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第404話 真剣な模擬戦

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 正拳は、拳の正面を使う打撃である。基本として上段突き、中段突き、アゴ打ち、回し打ちなどがあり、空手の基本中の基本とされている。沙羅のキドロは右足で大きく踏み込み、同じ右のこぶしで夕梨花機の顔面めがけて上段突きを繰り出した。

『踏み込みの足と正拳の手が同じ右だ!あれを刻み突きと言う!覚えとけ!』

 大越教官が怒鳴るような大声で解説する。

 夕梨花はそのこぶしを、両腕をクロスすることで受け止めた。その瞬間沙羅は左足で素早くもう一歩踏み込むと、再び右腕で正拳を突き出す。

『踏み込む足とこぶしが逆なら逆突きだ!で、今の連続突きをワンツーと言う!これはテストに出るぞ!』

 その言葉を聞いた生徒たちは、それぞれコクピット内でノートやスマホを取り出して、あわててメモを取り始めた。

 二発目の正拳突きも、クロスした両腕で受け止めた夕梨花が無線に言う。

「教官、本気で私たちの模擬戦を、教科書代わりにするつもりらしいわね」

『夕梨花!そんなこと言うヒマがあったら、あなたこそ本気になりなさいよ!』

 そう叫ぶと沙羅は、後ろに引いていた右足のヒザを曲げ、一気に伸ばして蹴りを入れる。前蹴りだ。

 ガツン!と音を立て、クロスした夕梨花の腕に沙羅の蹴りが入った。だが、一瞬早く身を引き始めた夕梨花に、大きなダメージは無い。前蹴りは攻撃が直線的で、足が伸び切った瞬間にしか技が決まらない。そのため、ほんの僅かにタイミングがズラされたため、それほどの衝撃にはならなかったのである。

 夕梨花は逆に、沙羅の前蹴りの勢いを利用して後ろ受け身の体制でコロリと真後ろに転がった。そのままその回転の勢いを使って、すっくと立ち上がる。

『やるじゃない!』

 無線から、沙羅の声が届いた。

 同時に再び、教官の声が響く。

『今見たように、前蹴りはよほどの実力と自信がなければあまり使わない方がいい!初心者にはオススメできない技だ!君たちは、まずは回し蹴りを身につけるように!』

 その言葉が終わらないうちに、沙羅が次の動作に入った。

『じゃあ回し蹴りをやってやろうじゃないの!』

 沙羅は後ろ受け身で少し距離を取った夕梨花に、大ジャンブで肉薄する。そして右足を上げて大きくぶん回す。だが、それが命中する瞬間、夕梨花はヒザを曲げて重心を低くする、と同時に引き手を沙羅の太ももの付け根辺りに差し込み抱え上げた。

 すくい投げだ。

 夕梨花は沙羅を抱え上げ、車のハンドルを回すように思い切り投げ上げる。予想しない夕梨花の攻撃にバランスを崩した沙羅は、そのまま前方に投げ飛ばされた。ゴロゴロと地面に転がった沙羅は、懸命にバランスを取り戻して立ち上がる。そして再び構えを取った。

『はい!そこまでだ!』

 その時、教官の大声が二人の間に割って入った。

『泉崎、押坂!お前らのおかげで、いい授業になったぞ!がっはっはっは!』

 大笑いする大越教官。

 その様子に、夕梨花も沙羅も気が抜けたように苦笑いしてしまった。

「沙羅、今日はこのくらいにしておきましょう」

『そうね』

 二人共、肩をすくめている。

 二人それぞれのスクリーンにワイプが開き、春樹の顔が映った。

『いやぁ、すごかったぁ!最初はメモを取ろうとしてたんだけど、二人の戦いに夢中になって、そんなことすっかり忘れてたよ。あれ、何て言ったっけ? えーと、そうそう!ROBO-MMAの試合見てるみたいだった!』

 ROBO-MMAは世界的に最も人気のあるロボットの格闘技戦だ。人間が戦うプロレスやK1グランプリのようにテレビ中継され、子供たちはもちろん、大人にも大人気のコンテンツである。

 沙羅が春樹に毒づく。

『春樹何言ってんのよ、私たち真剣勝負してたんだからね!』

『ああー!それ、ROBO-MMAに対する冒涜だぁ!まるでロボエムの選手が真剣じゃないみたいじゃないか!』

『そんなこと言ってるんじゃないわよ!』

『ファンが聞いたら怒るぞぉ、例えば、確か大越教官も元ロボエムの選手だったんじゃなかったっけ?』

 夕梨花と沙羅の目が驚きに丸くなる。

「それ。本当?!」

『本当だ!がっはっはっはっは!』

 その会話に、大越教官の声が割って入ってきた。

『ええーっ?!』

 その言葉に、生徒たち全員の驚きの声が響き渡った。

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