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第490話 脱出

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「しかし、よくこんなアイデアを思いつきましたね」

 監禁室で、呆れ顔のドクターがそう言った。

 真っ白いテーブルに、玉子の黄色とケチャップの赤が鮮やかなハーモニーを見せているオムライスたちが、ズラリといくつも並べられている。そのどれもから、実に美味そうな香りが立ち昇っていた。

「恐らく、田中くんだろう。彼の発想はいつもユニーク、と言うか少し変わっているからね」

 船長は、感心しているのか苦笑しているのか、一見しただけでは判別できないような表情だ。多分、その両方なのだろう。

「でも、通信機器の無いこの部屋にメッセージを送るなんて、お見事と言ってもいいかもしれませんよ」

 そう言いながらドクターが、テーブルのオムライスを完成した順に並べ替えていく。

 それを船長が読み上げる。

「情報システム部からメッセージです」

「マスターキーを手に入れました」

「その部屋のキーを開けます」

「約10分後です」

「見張りはいません」

「情報システム部で待ってます」

「♡(はーと)」

 ドクターが思わずプッと吹き出した。

「なんだかポケベルを思い出しますね」

「ドクター、君も懐かしいことを言うじゃないか。ポケベルを使っていたのは、そうだね、もう30年以上も昔じゃないかね?」

「そんなになりますか」

「なるねぇ」

 懐かしさのあまり、思わずため息を漏らしてしまう二人。

「最初は数字しか送れなくて、色々と暗号みたいなものを考えましたよねぇ」

「やったねぇ。428は、分かるかね?」

「渋谷です」

「296は?」

「えーと……池袋、でしたっけ?」

「0840はどうだ?」

「オハヨウですね」

 笑顔になる二人。監禁されてから約半年、こんなことは久しぶりである。

「その後、カタカナが表示できるようになって」

「漢字も出るようになった」

「その頃からですかね、あまり使わなくなったのは」

「そうだな。数字やカタカナだけと言う限られた状況が楽しかったのかもしれん」

 そんな会話をしつつ、ケチャップ文字が踊る黄色い物体たちを眺めていた船長が、うーんとひとつうなった。

「こんなに食えないぞ」

 確かに、二人で七皿のオムライスを平らげるのは容易ではないだろう。

「食品ロスですね。後で叱っておきますか」

 そう言ってドクターが肩をすくめた。

 船長がフードプロセッサーの横から、スプーンを2本取り出す。

「10分あれば、それぞれひと皿は食べられるだろう」

「そうですね」

 二人はテーブルにつき、胸の前で手を合わせる。

「いただきます」

 そう言うと、少し急ぐようにオムライスを食べ始めた。


「そろそろ10分ですね」

 正明が腕時計に目をやり、美咲にそう言った。

「じゃあ、決行しましょう。いいですね?」

 美咲の問いに、あかりが大きくうなづいた。

「お願いします」

「コンピューター、以下のコマンドを実行してください」

 数字の羅列といくつかの単語。英語、ドイツ語、フランス語、そして日本語。

「コンパートメントF20の53、ロックを解除」

 情報システム部の研究室が沈黙に包まれる。

 不安げな声を漏らす結菜。

「船長たちの部屋の鍵、開いたでしょうか?」

「恐らく」

 後は船長とドクター次第である。

 あの部屋の外に見張りがいないことは確認済みだ。だが、誰にも見つからずにここまでたどり着くことは可能だろうか? 監禁室はローワーデッキの船尾付近にある。一方のここ情報システム部は、同じデッキではあるが船首に近い。少し距離があるのだ。

 だが、あかりたちに出来ることは待つことだけである。

 二人の無事を祈って。

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