第464話 進化論
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「ここで再確認しておきたいのは、感染と共鳴とは違う、ということです」
陽子と袴田が視線を交わして小さくうなづく。
陽子の指示で、研修医の三田大輔が手元のパッドを操作する。その瞬間、会議室の巨大なスクリーンに様々なデータが表示された。
「こちらのデータのように、ここの生徒たちに素粒子感染は認められません。もちろん、臨床データもそれを証明しています。ですが……」
大輔の次の操作で、別のデータ一覧が表示される。
「これが、彼らの素粒子共鳴値の変化です」
そこにはロボット部全員の共鳴値が、グラフ化されて並んでいた。
「ひと目でわかるように彼らの数値は、一般の非感染者の数百倍以上、しかも感染者と比べても非常に高いです」
その話を、袴田がリレーするように引き継ぐ。
「そしてここでもうひとつ確認しておきたいことがあります」
袴田の目配せを受け、彼の助手でありひかりの兄・遠野拓也がパッドを操作した。
生徒たちのデータの横に現われたのは、何かの分類表のようだ。
「これまでに我々は、袴田素粒子について様々なアプローチでの分析を試みてきました。まず取り掛かったのは、ずっとX型だと思われていたその形状に、他のものが存在しないのかどうか」
袴田が陽子に視線を向ける。
「この分析は、牧村先生の提案により始まりました。その結果、現在の所これらの五種が発見されています」
画面では、X型、Y型、Z型、O型、W型の五つが点滅している。
「ただし、一般的なXや活動が確認されているYと違い、Z、O、Wはまだ発見できただけ、という段階にとどまっています」
再び拓也が手元のパッドを操作する。
「ここからのお話は、皆さんには初お披露目となります」
スクリーンに現われたのは、誰もが生物の教科書や動物図鑑などで一度は目にしたことがあるだろう進化論を現わすイラストだった。
猿人、原人、旧人、新人、現代人が、まるで歩くように進化していく例の図版である。
「ダーウィンでっか?」
南郷がその画面を見ながら不思議そうに言った。
袴田が苦笑する。
「まぁ、進化論については様々な疑問があることも確かですが、とりあえず生命の発達の基本として、これをベースに話を聞いてください」
袴田の言う通り、現在では進化論にも謎が存在している。
進化論では、ある生物種は別の生物種から進化することにより誕生する。つまりこれをずっと過去に遡っていくと、最初の生物にたどり着くことになる。では、その生物はいったいどのようにして誕生したのか? つまり生命の起源については説明が不可能なのである。
「袴田素粒子も、この図版にあるように人類同様の進化をたどったのではないか? 我々はそんな仮説のもと、遺伝子レベルでの袴田素粒子の分析を進めました」
全ては袴田顕微鏡の恩恵である。
実際には光学的に人間が知覚できるような大きさではない素粒子を、ヒトが理解できる姿に変換して表示できるその力のたまものであった。
「そして発見したのです。素粒子にも、進化の過程があったことを」
その言葉に、会議室にどよめきが広がった。




