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第414話 食券の券売機

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「なんで丸やねん?」

 両津の質問に、ひかりとマリエは首をかしげた。

「はいっ!」

 ひかりが突然、両津に向かって手を挙げる。

「いやいや、手ぇ挙げんでも発言してええから!」

 両津が苦笑した。

「手を挙げて、横断歩道を渡りましょう!」

「ここ、横断歩道ちゃうから!」

「ほんまでっか?!」

 ひかりの大阪弁はいつもイントネーションが無茶苦茶だ。

「ほんまでっせ!」

 仕方がないので、両津もイントネーションが無茶苦茶な大阪弁で返す。

「マリエちゃんは、どうして丸なの?」

 奈々の問いに、マリエもひかり同様に手を挙げた。

「はい」

「じゃあ、マリエちゃん」

 奈々に当てられたマリエが笑顔になる。

「両津くんもああすれば良かったんだぜベイビー」

「そんなん分からんわ!」

 マリエはすっとく立ち上がり、自分の頭を指さした。

「丸が浮かんできた、て言うか、今も浮かんでる」

「そう!私も!」

 ひかりも立ち上がってマリエに同意した。ひかりは自分のおでこを指さしている。奈央がひかりをじっと見つめながら言った。

「もしかすると……また機械さんからの言葉……かもしれませんわ」

 それを聞いたロボット部の面々は、あわてて学食を見渡す。

「どれや?! どの機械からのメッセージや?!」

 もちろん学食には様々な機械が導入されている。

 食券の券売機、ウォーターサーバー、ドリンクの自販機。そして調理場には全自動調理器など、もっと様々な機械がある。

「さっぱり分かんないわよ」

 心音が肩をすくめた。

「大和は?」

「僕だってサッパリだ」

 そりゃそうである。ここには、と言うか現代社会の生活において、ロボットを含め機械はあらゆるところに存在する。そう考えると、あまりにも可能性が多すぎて、推理の糸口すら掴めない。

「あのぉ」

 今度は愛理が小さく手を挙げた。

「はい!伊南村さん!」

 両津があわてて愛理を指さした。

 今度は成功である。

「丸って円のことですよね?」

「そうやな」

「円と言うことは……やっぱり券売機じゃないですかぁ? お金入れるし」

「それや!」

 生徒たちは一斉に立ち上がり、食券の券売機へと駆け出した。そしてそれをぐるりと取り囲む。

 奈々がひかりに視線を向けた。

「ひかり、どう? 何か分かる?」

 券売機を見つめて、うーんとうなり始めるひかり。

 その隣に立ち、同様にうなりはじめるマリエ。

 ひかりが奈々にパッと顔を向けた。

「今日の日替わりA定食はサワラの西京焼きだよ!」

「両津くんにピッタリ」

 マリエが後を続けた。

 両津かガクッとズッコケル仕草を見せる。

「ちゃうねん!定食のおかずやなくて、券売機から何か声が聞こえへんかってことやねん!」

 再び券売機を見つめるひかり。しばらく考え込んでいたが、突然両津にパッと明るい顔を向けた。

「当たりが出たらもう一本!」

「それは隣のジュースの自販機や!」

 生徒たち全員がその自販機を見る。

 そして奈央が肩をすくめた。

「確かにしゃべってますわ」

 その時、自販機が再び大きな声を発した。

『当たりが出たらもう一本!』


 東京メトロ丸ノ内線と千代田線の「国会議事堂前駅」3番出口を出て左手へ進む。そしてすぐの交差点「総理官邸前交差点」を左折。15メートルほど進むと左手に見えてくる建物が内閣府庁舎だ。多くの官庁施設が集約・合同化されている中央合同庁舎第8号館の隣に位置している。住所だと東京都千代田区永田町一丁目。まさに日本の政治、そして官僚組織の中枢である。

 内閣府庁舎をエレベーターで6階まで上がる。

 このフロアには、一般人はおろかマスコミでさえ滅多に訪れることのない組織が本拠を構えている。

 内閣情報調査室、俗に内調と呼ばれる内閣の情報機関だ。日本のCIAといえば、その活動がなんとなく理解できるかもしれない。

 その一番奥に位置する部屋、内調国際テロ情報集約室の会議室のソファーに、二人の男が向かい合って座っていた。

「まぁ、お茶でもどうぞ」

 そう言うと内調の佐々木が、腰をおろしている陸奥に熱い緑茶を勧めた。

「いただきます」

 そう言うと陸奥は、まだ熱々の緑茶をひと口、ごくりと飲み込んだ。

 そんな陸奥に、佐々木が視線を向ける。

「今日はわざわざご足労いただいて、本当にありがとうございます」

「いえ、こちらも情報には飢えていますので」

 佐々木は、なるほど、と言う笑顔を浮かべた。

「トクボの白谷さんからの要請もありまして、現在我々が掴んでいる情報を、対袴田素粒子防衛線中央指揮所の皆さんとも共有しておきたいのです」

「それはありがたい。我々としても、生徒たちに関わる情報なら、すべてを把握しておきたいので」

 陸奥が柔らかな笑顔を佐々木に向けた。

「ですがその前に、」

 と、佐々木が前置きを口にする。

「これからお話する情報はまだまだ確定事項ではありません。推論を出ないものもありますので、その内容は指揮所内にとどめておいていただきたい」

 うむと、陸奥がうなづいた。

「もちろんです。我々も内調さん同様、政府組織の一部です。機密条項であることは理解しています」

「ありがとうございます」

 そう言うと佐々木は、急に声を落とすと、陸奥に顔を寄せた。

「まずは、ブラックアイビスについて、お話しましょう」

 会議室に、緊張の糸がピンと張り詰めた。

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