っ込みよろしく頼むでぇ!」
両津の言葉に、奈々がうなづいた。
ひかりが両津に視線を向ける。
「な、なんや? ボクに何か言いたいんか?」
「あんたとはもうやってられへんわ!」
相変わらずひかりの関西弁はとんでもイントネーションだ。
「それは決裂!愛理ちゃんが聞いたのはキテレツ!」
「お笑いコンビはもう解消や!」
「それは分裂!」
「遠野さんとボク、いつからコンビやったんや?!」
「えらい言いようやな!そんなキツく言わんでもええやんけ!」
「それは激烈!」
「二人の間には、深〜い溝があるんや!」
「断裂!」
「私は奈々ちゃんと、めっちゃコンビ組みたいわぁ」
「熱烈!」
「お祝いに料理作ってあげるわ、萌え萌えきゅんや!」
「オムレツ!」
「きゃーっ!両津くん、そんなもん出したらアカンて!」
「陳列、罪!」
「出してへんわ!」
そこで一段落だ。ニンマリと満足そうに笑顔を浮かべるひかり。逆に、はぁはぁと息切れしている奈々。
「これ、私の方が大変じゃない!」
そんな奈々を両津がなだめた。
「まぁそう言わんと、二人はコンビになったんやから」
「なってない!」
不満の声をもらすひかり。
「ええ〜?! 組もうよ、奈々ちゃん」
「組まないってば!」
「私もう両津くんには運が尽きたんだもん」
「それを言うなら愛想が尽きたでしょ!」
「がちょーん!」
一同からおお〜、と言う声が漏れ、大きな拍手が巻き起こった。
「こりゃ、決まりやな。ええコンビ名考えんとあかんな」
両津のその言葉に、奈央が首をかしげる。
「コンビでいいのでしょうか?」
「どういうことですかぁ?」
愛理も首をかしげた。
「火星大王さんもいっしょだと考えると、トリオではないでしょうか?」
そう言った奈央に、ひかりが満面の笑顔を向ける。
「トリオだ!トリオだ!漫画トリオだ!」
全員が一斉に両津に視線を向けた。
聞き馴染みのない言葉「漫画トリオ」の解説を求める目である。
「えらい古いところに来たなぁ、めっちゃ昔のお笑いトリオの名前や。ボクもHeTubeでしか見たことあらへんわ」
「お笑い担当は両津くんでしょ? 解説よろしく」
奈々の突き放すような言葉に、両津は何かを思い出すように中空を見つめながら説明する。
「えーと、横山ノック、フック、パンチの三人で、パンチはたしか後の上岡龍太郎さんやったと思う」
「パンパカパーン!今週のハイライト!」
「遠野さん、さすがに古すぎてボクにもよく分からへんで」
「じゃあね……てんぷくトリオ!」
「同じぐらい古いわ!」
再び皆の目が両津に向けられる。
「古すぎてさすがのボクにもよく分からへんって!多分……三波伸介さん、戸塚睦夫さん、伊東四朗さんのトリオやったと思うわ」
「さすがの猿飛!」
それには奈央が反応した。
「それは80年代の漫画、そしてTVアニメですわ」
さすがのオタク、である。
その時、成り行きを見つめていた正雄がニヤリと笑いながら言った。
「てんぷくトリオをもじって、まんぷくトリオなんてどうだい?」
キョトンとするひかり。
「私、満腹じゃないよ。お腹ペコペコだよ?」
ひかりの言葉に、一同ハッとする。
皆同様に腹ペコなのである。
奈々が肩をすくめて皆を見渡した。
「じゃあ、学食に行きましょうか?」
賛成〜!
全員の声がキレイに揃った。




