第441話 早すぎる
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「おっ!キドロの到着だぜベイビー!」
正雄の声に、学食の全員が大画面テレビに注目する。
「いち、にぃ、さん……キドロ六機て、えらい豪華やなぁ」
両津が指を折りながらキドロの数を数えた。
「泉崎さん」
突然名前を呼ばれた奈々が、少し驚いて両津に顔を向ける。
「何?」
「トクボのキドロって四機やなかったっけ?」
確かにそうである。
奈々は、姉の夕梨花から話を聞くだけでなく、何度も警視庁へ見学に出かけている。彼女が目撃したキドロは、確かに四機だった。
ひかりが両手の指を立てて数え始める。
「六機ひく四機は、二機!ニキニキニキニキ二木の菓子!」
両津がそれに乗ってくる。
「どーもすいません!」
「さーんぺーいでっす!」
「その三瓶とちゃうわ!林家三平師匠や!しかも初代の!」
ひかりのボケが少し高度になっている。
お笑いこそライフワークの両津以外、誰も付いて来れなくなっていた。
奈々が腕組みをしてひかりを見る。
「ひかり、今のボケはちょっと難しすぎるわ。私、どう突っ込めばいいのか、分からなかったわよ」
「あれぇ?」
ひかりが首をかしげた。
「私、ボケたりしてないよ? 思いついたことを言っただけだよ」
そうだった。
ひかりのボケは、彼女にとって反射行動のようなものなのだ。
その意味などを考えてのことではない。
「反射ってやつやな」
両津が妙に納得してうんうんと強くうなづいた。
「てめぇ、どう落とし前つけてくれるんじゃい?!」
「それは反社!反社会的勢力や!」
ひかりと両津の会話に、奈々がため息をつく。
「まるで脊髄反射ね」
「脊髄反射、略して赤射!」
「灼熱の太陽エネルギーがグランドバースのソーラーシステムにスパークする。増幅された太陽エネルギーは赤いソーラーメタルに転換され、シャリバンに赤射蒸着されるのだ!」
長ゼリフで突っ込んだのは奈央である。
「宇宙刑事シャリバン!」
なぜか愛理も嬉しそうだ。
「よく見てみるんだぜベイビー」
その時、正雄がテレビ画面を指差した。
「あっちの一機のボディに、神奈川県警の文字があるぜ」
「ほんまや!もう一機の方には……埼玉県警て書いてあるやん!」
正雄と両津の言葉に、心音が首をかしげて大和を見る。
「どうして東京に、他県の警察のロボットがいるの?」
「そんなこと、ボクに聞かれてもなぁ」
その疑問には奈々が答えを出した。
「大きな事件の場合、警察は他県からの応援を頼むことがあるの。それじゃないかな?」
「せっしゃ、助太刀いたす!」
「いたす!」
ひかりとマリエが大見得を切る。
「でも、ちょっと早すぎませんか?」
そう言って今度は奈央が首をかしげた。
「早すぎる?」
「ええ。暴走ロボットが出た!他県にも応援の要請だ!そしてたったの10分ぐらいで現場に駆けつけた!」
「確かに。いくらなんでも早すぎるわね」
奈々も、奈央と同様に首をかしげた。
突然ひかりが立ち上がる。
「樹齢1000年以上!」
「それは屋久杉!私が言ってるのは早すぎ!」
「もう食べられないよぉ」
「食い過ぎ!」
再びひかりの大ボケ大会が開催されようとした時、皆のテーブルに幸代がやってきた。手に持つお盆には、カレーライスがふたつ乗っている。
「はい、お待ちどうさま」
「カレーライスは今食べたい!」
「今食べたい!」
カレーライスの魅力によって、ひかりのボケはそこで止まったのであった。




