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第40話 鎮圧

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「ちっ!」

 機動ロボット内に夕梨花の舌打ちが響く。

 彼女は予想外に苦戦していた。現在戦っている重機の動きが読めないのだ。

 デカブツの左アームが夕梨花のキドロに迫る。その腕の先には工事用のアタッチメントが取り付けられている。巨大なハサミのようなそれが、ぶんと力強く振り回された。思い切り姿勢を低くしてかろうじてかわす。そこを狙って右アームの巨大なこぶしが襲いくる。ガリガリっと、嫌な擦過音がアキバの街に響き耳が痛い。

 装甲を擦られた?

 これまで暴走ロボットの鎮圧は、夕梨花たちキドロ部隊の一方的な勝利がほとんどだった。だが、今回は少々様子が異なっている。夕梨花が押されているのだ。

 指揮車の美紀がいぶかしげにつぶやく。

「おかしい……アイツ、今までの暴走ロボットと動きが違う」

 白谷トクボ部長も重機から視線を離さない。

「そうだな……何というか……まるで人が操縦しているような……」

 だがそれは有り得ない。重機が無人なのは、事前にSATが確認している。

「なんだか……夕梨花さんの動きを予測して攻撃しているように見えます」

 指揮車内の空気がズッシリと重くなった。

 家庭の小さな愛玩用ロボットから今回のように巨大な工事用重機まで、ロボットの暴走は日々増加している。SITやSATでは対応できない場合も多く、そのたびにキドロ部隊にお呼びがかかるのだ。だがこれまでの暴走ロボは全て、何かのコントロール下にはない動きをしていた。まさに、暴れていたのである。

「あの機種には自動運転の機能があるのか?」

 後ろのトクボ隊員がキーボードを叩いて何やら検索する。

「インテリジェントコントロールモジュールは積んでいますが、完全に車体制御用だけで手動運転の重機です」

「どう思う?」

 白谷が目をディスプレイから離さずに美紀に聞いた。

「これは、何が何でもコントロールモジュールを持って帰らないと」

 研究者らしく、美紀は少し嬉しそうだ。

「泉崎!」

 無線機に白谷の声が飛ぶ。

「返事をしている余裕はないだろうから聞くだけでいい。これから沢村と門脇が単射で重機の足を破壊する。数秒でいい、射撃できるようアイツの動きを止めてくれ」

 無茶だ。でも手はある!

 夕梨花はうなづくと、キドロの肩を勢いをつけて重機にぶつける。ガゴンと重機の外板がヘコむ。左アームの巨大ハサミが再び襲う。夕梨花はそれを超硬合金の警棒で受け止めた。

「くっ!」

 夕梨花がうめく。

 キドロの操作レバーはロボットのマニピュレーターと感覚的に直結されている。人間の力を何倍にも増幅してくれる代わりに、受けた衝撃が大きいと、運転者の腕にそれが伝わってくるのだ。

 ハサミと警棒が、まるでつばぜり合いをしているかのようにバチバチと火花を散らす。だがもちろん、工事用のハサミでは超硬合金の警棒を切ることはできない。後はパワー勝負だ。

 重機が腰の回転関節を使って、夕梨花機を振り回そうとする。その時キドロが頭を無防備に重機の方へ突き出した。重機はそれを右の巨大なアームで鷲掴みにする。

「よし!」

 夕梨花機とがっぷり四つのように組み合った重機。

 重機の右マニピュレーターが圧力を増していく。さすが工事用だけあって、凶悪な力だ。キドロの頭部がミシミシと音を立て始める。夕梨花の乗るコクピットでは、赤い警告灯が点滅しアラーム音が鳴っていた。

『警告、頭部に異常な圧力を感知』

 コンピュータが感情のない声で告げる。

「今だ!」

 白谷の声が飛ぶ。

 二発の巨大な銃声。沢村機と門脇機が30mm機関砲を単射したのだ。

 巨大な重機の両足がヒザあたりで粉々に砕け散った。大音響を立ててヒザから崩れ落ちるようになる重機。その瞬間、夕梨花機は腰に付いているシース(さや)から巨大なダガーナイフを抜き、重機の右腕へひと振り。それがガランと地面に落ちた。

「泉崎さん!コントロールモジュールを摘出すれば動きが止まります!」

 指揮車から美紀が叫ぶ。

「了解!」

 夕梨花は返す刀でダガーナイフを重機の胸部に突き立てた。もがくように体をゆする重機。そのままぐいっとナイフをえぐるように回し、ディスプレイのオーバーレイに従ってコントローラー部分を切りとっていく。左マニピュレーターでそれを掴んで引き出す。ぶちぶちと切れる多数のコード。

 ガタガタと揺れていた重機の巨体が、プスンと音をたてて止まった。

わーっ!と、指揮車の中で歓声が上がる。

「田中くん、アレの分析を急いでくれ」

 白谷の言葉に、美紀はホッとしたような顔で返事をした。

「了解です」

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