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第432話 ハーフムーンのカフェテリア

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「副長も紅茶でいいですか?」

 そのひと言に、美咲はハッと目を開けた。

 え? ここはどこ?

 緊迫したブリッジにいたはずの美咲は、いつの間にか食堂のようなテーブルに着いていた。声をかけたのは情報システム部の野沢結菜である。

「え、ええ。お願い」

 美咲は、心中のとまどいをなんとか隠してそう答えた。

 動揺を表に出さないように気をつけながら、周りを見渡す。

 ここは恐らく宇宙船ハーフムーンのカフェテリアだ。美咲が副長として勤務していたサン・ファン号の食堂と酷似している。

「副長って、確かアールグレイがお好きでしたよね。ここの紅茶ってダージリンのプレーンだったと思いますけど、それでも大丈夫ですか?」

 結菜と同じ情報システム部の田中正明だ。

「もちろん。確かにアールグレイは大好きだけど、紅茶自体が好きだから問題ないですよ」

「良かった」

 そう言って微笑んだのは遠野あかり主任だ。

 どうやら美咲は、情報システム部の三人と同じテーブルにいるようだ。

 食事時では無いのかこの広いカフェテリアに、客は美咲たち以外には誰もいない。たった四人しかいない静かな室内に、優雅な雰囲気のボサノバが小さく流れている。

 もしかして時間が戻ったのか?

 美咲はついさっきまで、袴田素粒子の感染と戦うブリッジにいたはずだ。だがこの様子では、まだ感染自体が始まっていないのではないだろうか?

 美咲は顔を上げ、恐る恐るあかりに問いかけた。

「ちょっとおかしなことを聞きますけど、今はいつですか?」

 首をかしげるあかり。

「今はいつ? 確かにおかしな質問ですね」

 あかりはそう言ってニッコリ笑うと、美咲にある日付けを告げた。

 驚きを隠しきれず、思わず目を見開いてしまう美咲。

 その日付けは、ハーフムーンが消息を絶ってから数ヶ月も先のものだったのだ。

 もしかして、私の記憶が間違っている?

 いや、そんなはずはない。美咲はサン・ファン号に乗り組む前に、宇宙で発生した大事件の多くをアカデミーで学習した。それに、ついさっきまでいたはずのブリッジで見た日付け表示のことも覚えている。確かに今は、それから数ヶ月以上も先の時間なのである。

 美咲は、落ち着きを取り戻すため、ふーと大きく息を吐いた。

 その時結菜が、美咲の分の紅茶を手にテーブルへと戻ってきた。

「はい、どうぞ」

 そう言って美咲の前にカップを置き、そのまま自分も席につく。

 あかりがテーブルの全員を見回した。

「この時間、ここにはほとんど人がいなくなります。なのでこの場所にしました」

 いったい何が始まるんだ?

 美咲の中に疑問が広がる。

 そんな心を見抜いているかのように、あかりは美咲をじっと見つめた。

「副長。あなたも私達と同じですよね?」

 私達と同じ?

 何が同じと言うのだろう?

 美咲は訳がわからないまま、あかりの目をじっと見返していた。

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