第42話 ネーミングセンス
「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
「では、まずは私から始めましょう」
奈央が愛理に視線を向ける。
「他の皆さんも相談に乗ってくださいね」
そして愛理を見つめる。じー……っと。
「宇奈月先輩、そんなに見られたら……なんか恥ずかしいですぅ」
愛理がもじもじする。
「あら、泉崎さんじゃないのにですか?」
「どうして私が出てくるのよ!」
奈々の抗議に奈央が振り返ってニッコリとする。
「分かっているクセに」
今度は奈々が少し恥ずかしくなる。
「あれぇ奈々ちゃん赤くなってる〜。どうして?」
ひかりが小首をかしげる。
「エアコンの設定温度、高いのかなぁ」
「も、もういいわよ!」
「俺に惚れるとケガするゼ」
正雄がいつものマイトガイスマイルでニヤリと笑う。
「あんたに惚れるわけないでしょ!」
そんなミニコントが繰り広げられていると、奈央がパチンと手を打った。
「そうです!いいお名前がありました!」
全員が奈央を見る。
「ラブリーなな、なんてのはいかがでしょう?」
「うわぁ!それいいです!」
満面の笑顔の愛理。
「奈々は私だから!愛理ちゃんは私じゃないから!しかも愛理ちゃんのロボットの名前だからっ!」
奈々の抗議は完全に無視された。
「じゃ次、俺いこか」
南郷が名乗りを上げる。
「南郷センセ、生徒より後のほうがええんちゃいます?」
両津が皆の目を気にするように抗議する。
「ズビシッと一発で決めたるから時間かからん。なにわエースや!」
南郷のガッツポーズ。
「競走馬みたいな名前ですやん!」
「そうや。俺がこの前万馬券を、」
教室の全員がいっせいに南郷に視線を向ける。
「取りそこねた馬の名前や」
「取りそこねたんかーい!」
両津のツッコミが虚しく響いた。
「次は愛理いきまーす!」
そして奈央を見つめる。
「宇奈月先輩、私のロボットにとっても素敵な名前をくれたので、頑張りますぅ」
「いいお名前付けてくださいね」
「先輩の車種って、確かトヨオカF20ですよね」
愛理が思い出すように目を動かす。
「う〜ん……でも、先輩にすっごくお似合いの言葉って……あ!ありました!それはコストパフォーマンスです!略して、」
愛理がそこまで言った時、ひかりがうれしそうに割り込んだ。
「ケチンボさん!」
「違う!コ・ス・パよ!」
奈々の眉毛が三角になっている。
「君は怒ると眉毛が、」
「言わせないわよ!」
今日の奈々はずっとテンションが高かった。
「ほんなら次、俺がやります」
両津の手が挙がる。
「棚倉くんのマシンて、あれアメ車やろ?」
「そうさ、アメリカで作られた最強マシンさ」
ひかりの顔がパァッと明るくなる。
「飴でできてるなんておいしそ〜」
「その飴じゃないでしょ!」
今日の奈々は、一日ツッコミ役をやるつもりらしい。
「ややこしい名前は忘れてまうから、簡単なのがええかもなぁ。ストレートに、マイトガイ2なんてどうや?」
「2ってなんだ?」
「そりゃ、棚倉くんがマイトガイ、そしてロボットがマイトガイ2や」
正雄がちょっと考える。
「分かった。じゃあコバヤシマルで」
「分かってないじゃない!それにコバヤシって誰よ?!あんた棚倉じゃない!」
「俺はジョニーさ」
「もういい!」
「奈々ちゃんもっと顔が赤いよ」
そう言いながらひかりがエアコンのリモコンを手に取った。
「暑いんじゃないの!」
「棚倉くんがいいなら、俺はそれでええよ」
正雄のロボットはコバヤシマルに決定した。
「じゃあ俺だな。泉崎くん」
正雄が奈々を見つめる。
「ちょっと、そんなに見ないでよ」
「顔がまた赤くなった〜」
ひかりがまたエアコンのリモコンに手を伸ばす。
奈々はもうそこには突っ込まない。
「そうだな、君にピッタリな名前かぁ……」
正雄の目力に奈々がひるむ。
「デビルスマイル!」
「何よそれ?!」
「君のための素敵な名前さ」
正雄の歯がキラリと光ったような気がした。
「断るわ!」
だが、奈々の抗議に南郷が水を差す。
「あかんあかん、みんなで決めたルールや、守らなあかん」
「センセが一人で決めたルールやないですか!」
「そうですよ!私のロボットの名前がデビルスマイルなんて、」
「君は怒ると眉毛が、」
「だから言わせないってば!」
奈々ロボの名前はデビルスマイルに決まった。
『というわけで、奈々ちゃんは眉毛を三角にしていましたが、みんなのロボットの名前が決まりました。めでたしめでたし』
「めでたくないわよ!」
奈々は自分が突っ込みキャラであることを、初めて自覚したのであった。




