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第457話 好きなパンは何?

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

新型ロボットの操縦は、ひかりたちにとって困難を極めていた。

 あくまでもシミュレーションのため、実際にはどんなロボットなのかもよく分からない。コクピット内のスクリーンには、なんとなくその巨大さが分かる影のような全体像が表示されている。だが、コクピットだけのシミュレーターでは、具体的なイメージを想像するには材料が足りないのだ。おかげで少し動くにしても、そのひとつの動作でロボットが何メートル動いたのかもサッパリ分からない。

「こりゃあやっかいだぜ。腕や足を動かした時の遠心力や慣性の大きさが、直感的に分からないぜベイビー」

 正雄が苦笑しながら愚痴を言った。

 奈々も正雄同様にてこずっているようだ。

「この影の大きさだとこいつの重量は大したものだと思う。だとすると、下手に腕を振り回したら自重で関節がモゲルんじゃないかな?!」

「ひぇー!奈々ちゃん、それ怖いよぉ!」

「まぁ、そこのところは防止装置が働いて、実際には折れたりしないとは思うが、その恐怖感があると思い切って操縦ができないぜ」

 初めての訓練となる今回は、操縦系が奈々、正雄、ひかり、火器管制はマリエ、両津、奈央、索敵は愛理、心音、大和の設定になっている。教官は全員で連携して操縦しろと言うが、そんなに簡単なことではないようだ。

 その時、愛理の叫び声が全員のコクピットに響いた。

「後ろから、ミサイルですぅ!」

 すかさず奈々が聞き返す。

「後ろって、どっちの後ろ?!」

「えっと、右の後ろ!」

「それじゃよく分かんないわよ!」

 シミュレーターのコクピットが大きく振動する。後方からのミサイルが命中したようだ。

「愛理ちゃん!」

 同じ索敵を担当している大和からの声が飛ぶ。

「方向を言う時はクロックポジションだよ!」

「授業で習ったじゃない!」

 心音が、大和に乗っかって同様に叫んだ。

 心音と大和は、以前東京ロボットショーでテロリストと対峙した時、奈々や正雄にそう指示されている。今回はそれを愛理に思い出させる番だ。

「あ、そうでしたぁ!」

 クロックポジションは船舶や航空機等で位置を示す手法のひとつだ。アナログ時計の中心にいるとして、正面を「12時方向」と規定、対象物や目標方向が時計の「何時方向」であるかで方位を提示する。軍で用いられる場合は、highまたはlowを方向にプラスすることが多い。例えば「6 o'clock high」は背面上方ということになる。

「またミサイルが来ますぅ!4時方向high!」

 奈々がその迎撃のために、右腕に持っている機関砲らしきものを右肩にしょって後ろを向けた。

「火器管制!照準をお願い!」

「よっしゃ!ボクにおまかせや!」

 奈々の叫びに両津が反応する。彼が後方担当、マリエは前方左、奈央が前方右の照準を担当しているのだ。

「照準OKや!」

 両津の声と同時に、奈々がコクピットで引き金を絞る。

 すると機関砲のように巨大な銃から、弾丸ではない何かが飛び出した。

 命中。ミサイルは木っ端微塵に吹き飛んだ。

「棚倉くん、今の見たか?!」

 両津から驚きの声が上がる。

「もちろんだ。ありゃビーム兵器だぜ」

「すげー」

「この新型ロボット、ビームライフルを装備してるなんてワクワクしてくるぜ!」

 現在の日本においてビームライフルは、小銃型の射撃競技用光線銃のことである。実弾の代わりに光線を発射して射撃を行うもので、公安委員会の所持許可を必要としない。そのため、ジュニアの参加も多く、国民スポーツ大会や全国高校ライフル射撃選手権大会などでは、ビームピストルと共に正式種目となっている。またオリンピックでも、2012年のロンドンオリンピックから正式に競技として導入された。だが、このロボットに装備されているものはそれとは明らかに違っている。

 攻撃用の軍事ビーム兵器である。

 もちろん、その手のものは各国の軍により開発が進んでいる。だが両津も正雄も、ここまで小型化されたものは知らなかった。何しろ巨大とはいえロボットが片手で携帯しているのである。そこには驚くべき最新技術が投入されているに違いない。

 正雄がニヤリとして言う。

「こりゃあダイナギガだな」

「そっか!ダイナギガって、めっちゃすごいエネルギーや言うとったもんな!だから小型のビームガンが作れたんやな!」

「すごいぜ」

 高揚し、目を輝かせている正雄と両津。だが奈々から不安な声が届く。

「こんなに巨大なロボット、それにビームライフルって……私たちが戦うのって、どんな相手なんだろ?」

 奈々の心配も当然である。これまでに彼らが対峙してきたのは、袴田素粒子が感染した暴走ロボットだ。工事用の重機などは、一般の乗用と比べると確かに大きいとは言える。だが、このシミュレーターから想像される巨大ロボットはその比ではない。こんなデカブツが必要なほど、敵は巨大なのだろうか?

「相手がどんなに強大でも、俺たちは立ち向かうんだぜベイビー」

 ひかりが首をかしげる。

「兄弟? 棚倉くんもお兄ちゃんがいるの?」

「強大よ!強くて大きい!」

 両津がポッと赤くなる。

「泉崎さん、それってちよっとエロいような」

「え?」

 ハッとする奈々。

「この変態!バカなこと言ってるんじゃないわよ!」

「両津くんには無い?」

「忍耐!」

「だから人生から、」

「引退!」

「せーへんわ!」

「へんた〜い!」

「止まれ!」

 そんな会話を聞いていないのか、正雄がひとりニヤリとマイトガイスマイルを見せる。

「大丈夫さ。こんなにすごいロボットがあるなら、敵がどんなに強大でもコテンパンだぜ!」

「コッペパン?」

「コテンパン!」

「私、ジャムパンの方が好きだなぁ」

「私はクリームパン」

 ひかりの言葉に反応するマリエ。

 そして突っ込む奈々。

「好きなパンの話しをしてるんじゃないの!」

 だがそれをきっかけに、全員による好きなパンの申告大会が始まったのである。

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