第474話 死語の世界
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「でも、いつも思うけど、遠野さんて古い言葉よく知ってるわよね」
「ボクもそう思ってた。知ってると言うより、よく使ってるし」
心音と大和が、並んでそう言った。二人共うんうんとうなづいている。
その言葉に両津が勢いよくいつものセリフをぶちかます。
「お父さんが考古学者やからな!」
なぜか得意げである。
そんな彼に、奈々が皮肉げな視線を向けた。
「あんた、それよく言ってるけど、本気なの?」
「本気に決まっとるやん!考古学者ってのは、古いことめっちゃ知っとるもんやで!」
「それ、もっと昔のことじゃないの? 遺跡とか古墳とか」
そう言った奈々に、ひかりがパッと顔を向ける。
「イセキトラクター!」
「古墳の方は?」
「こっふんだ!」
「それ、ダッフンダじゃない?」
その会話を冷静に見つめていた奈央が首をかしげた。
「遠野さんの言葉って、古いだけじゃありませんわよね。何と言うか、オジサンぽいと言うかダジャレになってると言うか」
「やっぱりお父さんの影響なんやで!」
その場の全員が、うーんと考え込んでしまう。
そんな皆の顔を見渡しながら、奈央が言った。
「わたくし、ずっと前から遠野さんが言う古い言葉について考えていたのです」
「宇奈月さん、遠野さんのこと観察しとったん?」
「いえ、観察と言いますか、遠野さんがいつも面白い言葉を使うので覚えていると言いますか」
「えっと、どんなんがあったっけ?」
「そうですわね」
奈央は少し考えると、ひかり自身ですら覚えていない彼女の言葉を羅列し始めた。
「テレビのチャンネルを回す、ギャフン、ガーン、バタンキュー、ザギンでシースー、チャック、ビデオを巻き戻す……」
その時南郷が慌てたような声を上げた。
「ちょっと待ってくれ!巻き戻すって言わへんのか?!」
「はい。わたくしたちは言わないですわね」
「じゃあ何て言うねん?!」
生徒たち全員の声が揃う。
「早戻し!」
「あ……」
南郷が目の前にあったリモコンに目をやり、その表記をじっと見る。そして呆気にとられたように口をポカンと開けた。
「早送りやから、逆は早戻しかぁ」
「それに」
と、奈央が付け加える。
「今はビデオじゃなくてレコーダーですわ」
「ガーン!」
ひかりが思わずそう叫んだ。
陸奥が苦笑を南郷に向ける。
「南郷さん、もう彼らの時代なんですよ。俺らはすでに時代遅れってことです」
久慈も肩をすくめて南郷に言った。
「そうかもしれませんね。私もたまに、生徒たちの言ってることが分からない時があります」
「世代間ギャップ、てヤツかもしれまへんなぁ」
「そう言えば……」
その時愛理が、小首を可愛くかしげながら皆を見回した。
「あのぉ、これって古い言葉とかと同じかどうか分かんないんですけどぉ」
奈々が優しく言う。
「なぁに? 言ってごらん」
「えーと、スマホで電話する時にタップするアイコン、これって何のマークなんでしょう?」
一同自分のスマホを取り出し、その画面を見つめた。
両津が目を丸くする。
「ホンマや!なーんも考えんと使ってたけど、これ何の絵や?!」
生徒たち全員が首をかしげた。
「サッパリ分からないぜベイビー」
今度は教官ズの三人が驚愕に目を見開く。
「それ、本気で言っとるんか?!」
「受話器だぞ!受話器!」
「電話を取るやつよ!」
するとひかりがまた叫ぶ。
「ジュワッキ!」
「それはシュワッチですわ!」
特撮関係の突っ込みは奈央の仕事である。
「それと……」
再び愛理が疑問を投げかける。
「タブレットとかPCでファイルを保存する時のアイコンも、何の絵なのか分からないのですぅ」
再び教官ズの三人が驚愕に目を見開いた。
「フロッピーディスクや!フロッピー!」
「8インチ!5インチ!3.5インチだぞ?!」
「ハードディスクの前はフロッピーしか無かったのよ!」
ひかりがまた叫ぶ。
「ボカロP!」
そして奈々が突っ込む。
「フロッピーよ!で、フロッピーって何?」
職員室が沈黙に包まれた。
「あの」
そんな中、マリエがポツリと言う。
「それで、山下先生はどうして座ったまま寝てるの?」
全員の目が美咲に向けられた。
美咲はまだ、アイの元から戻っていない。
さて、どう説明したものか……。
教官ズの三人が、困ったように顔を見合わせた。




