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第433話 セミトレ

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 夕梨花と沢村、門脇のキドロ三機は、アニメイト池袋本店から北に600メートルほどの位置にある工事現場の竪穴から地上へ出ていた。

 一方の後藤と倉敷、押坂の三機のキドロは、南に800メートルほど下った所にある戸山公園で発見された入り口から、今まさに外に出ようとしていた。

 それぞれの場所では、三台ずつのキドロトランスポーターが待ち構えている。

 キドロトランスポーターはキドロを運ぶための運搬車だ。正式名称は「20式特大型セミトレーラー」、通称「セミトレ」である。陸自の戦車運搬車と同じシャーシを使い、キドロに特化した装備を満載している。

 全幅:約3.3m、全長:約17m、全高:約3.5m、最高速度:約60km/h、積載量:約40tと言うデカブツである。

「各機、すみやかにセミトレに搭乗、アニメイト池袋本店前に向かってください」

 美紀のその声を聞きつつ、各パイロットはメインスクリーン右上に開いたワイプに目をやる。そこには、東池袋一丁目あたりの様子が俯瞰で表示されている。恐らく指揮車が飛ばしたドローンからの映像だろう。アニメイト池袋本店前の車道を、ふらふらと移動する黒いロボットが三機。ブラック・アイビスの無人ロボット兵だ。ひと目で暴走と分かる不思議な動きを見せている。不発弾処理の名目で、市民の全てを避難させたのは正解だった。もしも今、この街がいつもの池袋であったなら、市民に多くの被害が出ていたに違いない。暴走ロボットは人間に対して容赦がない。多数の死傷者を覚悟しなければならなかっただろう。まさに不幸中の幸いである。

「キドロの到着までどのくらいかかる?」

「セミトレに乗せてからになるので、15分前後かと」

 白谷がひとつため息をついた。

「それまで、あまり暴れないでいてくれるといいんだがな」

 美紀も同感だ。彼女にとってアニメイト池袋本店、そして乙女ロードは聖地なのである。

 壊されてたまるもんですか!

 そんな声が、美紀の心中に響いていた。

「各セミトレ運転者は、キドロ搭載後に可能な限り早く現場に向かってください。キドロ各機は、現場に到着次第暴走ロボットの対処をお願いします」

「了解!」

 警察無線から、多数の声がそう答える。

 その時、ほぼ同時に指揮車内のトクボ部員が大声をあげた。

「部長!主任!あれを見てください!」

 部員が指差したスクリーンには、ドローンからの俯瞰映像が映っている。

「いったいどこから出てきたんだ?!」

 白谷が驚きの声を漏らす。

 そこには、三機の暴走ロボットと対峙する二機のロボットの姿があった。

 一台は先日の箱根山事案で姿を見せた新型機、霧山グループ総帥・霧山宗平の第二秘書、小池葵が乗っていたのと同じP5だ。もう一機は、美紀の見立てでは無人機である。

 トクボ部員が再び声を上げる。

「隣の、サンシャインシティの駐車場から出てきたと思われます!」

 サンシャインシティの地下駐車場は、都内有数の巨大平面駐車場だ。自家用ロボット500台と四輪自動車1000台の収容能力がある。駐車スペースの幅も奥行きも広く、切り返しもしやすい。ロボット運転が苦手でも、大きなファミリーロボットでも停めやすいと評判の駐車場だ。もちろんEVとロボット用の急速充電器も設置されている。

「いったい何者だ?」

 いぶかしげな声を漏らした白谷に、美紀が視線を向ける。

「やはり、霧山宗平の第二秘書……小池葵でしょうか?」

「その可能性は高いだろう」

 そう言うと白谷は無線に向かって夕梨花に声をかけた。

「泉崎、聞こえるか?」

「はい、感度良好です」

「現場の映像は見ているな?」

「見ています。あれは、箱根山に現われたのと同一の機体でしょうか?」

「うむ、その可能性が高いだろう。面識のある泉崎から確認の無線を入れてくれ」

「了解しました」

 そう言うと夕梨花は、警察無線の全チャンネルをオープンにする。こうして呼びかければ、どれかの周波数に反応があるだろう。

「こちら警視庁機動隊の泉崎警部。そちらの所属と目的を述べよ」

 沈黙の中、無線に乗るノイズだけがジリジリと音を立てる。

「こちら警視庁機動隊の泉崎……」

 夕梨花が二度目の呼びかけをしようとした時、ひとつのチャンネルから返事が返ってきた。

「あら? 泉崎さんですか、ごきげんよう。よくお会いしますね」

 そう言ってフフッと笑う。

 やはり小池葵だ。

「葵!そんなところで何をしている?!」

 夕梨花の激しい問いに、葵は落ち着いた声で答えた。

「サンシャインパーキングは、我社の契約駐車場です。プロトタイプの車種を停めておく許可も、都からいただいていますわ」

 葵の言葉に、何かをコンソールで調べていたトクボ部員が白谷に向ていうなづいた。どうやら葵の言っていることは本当のようだ。

「だが、今いるその場所は立入禁止になっているはずだ。早く駐車場に戻るんだ!」

 夕梨花が見つめるメインスクリーンにワイプが開く。その中では葵が微笑んでいた。

「あの汚らわしい黒いロボットを放っておいてもよろしいのですか? 泉崎さんがここに来るのに、まだ10分以上かかるでしょ?」

 いったいどこまで知っているのか?

 夕梨花だけでなく、指揮車の全員にも驚きが広がっていた。

「みなさんが到着するまで、わたくしどもが相手をしていますわ。そうすれば。街の被害も最小限になるでしょ?」

 葵の言うことにも一理ある。

「部長?!」

 夕梨花の問いに、白谷がうなづく。

「やむを得ないだろう」

「葵!その代わり、ことが終わったら詳細を聞かせてもらうからね!」

「はい。お待ちしております」

 そう言うと葵は警察無線のチャンネルをオフにした。代わりに、霧山グループの専用回線をオンにする。

「こちらデーヴァダーシ、これより無人機による対無人機戦の実戦テストを開始します」

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