第489話 質問は難しい!
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「マリエちゃん、準備はいい?」
奈々がマリエに視線を向ける。
「オッケー」
うなづきサムズアップするマリエを見て、奈々は両津に勢いよく言った。
「じゃあ両津くん、ひかりに質問よろしく!」
「よっしゃ!」
そして……格納庫が沈黙に支配される。
「両津くん?」
困り顔で頭をかく両津。
「いや、そう言われてもやな、何を聞けばええんや?」
再び格納庫に沈黙が広がった。
首をひねりながら、両津がひかりに目をやる。
「いつも会話のノリで遠野さんがボケ始めるやん? そやから、何を聞いたら古いこととか言うんかよく分からへんで」
両津の言う通りである。
いつもひかりのダジャレやボケが炸裂するのはたまたまであり、あくまでも偶然の産物なのだ。これを聞けばこう返ってくる、などという決まりがあるわけではない。
さぁどうする?
奈央も困り顔でひかりに目をやった。
「そうですわね、とりあえず普通に雑談でもするのはいかがでしょう? そうすればその内に、遠野さんからボケが飛び出してくるのではありませんか?」
「よし、そうしよ!えーと……今日はええ天気でんなぁ」
全員がサッとひかりを見る。
「ここ格納庫だからお天気が分からないよ?」
全員から大きなため息が漏れた。
「ほんならやな……遠野さん、最近どう?」
「何が?」
「いや、何がって言われてもやなぁ」
再び一同のため息が格納庫に響く。
奈々が苦笑を両津に向けた。
「あんた質問下手すぎ」
「じゃあ泉崎さん、自分でやってみぃ! 結構難しいで!」
分かったとばかりに、奈々がひかりに向き直る。
「ひかり、好きなテレビ番組はなぁに?」
これだ!
一同はそう思っていた。テレビ番組なら、昔の古い番組名が出やすいのではないだろうか? うーんという仕草で首をかしげるひかり。
「私最近あんまりテレビ見ないんだよなぁ。ラジオばっかり聞いてるかも」
一瞬たじろぐものの、すぐに質問で切り返す奈々。
「じゃあラジオでいいわ、番組名は覚えてる?」
「えーと、ラジオ早朝便!ポエムたくさん送ったけど、全部ボツになっちゃったよ」
頭に手をやり、てへへと笑うひかり。
ラジオ早朝便は今でもなお放送されている長寿番組だ。これではひかりの答えが古いかどうかの判断がつかない。
「ほら!質問、難しいやろ?!」
「確かにそうね」
奈々は苦笑を奈央に向けた。
「え? わたくし、ですか?」
「奈央も質問してみて」
「そうですわね……では遠野さん、大好きな食べ物は何ですの?」
食べ物と聞いて、ひかりの顔がパッと明るくなる。
「最近一番好きなのは、学食の日替わりA定食!ハンバーグ、エビフライ、サイコロステーキ!どのおかずも最高だよ!」
これも違った……一同のため息が益々大きくなる。
その時、いつもひかりへのツッコミ役を果たしている奈々が、ハッとして愛理を見た。
「そう言えば、愛理ちゃんが質問したら、ひかりっていつもボケるんじゃない?」
その場の全員も愛理を見る。
「確かにそれが多いかもしれへんな!」
一同の視線が、じっと愛理に集中した。
「そんなに見つめられたら、なんだか恥ずかしいですぅ」
ぽっと赤くなる愛理。
「何赤くなっとんねん!はよなんか質問してぇな!」
「そんなこと言われても困るですぅ」
「なんでもええねん!多分、伊南村さんがキーになっとるんや!」
「キーに?」
「そや、キーに!」
その時、ひかりがぱっと顔を上げて叫んだ。
「気になってるんや!」
奈々がすかさず突っ込む。
「そうじゃなくて、両津くんが言ったのはキーになってる!」
「遠野先輩が気になってるのは誰ですかぁ?」
「それは決まってるよ!奈々ちゃんだよ!」
「どうしてですかぁ?」
「好きだから!」
「私もですぅ!」
ひかりと愛理が、並んで奈々に顔を向けた。目が真剣だ。
今度は奈々の頬が赤くなる。
「二人して何言ってるのよ!は、恥ずかしいじゃない……」
ひかりが右手を頭の後ろに当て、満面の笑顔で笑う。
「あらお呼びでない!こりゃまた失礼しましたっ!」
両津が飛び上がって叫んだ。
「出たーっ!これやこれ!」
他の一同が首をかしげる。
「だから今のセリフ、めっちゃ古いギャグなんや!植木等の!」
そう言うと両津はマリエをパっと見る。
するとマリエはひかりと全く同じ仕草をして、右手を頭の後ろに当てていた。
「こりゃまた失礼しました」
「マリエちゃん?!」
奈々の問いに、マリエはニッコリと笑って答える。
「うん。今火星大王さんがそう言った」
その場の全員が歓声を上げた。
「検証成功や!遠野さんの古い言葉、やっぱり火星大王が考えてたんや!」
ひかりが両津を厳しい目で睨む。
「火星大王、さ!ん!」
「あ、ごめん。火星大王さん、やったわ」
両津がペコリと頭を下げた。だが、そんなことにはお構いなしに、生徒たち全員が盛り上がっている。なにしろ、長年の謎が解けたのである。
奈々がひかりを優しげな目で見つめた。
「ひかり、あなた火星大王さんと一心同体なのね」
「一心同体、少女隊〜♪」
ひかりが軽くステップを踏みながら歌い出した。
「マリエちゃん?!」
マリエはサムズアップだ。
「火星大王さんも歌ってる」
これでもう間違いないだろう。
ひかりの謎の行動や言葉は、全て火星大王に原因があったのである。




