第456話 新たな操縦訓練
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「あれれ? 教官が新型だって言ってたけど、なんだかこのコクピット、見たことあるような、慣れてるような気がするよ?」
ひかりが座席に着くなり、嬉しそうな声を上げた。
今日からは、新型ロボットのシミュレーション訓練だ。教習所地下のフロアにズラリと並んだ操縦訓練機に、ロボット部の面々全員が乗り組んでいる。
「この操縦システム、ちょっと火星大王に似てない?」
そんな奈々からの無線に、ひかりが大声を上げた。
「火星大王、さ!ん!」
「はいはいごめんなさい、火星大王さんね」
「分かればよろしい!」
ひかりの満足げな声が、各コクピットに流れる。
「そうですわね。確かに火星大王さんと、レバーやペダルの位置が同じみたいですわ」
奈央が、ガチャガチャと操縦系を操作しながらそう言った。
皆が乗り込んでいるコクピットには、左右の手で操作するレバーがそれぞれ付いている。それにプラスして中央に操縦桿らしきもの、足元には3つのペダルが設置されていた。
「ほんまやな。これやったら、遠野さんが最初にマスターできるんとちゃうか?」
両津の言葉に、ひかりが首をかしげる。
「えっと、ダスター?」
「誰が雑巾やねん!ボクが言ったのはマスターやマスター!」
「ゴースト?」
「バスターズ!」
今度は奈々が突っ込んだ。
「私、両津くんの妹じゃないよ?」
「シスター!」
「壁に?」
「ポスター!」
「銀座?」
「アスター!」
「石油をガブガブ飲む?」
ここで突っ込んだのは奈央だ。
「それはペスター!初代ウルトラマン第13話『オイルSOS』に登場した怪獣の名前ですわ!」
「ああ!ぶつぶつのある宇宙人!」
「それはキュラソ星人!ウルトラセブンに登場した敵ですわ!確かにガソリンを飲むのは同じですが……」
会話を聞いていた愛理が、腕組みをして何やら考え込んでいる。
「愛理ちゃん、どうしたの?」
ひかりの問いに、愛理が顔を上げた。
「ガソリン飲んじゃう怪獣とか宇宙人って、攻撃が難しいですよねぇ。下手にミサイルとか光線当てたら大爆発ですぅ」
愛理の言葉に、ひかりが再び首をかしげる。
「ガソリンって、昔の自動車さんのご飯でしょ? ガソリンスタンドって言う食堂で食べるって聞いたよ? それが爆発したりするの?」
その問いには、奈央がニヤリとして答えた。
「戦隊モノや仮面ライダーでどかーんって爆発してるのは、爆弾じゃなくてガソリンなんですわよ。電極の上にガソリンの入ったポリ袋を乗せて、電気を通したらどかーん!現場ではナパームと呼ばれています」
「ふえぇ〜!それって怖い!自動車さんのお腹の中で爆発しちゃうよ?!」
「その爆発を動力に変えるのよ!」
だが、奈々のその突っ込みにひかりは余計に首をかしげる。
「両津くんに無い?」
「それは能力!私が言ってるのは動力!」
「少しぐらいあるわ!」
今回のボケ合戦は両津の突っ込みで終わりを迎えた。
その時、南郷の怒鳴り声が無線から皆のコクピットに響き渡る。
「ほらほら、みんなアホなこと言ってんと、さっさと訓練始めるで!」
「え? アホは両津くんだけだよ?」
ひかりのひと言に、南郷含め全員が吹き出してしまった。
「アホちゃうわ!」
「じゃあ、パーかな?」
そんな両津とひかりの会話を聞き、南郷が叫んだ。
「アホちゃいまんねん!パーでんねん!」
シーンと静まり返る一同。
陸奥が、南郷に静かに言う。
「南郷さん、それ古すぎます。生徒たち、誰も分かってませんよ」
「ええっ?!タケちゃんマンのライバルでっせ!『オレたちひょうきん族』の!」
久慈も苦笑する。
「ひょうきん族自体、知りませんよ。当時はまだ彼ら、生まれてさえいませんから」
「がびーん!」
そんな三教官の様子を見ていた美咲がそっと手を挙げる。
「あのぉ」
「山下センセはどう思います?!」
「私も……知らないんですけど」
「がちょーん!」
南郷の言葉に、なぜかひかりと両津がノッてくる。
「はらほろひれはれ!」
「お呼びでない? こりゃまた失礼しましたっ!」
南郷から驚きの言葉が飛んだ。
「お前ら、よう知っとるな?!」
両津の声はなぜか誇らしげだ。
「ボク、お笑いに関してはめっちゃ勉強してますから!」
「遠野くんは?」
「遠野さんは、お父さんが考古学者ですから、古いことに詳しいんですよ!」
「なるほどなぁ……って、そんなわけあるかっ!」
ひかりがすかさず。
「はらほろひれはれ!」
大爆笑に包まれる一同。
気を取り直して、陸奥が無線に告げる。
「じゃあ、本当にそろそろ操縦訓練を始めるぞ!」
「了解!」
生徒たちからキレイに揃った返事が返った。
陸奥から、訓練の概要が告げられる。
「今回、操縦系は泉崎、棚倉、遠野の三人。火器管制はマリエ、両津、宇奈月。索敵は伊南村、野沢、館山の設定になっている。皆で連携して操縦してみろ!」
「了解!」
再び揃った返事を返す生徒たち。
両津がニヤリと笑い、正雄に無線で言う。
「棚倉くん、このフォーメーション、東京ロボットショーの時に似てへん?」
正雄も、ニヤリとした笑顔をカメラに向けた。
「つまり、全員で巨大ロボットを操縦するってことだぜ!」




