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第452話 過去ログの解析

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「副長。あなたも私たちと同じですよね?」

 遠野ひかりの母・遠野あかりは、美咲の目を覗き込みながらそう言った。

 彼女は調査宇宙船ハーフムーン号の情報システム部主任である。

「それは、どういう意味ですか?」

 美咲はアイにお願いし、袴田素粒子たちが記した過去の記録を再び訪れていた。もちろんこれは美咲の脳内に再現されたシミュレーションに過ぎない。美咲にとって知ることはできても、けして変えることの出来ない過去の事実なのだ。

 美咲は、情報システム部の三人と同じテーブルにいた。

 主任のあかりと、その助手である野沢結菜と田中正明である。食事時ではないようで、この広いカフェテリアに、客は美咲たち以外には誰もいない。たった四人の静かな室内に、優雅な雰囲気のボサノバが小さく流れている。

 なるほど。この前離脱したところからコンティニューって感じね。

 ということは、ハーフムーンが消息を絶ってからほぼ半年後ということになる。

 美咲はひとり納得し、周りに分からない程度に小さくうなづいた。

「袴田素粒子に感染したのに、副長には自我が残ってる」

 そのあかりの言葉に、美咲は目を丸くした。

「もしかして、あなたたちも?!」

「そうです。だから、副長も私たちと同じだと言ったんです」

 そう言うと、あかりはニッコリと微笑んだ。

 正明が明るい声で言う。

「でも驚きですよ。ボクたちと同じ状態の人が他にいないか、ずっと探してたのに半年も隠してたなんて」

 結菜がうんうんとうなづいた。

「もちろん、あいつらに見つかったらヤバいですからね。よくバレずにいてくれました!」

「あいつら?」

「はい!素粒子に完全に自我を乗っ取られたクルーのことです!」

 正明はそう言うと、くやしそうに歯噛みした。

 なるほど、そういうことか。

 この三人に感染した素粒子は、アイのように穏健派なのだろう。そしてそれを他の感染者には隠してきたのだ。

 美咲があかりに問う。

「あなた方以外に、自我が残っているクルーはいるのですか?」

「実は、船長とドクターにも、自我が残っているんですが」

 あかりの顔が苦渋に歪んだ。

「彼らに見つかって、監禁されています」

 大きなため息をつくあかり。

「ドクターは、袴田素粒子に対する新しいワクチンを開発しようとしていたんです。その効果なのかどうかは分かりませんが、実験台としてそれを打っていた私たちは、こうして自我を保っています」

 美咲にも、穏健派と過激派の素粒子の違いや、その感染方法の差などは分からない。人類自らがその研究を進めない限り、アイは何も教えてくれないからだ。

「あなた方は、彼らに見つかっていないのですか?」

 すると正明が肩をすくめた。

「大変なんですよ、自我が無くなったフリをするの!感染した素粒子さんのアドバイスで頑張ってはいるんですけど、そろそろバレそうでビクビクですよ」

 結菜も正明の言葉に、大きくうなづいている。

 美咲は、再びあかりに視線を向けた。

「それで、これからどうするつもりなんですか?」

 美咲の問いに、カフェテリアに一瞬沈黙が訪れる。

 そして意を決したのか、あかりが真剣な目で美咲を見つめた。

「船長とドクターを助け出します」

 その後を正明が続ける。

「それから、船のコントロールを奪い返すんですよ!」

 結菜も、真剣な表情を美咲に向けた。

「そして、みんなで地球に帰るんです!」

 そう言った結菜の言葉を受けるように、あかりと正明の顔に硬い決意が浮かんでいた。

 美咲の胸が苦しくなる。

 美咲は、ハーフムーンのその後を知っているのだ。

 とその時突然、美咲の周りの風景にノイズが走る。

 あかりたち三人は、まるでスチルをかけた動画のように微動だにしなくなった。

 気付くと美咲は、宇宙船サンファン号の彼女の自室に座っていた。

「あれ? アイくん?」

 思わずアイに呼びかけた美咲。

 すると機械音声のように無表情なアイの声が返ってきた。

「すいません、美咲さん」

「どうなったの?」

「解析できている過去ログはここまでです」

「この先は?」

「このまま解析を続行します。判明したら、また美咲さんに体験していただきます」

 美咲はフッとひとつ、ため息をついた。

「よろしくお願いね。この後、とても大事なことが起こってる気がするの。それを知ることが、地球人類にも……残された家族にとっても、重要だと思う」

「了解です。解析が進んだら、また声をおかけします」

 美咲はうなづくと、目覚めるためにゆっくりと目を閉じた。

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