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第447話 ダック&ウィーブ

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「なかなかやっかいね」

 夕梨花の愚痴が無線から聞こえた。

 現在、夕梨花たち警視庁機動隊ロボット部隊の三機のキドロは、暴れている暴走ロボットと対峙していた。

 三機vs三機。

 夕梨花と沢村、門脇の警視庁キドロ隊にとって、同数の暴走ロボットをくい止めることなどたやすいことである。だが今回に限っては、そう簡単なことではなくなっていた。

 相手はシャムシールもどきの巨大な刀を持っている。一方のキドロには、超硬合金製の特殊警棒がある。また、夕梨花のキドロだけは、彼女のために作られたまるで日本刀のように美しい武器、ROGAをその手に握っていた。通常の暴走ロボット戦では、これらを使って相手と近接戦闘に入ればいい。だが今はそうもいかない。相手と剣を交わせば、キドロに一瞬のスキができる。ほんの短い時間とはいえ、機体の動きが止まる瞬間が生まれてしまうだろう。敵はそれを狙って、加速された袴田素粒子を打ち込んでくるのだ。これではうかつに相手と切り合うこともままならない。そこで出たのが先程の愚痴なのだ。

「気をつけて!けしてキドロの動きを止めないように!」

 指揮車から美紀の激が飛ぶ。

 その時突然、それまで機体をフラフラと揺らしていた三機の暴走ロボットたちが一斉にジャンプした。それぞれが向き合っていたキドロに飛びかかったのである。

 振り下ろされるシャムシール。

 ガキン!

 沢村と門脇は特殊警棒で、夕梨花はROGAでそれを受け止めた。

 ほんの一瞬、キドロの動きが止まる。

 【over capacity】の赤文字が目の前のスクリーンに表示され、アラーム音が鳴る。

「キドロ三機に袴田素粒子が命中!」

 指揮車で、美紀がそう叫んだ。

 その言葉が終わらないうちに、三機のキドロは後方へジャンブ、暴走ロボットから一定の距離を取る。そして、夕梨花機がまるでボクサーのような動きを見せ始めた。

「ダック&ウィーブよ!」

 夕梨花の声が、無線で沢村と門脇に飛ぶ。

 ダック&ウィーブは、文字通りダッキングとウィービングを途切れなく連続して行う技術だ。ダッキングはダック、つまりアヒルのように上体を前かがみにして頭を下げる動きであり、ウィービングはUの字を描くようにカラダを動かすこと。ダッキングが身体を倒してかわす動きなら、ウィービングはフック系のパンチをくぐるようなイメージだ。どちらもボクシングの基本技術である。頭と共にしっかりとヒザを使ってこの二つを繰り返すことで、機体の全ての部分を同じ場所に存在させないのが夕梨花の狙いだ。

 沢村と門脇も、夕梨花と同様の動きを始めた。

「ほう、ダック&ウィーブか。よく思いついたな」

 指揮車では、白谷がそう言うとニヤリと笑みをこぼす。

 一方の美紀は感心の声を漏らした。

「泉崎さん、さすがですね」

 新型キドロは全ての材質が見直され、強度が上げられただけでなく軽量化も図られている。おかげでキドロ三機は、フットワークも軽くダック&ウィーブを繰り返していた。

 その動きにとまどいを見せる暴走ロボットたち。

 左右に、前後にとステップを踏みながら頭を上下させ、U字型にカラダを動かすキドロ三機。暴走ロボットにとって、どこを狙って攻め込めばいいのか判断がつきかねているのだろう。

「お嬢ちゃん、お待たせだぁ」

 その時、キドロ各機の無線から後藤の呑気な声が聞こえた。

 スクリーンの後方カメラに目をやると、後藤と沙羅のキドロが立っている。その手には、キドロ用の40ミリ機関砲がしっかりと握られていた。

「ほんじゃあ、お姉ちゃん、やってやろうぜぇ」

「了解!」

 そして二機のキドロは、陥没してぽっかりと開いている地下トンネルに大型機関砲を向けた。

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