第422話 不吉な予感
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「それで、最初にメッセージを受け取ったのは誰なの?」
東京湾の広大な埋立地に広がる都営第6ロボット教習所の職員室に、ロボット部の生徒全員が集められていた。
「はーい!私でありまする!」
久慈の問いに、ひかりが手を挙げながら立ち上がった。
「はい、その次は私でありまする」
続けてマリエが立ち上がる。
「その後、ここにいる全員が受け取ったっちゅーわけやな?」
南郷が腕組みをしながらそう言った。
生徒たち全員がうんうんとうなづいている。
陸奥が全員の顔を見渡して言う。
「メッセージを受け取った方法は色々だが、その内容は同じだと」
再び生徒たち全員がうんうんとうなづいた。
その時突然、ひかりが民謡のような節回しで歌い出した。
「♪えんや〜、まぁるぅ〜」
そして頭の上で、両腕で丸を作る。
「♪おいしい丸、えんや丸、みんな丸〜」
マリエが後を続ける。
「旨いサカナと旨い酒で、今日も丸」
「お酒はハタチになってからやで〜♪」
と、両津がしめくくった。
陸奥が、何事もなかったかのように腕組みをする。
「丸……しかも、真円のようにキレイな丸、か」
教官たちが顔を見合わせた。
その時、愛理がひょいと小首をかしげる。
「しんえんって何ですかぁ?」
ひかりが左手の人差し指をぴょんと立てた。
「それはね愛理ちゃん、両津くんはあんまり塩分を食べちゃダメってことだよ」
奈々のツッコミが入る。
「それは減塩!愛理ちゃんが聞いてるのは真円!」
「高血圧ちゃうわ!」
両津も奈々と一緒に突っ込んだ。
「お金持ちが家を立てる場所だよ」
「それは田園!」
「田園調布に家が建つ!」
「両津くんはギャグが面白くなくなる呪いにかかってるんだよ」
「それは怨念!」
「そこに猫がおんねん!」
「両津菌が広がると、みんな面白くなくなるんだよ」
「それは蔓延!」
「誰がウイルスやねん!」
「両津くんがヨダレをたらしても欲しいものだよ」
「それは万円!」
「うん、それは欲しい」
生徒全員が両津の言葉にうなづいた時、奈央が正解を告げた。
「真円は、ゆがみがなくてどの方向から測っても直径が同じ完全な円のことですわ」
「えんは異なもの味なもの、ってね!」
ひかりが江戸っ子のようにそう言った。
さぁいち段落やな。
そう思った南郷が皆に問いかける。
「その丸がどないしたんか、それにどんな意味があるんか、メッセージは何か言うてへんかったんか?」
生徒たちは、今度は一斉に首を横に振った。
代表して奈央が南郷に言う。
「詳細は不明ですが、今、円が重要だと言うことは伝わってきましたわ」
再び教官たちが顔を見合わせた。
「なぜ、今なのかは、分かるかな?」
久慈の問いに、生徒たちは顔を見合わせた。
今度は奈々が、その問いに答える。
「今この形に注意が必要だと感じるんです。そうしないと、何か悪いことが起きると言うか、そんな予感がすると言うか……」
その時ひかりがパッと手を挙げた。
「私が感じるのは、丸が危険!ってことです。マリエちゃんは?」
「うん。丸に近づいてはいけないって」
陸奥、久慈、南郷が美咲に顔を向ける。
「山下センセ、どうやろ、アイさんに聞いてみてくれへんやろか?」
「分かりました。やってみます」
美咲はうなづくと、そっと目を閉じた。
そんな彼らの後ろでは、つけっぱなしになっているテレビでニュースが流れていた。
『現在、不発弾らしきものが発見された池袋一丁目一帯には規制線が敷かれ、一般人の立ち入りは禁じられています』
画面は、ヘリ、もしくはドローンによる空撮だ。その中心にはアニメイト池袋本店が建っている。それを目にした愛理が目を丸くして奈央に振り向いた。
「宇奈月先輩!あの場所!」
「そうですわね。私達の聖地、アニメイト池袋本店ですわ」
「不発弾って言ってるですぅ!」
またもやひかりが左手の人差し指をぴょこんと立てる。
「それはね愛理ちゃん」
「まだ何も聞いてないって!」
奈々の早めのツッコミだ。
「外交する人たちのことだよ」
「それは使節団!」
「両津くんはいい人だったよ……」
「後日談!」
「まだ死んでへんわ!」
「なーむー」
「お仏壇!」
「だから死んでへんって!」
もちろん、現在トクボが遂行しているブラックアイビス掃討作戦のことは、ここ都営第6ロボット教習所にも連絡が入っていた。世間的には不発弾処理の名目で行なうということも。
ニュース映像をチラリと見て南郷が陸奥に言う。
「陸奥さん、あれマズいんとちゃいますか?」
「真円が危険ということは……地下トンネルが?!」
教官たちの胸に、不吉な予感が広がっていた。




