第473話 バラが咲いた
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
久慈が、真剣な目を両津に向ける。
「それ、誰から聞いたのかしら?」
両津が後ろを振り返り、ひかりとマリエを見た。
二人は、何やら楽しそうにはしゃいでいる。
「マリエちゃん、今日の夕ご飯のおかず、何だと思う?」
「うーん、何だろう?」
「ご飯だけに、幸田?」
「露伴!」
「そんなことは、とんだ?」
「茶番!」
「なんまんだぶ〜」
「涅槃!」
「逮捕だ!」
「ルパン!」
そして二人でクスクスと笑った。
「マリエちゃんも上手になってきたね」
「うん、嬉しい」
そんな二人に両津が突っ込む。
「遠野さん!マリエちゃん!そんなことやってんと、ちゃんと教官ズに説明してぇな!」
「説明してぇな?」
「説明したいな?」
「じゃあ両津くんが説明すればいいのに」
「そういうことやないねん!遠野さんとマリエちゃんが聞いた声のことや!」
ああと、ひかりとマリエが顔を上げる。
「ダイナギガさんから直接聞いたんだよ」
「うん、聞いた」
陸奥、久慈、南郷の三教官が顔を見合わせて苦笑した。
「こいつらに隠し事はでけへんなぁ、機械とかロボットから聞いてまうんやもんなぁ」
「まぁ、だからこそ、ここにいるんですけどね」
生徒たちが首をかしげる。
「なんちゅーか、君らは特別ってことや」
いっそう首をかしげる生徒たち。
両津が、再び教官に向き直り南郷に言う。
「ほんなら、やっぱりダイナギガって名前の巨大ロボットなんでっか?」
南郷はニヤリと笑い、大きくうなづいた。
「知ってるもんはしゃーない、もう言ってもええでっしゃろ?」
南郷が陸奥と久慈に視線を向ける。
肩をすくめる両教官。
「両津くんの言う通りや。君らが今シミュレーターで操縦訓練しとるんは、超機動巨大ロボット・ダイナギガや!」
ピカーン!と音がしたのかと勘違いしてしまうような笑顔で、南郷がポーズを取った。まるでやり投げの選手が助走中に静止したかのようだ。
「超機動って、めっちゃ動くってことでっか?」
両津の質問に、南郷が陸奥と久慈に視線を向ける。
肩をすくめる二人。どうやらその名の由来は、彼らも知らないようだ。
「それはともかく、ダイナギガ技術の集大成として作られとる最中の巨大ロボットや」
その言葉を聞いた奈々がいぶかしげに聞く。
「作られてる最中って、まだ完成はしていないってことですか?」
思い切りあわてて、両手で口をふさぐ南郷。
それを見て苦笑する陸奥と久慈。
「南郷さん、まだ未完成なのも機密事項ですよ」
「所長に、誰にも言うなって言われたじゃないですか」
二人共呆れ顔だ。
「すんまへん!でも、こいつらにはもうええんちゃいます? 完成したらすぐに実際に乗って訓練せなあきまへんし?」
ロボット大好き正雄が目をキラキラさせて南郷に詰め寄った。
「完成はいつなんだい? ベイビー!」
「ベイビーって……たぶん、結構すぐやと思うで。ねぇ、陸奥さん?」
「だから機密事項だって言ってるのに」
陸奥は呆れ顔からすでに吹き出しそうな笑顔に変わっている。久慈も同様だ。
陸奥が、仕方がないとばかりに顔を上げ、生徒たちを見渡した。
「まぁそういうことなので、早くシミュレーターで上手く連携が取れるように頑張ってくれ。みんな、まだまだバラバラだからな」
「バラが咲いた〜、バラが咲いた〜、真っ赤なバラがぁ〜♪」
突然歌い出すひかりに、奈々がツッコミを入れる。
「そのバラじゃないわよ!」
「マイ・ベイビー・ベイビー・バラバラ〜♪」
それには南郷が反応した。
「お!ザ・スパイダースやんか!よーそんな古い歌知っとるな!」
その言葉に久慈も反応する。
「南郷さん、いったい歳いくつなんですか? それ、私も知りませんよ?」
「オレもだ」
陸奥も首をかしげている。
「オレもだぜベイビー」
「マイ・ベイビー・ベイビー・バラバラ〜♪」
正雄のベイビーにつられて、ひかりが再び歌い出す。
すると奈央が、すっと三教官に顔を向けた。
「あら、この名曲をご存知ないんですの?」
「グループサウンズ時代のザ・スパイダースの名曲やで!」
だが、南郷のその言葉に奈央は首を横に振った。
「確かにそうですが、ザ・スパイダースさんのは日本でのカバーです。原曲は西ドイツのビートバンド、レインボウズさんの世界的大ヒット曲ですわ。ちなみに、遠野さんがその前に歌ったのは、マイク眞木さんのフォークソング「バラが咲いた」です」
やっぱり奈央は「ハカセ」だ。
その場の全員がそう感じていた。




