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第458話 朝はパン

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「1時方向highに巨大な影が出現!」

 索敵担当の心音の声が、各コクピット内に大きく響いた。

 続いて、両津の怯えたような声が聞こえる。

「なんじゃありゃあ……デカすぎへんか?!」

 現われたロボットは、生徒たちが乗っている設定の巨大ロボに引けを取らない大きさだ。しかも、見たことのない変わったデザインをしている。

「ロボットと言うより、怪獣みたいですぅ」

 愛理が少し引き気味でそう言った。

 愛理の言う通りだ。そのデカブツは、機械と言うよりどこか生物的なのである。

 左右非対称のボディは粘膜質で、光を反射してぬらぬらときらめいていた。

 奈央が顔をしかめる。

「袴田素粒子って、生物兵器まで作るのでしょうか?」

 その問いに、奈々が首を横に振った。

「専門誌や論文は最新のものまで読んでるけど、そんな話は聞いたことないわ。そうよね、棚倉くん?」

「俺のことはジョニーと呼んでくれ」

「もうそのくだりはいいから!あんた、ロボット博士でしょ?!」

 正雄がニヤリと右の口角を上げる。

「泉崎くんの言う通りだ。俺もそんな情報は聞いたことがないぜ」

「でもやで」

 両津がその会話に入ってきた。

「戦闘シミュレーターに入ってるってことは、あれが仮想敵ってことやろ?」

「恐らくそうだぜ」

「ってことは、司令部は敵があんな風かもしれへんて、掴んどるんちゃうか?」

 皆が急に静かになる。

 敵は暴走ロボットではなく怪獣なのか?

 いや、あれは生物的に見えるロボットなのか?

「両津くん」

 ひかりがコクピットのカメラに顔を向け、真顔で両津を呼んだ。

「なんや?」

「ところで、司令部ってどこにあるの?」

 一同がハッとする。

 ここは対袴田素粒子防衛中央指揮所だ。略して指揮所と呼ばれることはあっても、司令部なんて言い方は聞いたことがない。

 両津が頭をポリポリとかく。

「いやぁ、指揮所より司令部の方がカッコいいかなぁ思て」

 苦笑する一同。

 奈々が肩をすくめて言う。

「両津くん、国連宇宙軍の司令部のことを言ってるのかと思ったわよ」

「それやそれ!その司令部!」

 無線から奈々の大きなため息が聞こえた。

 それと同時に、心音の大声が響く。

「あの怪獣、こっちに向かってくる!」

 皆パッと顔を上げてメインスクリーンに目を向ける。

 まさに今、ロボットなのか生物なのか判別が難しい物体が迫りつつあった。

「よし!棚倉キックをお見舞いしてやるぜベイビー!」

「ちょっと待って!」

 正雄の提案に奈々が噛み付く。

「これだけデカいロボットで飛び蹴りなんかしたら、こっちの脚部やボディがぶっ壊れるかもしれないわ!」

「じゃあどうするんだ?」

「まずはパンチよパンチ!奈々パァーンチ!よ」

「同じじゃないか? キックもパンチも」

「違うわよ!ボティにかかる負担がぜーんぜん!」

 二人の言い合いを皆は聞いていた。

 どちらの言うことも、もっともらしく聞こえる。いったいどうすればいいのか?

 だが、皆が悩んでいるスキに、ひかりが両手のレバーを引きベダルをぐっと踏み込む。そして一歩前へ踏み出した。

「朝はパン!パンパパ〜ン♪」

 そう歌いながら、右手で敵ロボットを往復ビンタする。

「今よ!」

 ひかりのビンタに一瞬動きを止めたロボットに、奈々のパンチが炸裂した。

「奈々パァーンチ!」

 ドゴーン!と轟音を上げて、敵ロボットが背後に数歩よろける。

「今だぜ!棚倉キィーっく!」

 ズシーン!

 その衝撃で、敵ロボットはそのまま後ろに転倒した。

「マリエちゃん、お願い!」

 ひかりが右手のビーム兵器を、倒れている敵ロボットに向ける。

「了解」

 マリエは静かにそう言うと、ビームライフルの照準を敵ロボットの中心に合わせた。

「いっけーっ!」

 そう叫びつつ引き金を引き絞るひかり。

 その銃口から高出力ビームが放たれた。

 ドカーン!と轟音を響かせて、爆散する敵ロボット。

「やった!」

「やった」

 全身で喜びを表現するひかりと、静かに喜ぶマリエ。

「よし!今日の教習はここまでだ!」

 勝利に喜んでいた生徒たちに、陸奥からの声が飛んだ。

 と同時に、シミュレーターのメインスクリーンの映像が消える。そしてど真ん中に、点数表示が現われた。

 67点。

「微妙〜」

 生徒たち全員の声が揃っていた。


「まさか点数が出るとは思わんかったなぁ」

 教室に両津のなげきが響いた。

 シミュレーション訓練の後は、教室での反省会である。

 黒板には、ミミズの這ったような字で「反省会」と書かれている。南郷の字だ。彼の板書は、あまりにも下手で有名である。判別できるのはほぼ半分以下。おかげで授業が分かりにくいと生徒たちからの苦情が殺到する代物だ。だが南郷は、意地でも板書をやめないのであった。

「カラオケみたいよね」

 心音が肩をすくめてそう言った。

「あれ? ココって67点も出したことあったっけ?」

「黙りなさい!大和!」

 すでにかかあ天下である。

「遠野先輩!」

 愛理がひかりに視線を向けた。

「さっき歌ってたの、何の歌ですかぁ?」

「ビンタの歌だよ!」

「ビンタビンタ」

 マリエがなぜか楽しそうだ。

 それに奈々が突っ込んだ。

「違うわよ!パンのCMソングよ!」

「朝はパン!パンパパ〜ン♪」

「ああ、だから朝はパン、なんですね!」

 愛理の顔がパッと明るくなる。

「じゃあ、昼と夜は何ですかぁ?」

「昼もパン!夜もパ〜ン♪」

 ひかりがビンタの動作をしなから歌った。

「暴力反対!」

 その奈々の突っ込みに、両津は心中で「うまい!」とつぶやいていた。

 パンばかり食べてられへんわ!

 ご飯も食べなあかんで!

 両津なら、そんな風に突っ込んでいただろう。

 だが奈々はビンタの方に重きを置いて突っ込んだのだ。

 こりゃメモしといた方がええな!

 そう考えると両津は、心のメモ帳にしっかりとそれを書き込んだ。

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