第413話 事情徴収の反省会
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「よーし!今から事情徴収の反省会や〜!」
両津の大声が、都営第6ロボット教習所の学食に響き渡った。
警視庁機動隊のロボット部隊・トクボ部から開放されたロボット部の面々は、教習所に戻るやいなやそのまま学食に集合している。
両津の叫び声にちょっと驚いたように愛理が首をすくめた。
「反省会って何をするんですかぁ? 私たち、反省するようなこと、しましたっけ?」
「そうですわ、両津さん。とても順調だったじゅないですの?」
奈央もちょっと不服そうだ。
あわてて両津が両手を左右に振る。
「いやいや、反省会と言うなのダベリや、ダベリ!」
それを聞いて奈々がフンと鼻を鳴らした。
「ダベるだけを反省会って、両津くんはいつも大げさね」
「まぁいいじゃないか!みんなでダベろうぜベイビー!」
愛理がそっと手を挙げる。
「あのぉ、ダベるって何ですかぁ?」
ひかりが左の人差し指をピンと立てた。
「それはね愛理ちゃん、人を呪わば穴二つ!よいしょ!よいしょ!」
ひかりのジェスチャーに、すかさず突っ込む奈々。
「それはシャベル! 愛理ちゃんが聞いてるのはダベる!」
「ぱくぱく!」
「食べる!」
「ここはハーレムじゃー!」
「はべる!」
「超能力少年が住んでる塔」
「バベル!」
「両津くんのギャグ」
「スベる!」
「なんでじゃー!」
今回のボケ合戦も、両津の叫びでひと区切りがついた。
それに気づいた奈央が、愛理に正解を告げる。
「くだらないおしゃべりを駄弁というでしょ? くだらない、価値がないと言う意味の駄に、弁舌の弁て書く。それを動詞化して駄弁る、になったのですわ」
ひかりの顔がパッと明るくなる。
「さすが両津くんだ!価値がない!」
「あるわい!」
そんなやりとりに少しイラッときたのか、奈々が両津に言う。
「で、何がしたいわけ?」
「要するに、トクボで聞いた話をまとめておきたいんや!」
なるほど。確かに夕梨花から聞いた話はとても興味深かった。それをロボット部全員の共通の知識にしておけば、いずれ役に立つ時が来るかもしれない。
「それは一理あるわね」
奈々のその言葉に、両津はホッと胸をなでおろしていた。
それからは、今日起こった出来事とトクボでの事情徴収について、時系列を辿って全員で思い出していった。
箱根山で彼らを襲ったロボット集団は、ダスク共和国の特殊部隊・ブラックアイビスであること。
彼らに力を貸してくれたのは、霧山工業が開発している新型ロボットのテストチームだったこと。
奈々の姉・夕梨花の話で、警察学校の仕組みがよく分かったこと。
そして、夕梨花の入学当時から、すでに暴走ロボットが発生していたこと。
「うーん、なんか嵐みたいな一日やったなぁ」
「まさに、俺は嵐を呼ぶ男なのさベイビー」
そう言った正雄に、奈々がツッコミを入れる。
「あんた、マイトガイなんでしょ?」
「それは小林旭さ」
「嵐を呼ぶ男は?」
「石原裕次郎さ」
「どっちもあんたじゃないじゃないの!」
奈々のマユ毛が三角になっている。
「そのマユ毛、久しぶりじゃないか!よおっ!久しぶりだぜベイビー!」
正雄が奈々のマユ毛にあいさつした。
「あんたねー!」
奈々が怒りを声にしようとした時、隣の両津から間の抜けた声が響いた。
「遠野さん、それ何やってるんや?」
一斉にひかりを見る一同。
ひかりは、学食の紙ナプキンをコヨリのようにひねり、それを並べている。
正雄に突っ込むことも忘れて、奈々もひかりに問いかけた。
「ひかり、何してるの?」
ひかりはコヨリ状の紙ナプキンを並べて丸く円を作っていた。
「何かよくわかんないけど、さっきからこの形が頭に浮かんでくるの」
「マリエちゃんも?」
そんな奈央の声に、今度は全員がマリエに目をやった。
「かきかき」
マリエは、学食の紙ナプキンを広げ、ボールペンで絵を描いていた。
丸だ。
奈々がマリエに言う。
「マリエちゃんも、丸が浮かんだの?」
「うん」
うなづくとマリエは、再び円を描き続けた。
いったい何が起こっているのか?
ロボット部の面々は、首をかしげつつ顔を見合わせていた。




