第430話 over capacity
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「おいよぉ、白谷のオッサンが逃げろってよ」
後藤の飄々とした声がキドロ各機に届く。
「ゴッドさん、これってどういうことでしょう?! ボクらの活躍はこれからなのに!」
そう叫んだ春樹に、後藤の言葉はまるでなだめるようだ。
「俺たちはすでに活躍したから、まぁいいってことで。さぁ、さっさと撤退だぜぇ」
その時、キドロ各機の無線に美紀の声が響いた。
「現在予想できない事態が起こっています。それぞれメインパネルの対袴田素粒子防御シールドの表示を確認してください!」
一斉に自機の表示に目をやるパイロットたち。
彼らは一様に我が眼を疑った。
そこには、見たこともない赤い表示が点灯していたのだ。
【over capacity】
小さくはあるが、その存在を誇示するような明るさである。
「これって、まさか?!」
春樹が低くうめいた。
「原因は分かりませんが、対袴田素粒子防御シールドの処理能力を超えた事態になっている可能性があります。このままだとキドロですら感染してしまうかもしれません」
美紀が落ち着きを取り戻してそう言った。
「地下トンネル内の素粒子濃度は。現在も上昇し続けています。一刻も早く、トンネルから脱出してください」
美紀の落ち着いた声が、余計に現場の緊迫感を増していく。
それを打ち消すように、夕梨花の激が飛んだ。
「みんな聞こえたわね?! それぞれ入ってきた縦穴へ向かうわよ!」
「了解!」
一同はきびすを返し、無人ロボット兵に背を向けた。
「あれれ? なんか今、ピカッてしたよ、ピカって」
ひかりが職員室のテレビを指差してそう言った。
部屋にいる全員が、その方向に目を向ける。
テレビでは普段の番組を中止して、報道特別番組が放送されていた。池袋の不発弾処理現場からの生中継だ。ひかりたちが見つめる画面には、ドローンからだと思われる空撮の映像が映っている。東池袋一丁目にあるアニメイト池袋本店を、真上から見た様子である。
「なんだろ、さっきまでとちょっと違ってない?」
奈々の指摘に一同が目を凝らす。
「アニメイトの前の道路、陥没してますわ」
奈央の言う通りだった。アニメイト池袋本店前の車道に、ぽっかりと大穴が開いているのだ。さっきひかりが眼にした光は、恐らく爆発物のものだろう。そして今まさに、その穴から黒い何かがはい出ようとしていた。
テレビのアナウンサーが何かを早口で喋りだす。
『陥没した道路に開いた穴から、何かが出てきます!あれは……ロボットです!真っ黒に塗装された、見たこともないロボットがはい出てきます!』
両津が正雄に視線を向ける。
「棚倉くん、あのロボット知っとる?」
画面を見つめていた正雄が首を横に振った。
「いや。ロボット博士の俺でも、あいつの正体は分からないぜベイビー」
生徒たちの中で最もロボットに詳しい正雄である。彼が知らないなら、ここにいる誰にも判別できない機体なのだろう。
愛理が首をかしげる。
「不発弾て、あれですかぁ?」
もっともな疑問である。不発弾処理の現場から現われた謎のロボットだ。愛理がそう思うのも無理はない。奈々も同様に首をかしげた。
「違うと思うけどなぁ。もしあれがそうなら、爆発の危険があるロボットの処理、って言うんじゃないかな?」
確かに、とうなづく一同。
「ねぇねぇ奈々ちゃん」
ひかりが隣に座る奈々の肩をつんつんする。
「何よ?」
「あのロボットの動き方、なんだか見たことある気がするよ」
「動き?」
そう言うと奈々も、テレビ画面のロボットをじっと見つめた。
真っ黒なそれは、痙攣するようにわずかに震えている。
「あれって?!」
そして一同、声を揃えて叫んでいた。
「暴走してる!」




