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第46話 中学二年生

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

『おにいちゃん、奈々ちゃんに聞いてやっと、みんなのロボットさんの名前が分かりました!ここからズラズラ〜っと書いておきたいと思いますので以後お見知りおきを!

 私のロボットさんは、とっても可愛い火星大王さん!

 奈々ちゃんのロボットさんは、眉毛が三角なのでデビルスマイル!

 奈央ちゃんのロボットさんは、ケチンボさんなのでコスパ!

 愛理ちゃんのロボットさんは、彼女が大好きなラブリーなな!

 両津くんのロボットさんは、競馬のお馬さんからもらった名前でなにわエース!

 棚倉くんのロボットさんは、マイトガイのジョニーが乗るからコバヤシマル!

 そしてマリエちゃんのロボットさんは……オランダ語でなんちゃらかんちゃら!

この名前は奈々ちゃんから聞いても聞き取れませんでした〜、あしからず』


 手紙に目を落としていた小野寺舞は吹き出してしまった。

「何これ、すっごく面白い!」

「だろ?ひかりは言葉選びのセンスがすごいんだ。僕らにはない感性を持ってる」

 ひかりの兄・拓也は、少し感心しているように言った。

「でも、妹さんからの手紙、私なんかが読ませてもらっていいのかな?」

 少し心配げな舞に、拓也は笑顔になる。

「大丈夫。別に変なことは書いてないし。それに、ひかりの文章を読んでると、なんだか心が癒やされるんだ。オノマイも、何かで落ち込んだりしたら、またひかりの手紙、見せてあげるよ」

「ありがとう」

 舞も笑顔になった。


『そして次回はいよいよ、第一回チキチキロボットバトルロイヤル飛んで走って底抜け脱線栄光のゴールへまっしぐら〜レース大会の始まりです。

 おにいちゃんには、火星大王さんの活躍を余すところ無く、誰よりも早くお届けしますっ!乞うご期待ですっ! ひかり』


 ここ東郷大学袴田研究室では、およそ10年前に袴田自身が発見した謎の素粒子、袴田素粒子の正体を暴くべく、日夜研究が行われていた。そのおかげもあり、発見当時全くの未知の存在であった袴田素粒子も、今ではおおよその性質は把握されている。

 現在では人体への感染を防ぐワクチンも完成しており、万が一感染してしまった場合の治療法も、ほぼ完成に近づいていた。ただし、現在の治療法では完治に数年の時間がかかってしまうのだが。

 今このラボが最優先で研究しているもの、それは袴田素粒子をブロックするシールドの開発である。ワクチンと治療法で、人体への影響はある程度抑えることができる。だが、機械への感染に関しては、それを防御するすべがほとんど無いのが現状だ。

 袴田素粒子は、何でも通り抜けてしまうニュートリノと違い、素粒子の中では大きく、ある程度の質量も持っている。そこで考えられたのは、袴田素粒子よりも小さな素粒子を使って、それが通り抜けられない密度のシールドが作れないだろうか、ということ。その試みは成功だった。最新のシールドは、完璧とはいかないまでも、ほとんどの袴田素粒子を防ぐことができる。都営第6ロボット教習所に供給されているのは、この最新型シールドなのだ。そして現在の研究は、より完全に袴田素粒子を通さないため、様々な素粒子を用いてのシールドテストだった。

「やっぱり妹さん、筆マメよね。こんなに長文の手紙を2日に一回も書くなんて。私なんか普段手書きってしないし、どんどん漢字が書けなくなってるよ」

 自分に呆れたように言う舞に拓也もうなづく。

「僕も似たようなものさ。PCやスマホでしかものを書かないからなぁ」

 拓也も自分に呆れ顔だ。

「おいおい、大学生がそれじゃいかんだろ」

 舞の持参したクッキーが余程気に入ったのか、二杯目の紅茶を入れている袴田教授が二人にそう言った。

「あ、先生の前だって忘れてた」

 舞がペロッと下を出す。

「私は友達ではないんだぞ」

 苦笑する袴田。

「すいませ〜ん」

 舞がおどけて自分の頭をコツンとやる。

 そんな二人のやりとりを、クッキーをかじりながら見ていた拓也は、なんとなくひかりのことを思い出していた。現在のひかりではない。

 あれは確か……ひかりが小学校の三年生、僕は中二だった、かな。

 その日、考古学者である父・光太郎が、まだ午前中だと言うのに突然拓也の通っている中学へやって来た。何事かと驚いた拓也だったが、そんな驚きはささいなものだった。

 父が持ってきたのは、拓也の母の訃報だったのである。

 拓也と父は、そのままひかりの小学校へ向かう。

 タクシーの車中。小学校の長い廊下。教頭室。そしてひかりの教室の前。拓也も父も、ほとんど口をきかなかった。いや、拓也の頭は混乱していて、何もしゃべれなかったのだ。そしてひかりにどう伝えればいいのか、教室の扉の前に来ても、全く思いついていなかった。

 父がひかりに母の訃報を告げた時、彼女が見せた表情を拓也は忘れることができない。今でもこうしてふと思い出したり、夢に登場したりする。

 拓也が素粒子の研究に進んだきっかけは、母の死だったのだ。

「休憩はここまでだ。そろそろ研究に戻ろうか」

 袴田の言葉に、拓也はハッと我に返る。

「だいじょうぶ?」

 舞が心配げだ。

「ううん、なんでもない」

 拓也は舞に笑顔を向けた。

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