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第471話 家族

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「ひかりは……元気でやっていますか?」

 あかりの問いかけに、美咲が優しい笑顔になる。

「はい。皆さん、とってもお元気です」

「心音、高校生……なんですよね?」

 結菜がうれしそうな、それでいて少し不思議そうな表情を見せた。

「ええ。高校二年生です」

「ついこの前、小学校の入学式だったのに、あっという間だなぁ」

 そんな結菜の言葉に、皆笑顔になる。

「あのぉ、うちの美紀は?」

「もちろんお元気ですよ。それに彼女、理科系に進んでロボット技術者になったのは、お兄さんに憧れたから、なんておっしゃっていました」

「へぇ、あいつがそんなことを」

 正明の顔が少し赤くなった。

「あいつまだぬか漬け、漬けてるかなぁ」

「そう言えば遠野さんがあなたのこと、ぬか漬けのお兄さんて言ってました。小さい頃にお母さんの職場を訪ねた時に、妹さんが漬けたぬか漬けしかおかずが入ってないお弁当を食べていたとか」

「うわ〜、ひかりちゃん、そんなこと覚えてるんだ。ちょっと照れるなぁ、美紀のぬか漬け、美味いんだよなぁ」

 正明の顔が、さっきとは違う意味で赤くなった。

 結菜がニヤリと笑う。

「あんたの漬物好きって、妹さんがぬか漬け漬けてたからなんだ」

「いいだろ!」

「シスコン」

「違うって!美紀のぬか漬け、マジで美味いんだって!」

「そういうことにしといてあげる」

「だから違うんだって!」

「まぁいいじゃない、私そういうの嫌いじゃないし」

 楽しげな会話の中、美咲があかりに視線を向ける。

「あと私が知っているのは、ひかりさんのお兄さん、拓也さんは研究者になって活躍されています。袴田素粒子を発見された袴田教授の研究室で、助手として防衛プロジェクトの要となる素粒子の研究をされています」

「拓也も元気なんですね」

「はい。それに、ご主人の遠野教授も、ご自身が主宰する考古学研究室で、袴田素粒子に関わる古代からの痕跡について研究されています」

 あかりの顔に、深い安心の色が浮かんだ。

 家族はみんな元気なのだ。

 しかも、それぞれが立派に活躍しているという。

 安堵とともに、誇らしい気持ちが心に広がった。

「それと、館山船長の息子さん、大和くんも元気です。心音ちゃんと仲良しで、いつも一緒に行動しています」

 美咲の笑顔に、結菜が苦笑しながら肩をすくめる。

「あの二人、とっても小さな頃から仲良しなんですよ。お互いの親から、婚約しておきましょう、なんて言われるぐらいに」

「やっぱりそうなんですね」

「まぁ、結婚してくれたら可愛い妹ができて、私も嬉しいですけど。大和はなぁ、一生尻に敷かれそう」

 カフェテリアが笑顔に包まれる。

 そんな中、あかりがスッと真顔になり、美咲を見つめた。

「山下副長」

「はい」

「これは……聞いてもいいことかどうか、ちょっと難しいんですけど」

 美咲は、ついに来たかと身構える。

 その雰囲気を察したのか、結菜と正明も姿勢を正した。

「この船、ハーフムーンはこの後どうなるのでしょう?」

 この質問こそ、彼らにとって、そして美咲にとっても最も重要なものだ。

 今彼らは、行動を起こす準備をしている。

 素粒子たちに囚われている船長とドクターの救出、そして船の奪還を目指しているのだ。

 その結果を、美咲の記憶にある歴史的事実を知ってしまったら、いったいどうなるのだろう?

 まさにタイムパラドックスである。

 未来を知った過去人がその行動を変えてしまった場合、未来はやはり変わるのだろうか?

 だが、美咲が伝える未来は、美咲にとってはすでに終わった過去の歴史である。

 この矛盾がどうなるのか?

 美咲には想像すらできなかった。やはりここはアイが美咲の脳内に展開しているシミュレーションであり、何か行動を変えたとしても歴史に変化は起こらないのだろうか?

 美咲が次に目覚めた時には、ここでの行動はゆうべ見た夢のように、すっかり消えてしまうのだろうか?

 美咲はひとつの決断を下した。

 知っている事実を、彼らに話すべきだと。

 美咲は大きく息を吐くと、顔を上げて三人を見つめた。

「私が知っている歴史では、このハーフムーンは……」

 三人の顔に緊張が走る。

「行方不明になっています」

 あかりは、なぜかホッとしたようにひとつ息をつくと結菜と正明に顔を向けた。

「ほら、私が言った通りでしょ?」

 美咲が首をかしげる。

「どういうことですか?」

「今考えている私たちの作戦だと、上手くいくとは思えない、そう二人に話していたんですよ」

「やっぱりそうなるかぁ」

「私たち、作戦とか向いてないですからねぇ」

 正明と結菜も苦笑した。

「でも、今は違います」

 そう言うとあかりは美咲に顔を向ける。

「これからの歴史をご存知の山下副長がいらっしゃる。しかも宇宙船の副長をされていると言うことは、軍事作戦にも明るいと推測します」

 そう言ってニッコリと笑うあかり。

 結菜と正明も笑顔になった。

「そうですよ副長!一緒にいい作戦を考えてください!」

「ボクらで世界線を変えてやろうじゃないですか!」

 そうだ。美咲にとって過去でも、彼らにとってはこれから起きる未来なのだ。

 やれることは全てやってみよう。

 美咲はそう決意していた。

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