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第470話 教習所の秘密

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 美咲の生きている時代では、すでに袴田素粒子が地球外からの侵略者であると発表されている。当時、アメリカのトンプソン大統領の会見は世界を震撼させた。

「地球は今、外宇宙からの侵略を受けています」

 ここ数年で爆発的に増えているロボット暴走事故の一部は、侵略者によるテロである。

 そしてその侵略者は、ロボットや機械の暴走原因と言われている素粒子だ。

 その名は袴田素粒子。

 その素粒子は、信じられないことに、自我を持つ知的生命体なのだと。

 そして日本でも、山崎和夫内閣総理大臣により、総理官邸での記者会見でその事実が真実であることが発表された。

 そこで正明が驚きの声を上げる。

「山崎って、あの頼りない政治家が総理になったんですか?!」

 結菜が正明のおでこを人差し指でトンと小突いた。

「驚くの、そこじゃないでしょ!」

「だって、あの山崎さんだぜ?!」

 美咲は苦笑して、話を続ける。

「トンプソン大統領、そして各国の首脳からは、袴田素粒子に対する防衛方法についても説明がありました。恐らく国民の混乱を可能な限り抑えたかったのでしょう」

 世界各国の協力で、すでに国連下に極秘裏に防衛組織が存在し、活発に活動していること。その最も効果的なものが、HSNと呼ばれる対袴田素粒子防御シールドSatellite Networkだ。衛星携帯電話用に張り巡らされた人工衛星ネットワークを利用して、地球全体を覆う防御シールドがすでに稼働している。これにより、地球圏への袴田素粒子の侵入を約98%近く防げている。それにプラスして、各ロボットに装備する個別の防御シールドもすでに開発され、世界各国でその運用が始まっている。

「シールド?! 感染を防ぐ技術が完成しているんですか?!」

「そう!驚くのはそういうところよ!」

 あかりが美咲に視線を向ける。

「それで、10年後に侵略はどの程度まで進んでいるんですか?」

 美咲は、三人を安心させるためもあり、ほんの少し笑顔を見せた。

「衛星やシールドのおかげもあって、散発的にロボットの暴走事案が発生しているだけです。直接的な攻撃などは、今の所ありません」

 美咲の中に、地球に接近しているハーフムーンに似た影のことが浮かんだが、それについて話すのはまだ早いと感じていた。

 美咲の言葉にホッと胸をなでおろす三人。

「現在、国連総会で全会一致で決定した、地球規模の緊急事態宣言が発令されています。そして、全地球規模での防衛体制を構築中なんです」

「なるほど。ひとまずは落ち着いているということですね?」

 あかりの問いに、美咲は小さくうなづいた。

「良かった」

 そう言ったあかりの隣で、正明が急に小声になる。

「それで……競馬の結果は覚えてないんですか?」

「まだそんなこと言ってんの?!」

 再び結菜が、正明のおでこを軽く小突いた。

 カフェテリアの雰囲気が少し和らぐ。

 だが、美咲の目は笑ってはいなかった。

「実は私、皆さんのご家族とお会いしているんです」

 三人の表情が驚愕に変わる。

「その話の前に、未来の私がいったい何をしているのかをお話します」

 日本では、袴田素粒子の侵略に対する防衛部隊を、自衛隊と機動隊内に新設すべく法整備が進められている。そして既存の防衛部隊以外の侵略に対抗する組織が、各国ですでに動き始めている。日本でその中枢となっているのが、東京湾の埋立地に作られた全寮制のロボット免許教習所「都営第6ロボット教習所」だ。美咲はそこで、教師として働いている。

「ちょっと待ってください。防衛組織の中枢が教習所にあるんですか?」

 正明の疑問はもっともだ。結菜とあかりも首をかしげている。

「政府から発表があるまで、表立った活動ができなかったんです。それに、素粒子側に場所を知られてしまう危険性も考慮して、カモフラージュの目的もあるんです」

 なるほどと、三人がうなづく。

「そして最も重要な理由が……」

 美咲はそこで、一度言葉を切った。

 ゆっくりと三人の顔を見回す。

「暴走ロボットに対抗するためには、優秀なロボットパイロットが必要です。彼らを選抜するために、教習所のカタチが必要だったんです」

 あかりがいぶかしげな顔を美咲に向けた。

「選抜、ですか?」

「はい。全国の中学、高校、大学などの教育機関、そして国立の基幹病院などの協力で、極秘裏にパイロットの候補者が選び出され、都営第6ロボット教習所に集められました。そして彼らはそこで、袴田素粒子の侵略に対応するための訓練を受けています。そして理由はまだ判明していませんが、なぜかそのメンバーたちはほぼ同年代の男女なんです」

 あかりが驚愕に目を見開いて小さく言う。

「高校生?」

「はい」

「じゃあ、その中に……ひかりが?」

「おっしゃる通りです。それに、野沢さんの妹さん、心音さんも」

 結菜の目にも驚きが広がった。

 美咲が正明に視線を向ける。

「それに、学内では無いのですが、田中さんの妹さんともお会いしています」

「え? 美紀と?!」

「はい。彼女は警視庁機動隊のロボット部隊、トクボチームの技術主任をされています」

 カフェテリアが、驚愕の沈黙に包まれる。

「実はもう一人、館山船長の息子さん、大和くんも教習所の生徒です」

 どんな偶然が重なれば、そんなことが起こるのだろうか?

 いや、偶然などではないだろう。

 恐らく、何かの力が働いているに違いない。

 美咲には、カフェテリアのボサノバが、今までよりちょっと大きくなったような気がしていた。

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