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第420話 東池袋1丁目

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 東京都豊島区東池袋1丁目にそびえ立つ、ブルーの巨大な建造物。それがアニメイト池袋本店だ。全国47都道府県に124店舗を展開するアニメ・コミック・ゲーム の専門店「アニメイト」。その1号店こそが、このアニメイト池袋本店なのである。

 延べ床面積はなんと8,554.673平方メートル。東京ドーム約四個分に相当する広さ、地下二階から九階の11フロアに、劇場やカフェ、展示スペースなども含め、アニメやコミックの全てが溢れている。まさにオタクの聖地なのだ。

 ちなみに、アニメツーリズム協会の「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」に認定されているだけでなく、世界最大のアニメショップとしてギネス世界記録にも認定されている。

 このアニメイト池袋本店をランドマークとして、女子に人気の乙女ロードやアニメやアイドルのイベントが開催されるサンシャインシティなど、この地域には秋葉原や中野とはまた違ったオタク文化が根付いている。

 またその近くには、手塚治虫や赤塚不二夫ら多くの漫画家が若き日を過ごした木造アパート「トキワ荘」を再現した博物館「トキワ荘マンガミュージアム」も存在する。外観や玄関、階段、二階の居室、共同炊事場など、かつてのトキワ荘を忠実に再現し、昭和にタイムスリップすることが可能だ。

 つまりこの地域一帯は、アニメや漫画好きにとって、大切な聖地なのである。

 今その聖地には、所轄の池袋署によって規制線が張られていた。

 アニメイト池袋本店を中心に、半径約200メートルが黄色いテープで取り囲まれている。午後一時から始まった規制だが、それから30分後の現在、すでに規制線の中に一般人の姿はなかった。いつもなら、平日の真昼間であっても多くの買い物客や観光客で溢れかえっているこの地域が、まるでウソのように静まり返っている。最近では特に海外からの観光客、インバウンド需要も多く、そのために曜日や時間に関係なく人出が多い地域なのである。

 トクボの田中美紀技術主任にとっても、ここはかけがえない大切な場所だ。なにしろ彼女にとって推しがいる、今一番お気に入りの執事喫茶があるのだから。

「どうしてこんなところに、地下施設なんて作るのよ!」

 美紀は指揮車でそう毒づいた。もちろん、部長や他のトクボ隊員に聞こえないほどの小声である。だがその時、無線から後藤の声が響いた。

「主任さんよぉ、全部聞こえちまってるぜぇ」

 その声にはニヤニヤが含まれている。

「あ、すいません!無線のスイッチ、切り忘れてました!」

 慌てて無線をオフにしようとする美紀に、春樹からの質問が飛んだ。

「田中主任、どうしてこの地域にこだわるんです?」

 愚問である。

 トクボでは、彼女が極度のオタクであることは誰もが知っている。だからこそ、彼女はロボット技術に秀出ている、と言うのがトクボ内での共通認識だ。美紀はアニメオタクであると同時に、ロボットオタクでもあるからだ。

 春樹から追い打ちのように質問がやってくる。

「池袋に何か思い入れがあるんですか? 子供の頃に過ごした場所だとか?」

 思わず言いよどんでしまう美紀。

 そんな彼女に、後藤の声が届く。

「言っちまえよ。それがアンタのアイデンティティだろぉ? 俺は嫌いじゃないぜ」

 後藤の言葉に、トクボの皆が笑顔になる。

 意を決したのか、美紀がひとつ息を吐き、話し始めた。

「ここにはとてもステキな文化、執事カフェがあるのです!」

 恐ろしく早口だ。

「何百ものスワロフスキークリスタルで作られた大きなシャンデリア!ビクトリア朝の貴族の邸宅のような特注家具!静かなクラッシクと、花やレースなどの美しい装飾!」

 こうなると誰も美紀を止められない。

 白谷でさえ、少し微笑みながら彼女を見つめていた。

「そして優雅にドアを開けてくれて言うんですよ!お帰りなさいませお嬢様、と!そして始まるビクトリア時代のイギリスへの時間旅行!そして私は……」

「分かりました!分かりました!」

 そんな美紀を、あわてて春樹が止めた。

「主任にとって、この場所が大切だって伝わりましたから!落ち着いて!」

「私はいたって落ち着いています」

 美紀はそうキッパリと言った。

「そろそろいいかな?」

 そこへ白谷が割って入る。

「大丈夫です」

「では、今からいよいよ作戦行動に入る。一同、準備はいいな!」

「了解!」

 トクボのメンバーたちは、口々にそう叫んでいた。第420話 東池袋1丁目

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