第418話 ブリーフィング
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「しかしゴッドって、すごいあだ名ですね!」
ブリーフィングルームでは、春樹の質問が続いていた。
「別に大した意味はねぇんだぜ。昔俺がいたダスクの砂漠じゃあ後藤って発音が難しいらしくってよぉ、いつの間にかなまってゴッドになったってわけさぁ」
そのいきさつを知らないトクボのメンバー数人も、聞き耳を立てている。
今回のブリーフィングには、トクボの主要メンバーが顔を揃えていた。
スーツ姿でガタイの良い男は部長の白谷雄三警視長だ。彼はいわゆるキャリア組だが、見た目で叩き上げのノンキャリに勘違いされることが多い。スーツやネクタイが少しヨレヨレで、まるで現場の刑事のように見えるからだ。四十代後半、柔道、剣道共に5段の有段者である。
キレイな直毛の黒髪ボブは、田中美紀技術主任だ。まだ二十代後半に見える彼女は、その技術力の高さからトクボにスカウトされて来た。前職は国営ロボット技術研究機関の研究者である。
キドロのチーフパイロット泉崎夕梨花と、その部下の沢村と門脇、そして、酒井弘行理事官と板東保則捜査主任の顔も見える。
そこにプラスして、警察官としては少々変わった経歴の男、ゴッドこと後藤茂文もいた。彼は15年ほど前、JICAの海外協力隊でダスク共和国にボランティアとして派遣されたが、事件に巻き込まれて行方不明となる。その後、ロボットパイロットとして傭兵となり、各国の紛争地帯で活動していたという。その詳細については、警察でも上層部のほんのひと握りの人間しか知らない極秘事項となっていた。
「すごいですね!それでゴッドさんはダスクで、どんな任務についていたんですか?」
春樹の問いに、後藤がニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「おめぇ、ずいぶんと核心をついた質問するじゃねぇかよぉ。命知らずなのかぁ?」
春樹の顔色が急に青ざめた。
「え? いや、それってどういう?!」
後藤の隣で、夕梨花が小さく吹き出した。
「ゴッド、もうそのくらいで許してあげてよ。彼に悪気は無いわ」
後藤が再びニヤリと笑う。
「そんなことは分かってるぜ。ちょっとからかってみたくなっただけさ」
「そうだと思った」
フフッと笑う夕梨花。
そんな二人に、春樹が不服そうに言った。
「ちょっと、ひどいですよゴッドさん!」
「まぁまぁ、ゴッドは気に入らない相手にはこんなことしないから」
夕梨花の言葉に、春樹が後藤に視線を向ける。
「そうなんですか?」
「どうだかなぁ」
トボケた口調で返す後藤。
「夕梨花ぁ」
困り顔の春樹に、夕梨花が肩をすくめた。
「子供じゃないんだから、ゴッドの言うことをそのまま真に受けなくていいからね」
「分かった……」
無理矢理に納得したような返事を返す春樹であった。
「みんな揃ったようなので、今回の作戦についてのブリーフィングを始める」
白谷の声に、一同が姿勢を正す。
「まずは田中主任から、現状の説明を」
「はい」
美紀は、手元のPadを操作する。すると、部屋の壁に設置された大型モニターに何かが映し出された。
「これは、マルタイの施設を監視するために設置したCCTVの映像です」
CCTVはClosedCircuit Televisionの略で、監視カメラシステムのことだ。トクボは先日の偵察任務時に、例の施設近くの岩場にCCTVカメラを設置した。そのステルス機能が上手く作動しているようで、現在もまだ施設の状況が映像と音で逐次届いている。
「CCTVってのは、監視カメラのことだぜ。中国のテレビ局じゃねぇぞ」
後藤がひそひそ声で春樹にそう言った。
「分かってますって!」
そう声を上げた春期に、白谷の叱責が飛ぶ。
「そこ、静かに聞きたまえ」
首をすくめる春樹。
「怒られちゃったじゃないですか!」
小声でそう後藤に抗議した春樹に、後藤がニヤニヤを深めた。
「子供じゃねぇんだから、静かに聞けよなぁ」
うきーっ!と悔しげな表情になる春樹を、後藤は横目で嬉しそうに見ていた。




