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第4話 格納庫

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。

「センセ、なんや外がやかましいですけど」

 両津良幸は奈々やひかりとは違うクラスの生徒だ。いや、始めは同じクラスだったのだが、この教習所の教官の一人、南郷良一のわがままで途中でクラス替えさせられたといった方が正確だろう。

「祭りのみこしでも出てるんとちゃうか。そんなことはほっといて、今日も特別授業を始めるで!」

「みこしって、ここロボット教習所ですよ。しかも、周りは何も無い埋立地じゃないですか」

「男は細かいことにこだわったらあかん。もっとどっしりかまえんかい」

「どっしりて……」

 2人の大阪弁が巨大な格納庫に響いている。南郷は何やらリモコンのような物を取り出すといじりはじめた。

「両津君はめっちゃ得なんやで。他の生徒と違って俺にマンツーマンで教えてもらえるんやから」

「それは感謝してます。でも、何で僕が選ばれたんですか?」

 南郷は意味ありげに二ヤリと笑った。

「知りたいか?」

「もちろんです!僕には他の生徒には無い能力が眠ってるとか……それを引き出すために、センセが選んでくれたとか!」

「ちゃう」

「そんな……一言で片づけんでも。……じゃ、何で?」

「簡単や。両津君大阪出身やろ。俺もそうやからな〜、きっと気が合うやろ思てな」

「それだけですか?」

「それだけや」

 格納庫を沈黙が支配した。両津はあきれかえって口をポカンと開けたままだ。

「何アホみたいに口開けてんねん。カラスがフン落としよるで」

「格納庫にカラスなんかいませんよ!」

「まぁええがな。さあ、特別授業や!」

 両津はあきらめたように大きくため息をつくと、南郷の話を聞くことにした。

「で、今日の授業は何ですの?」

「よう聞いてくれた!今日は俺が持てる知識と技術の全てをつぎ込んで完成させた、全く新しい教習用ロボットのテスト運転や!」

「テスト運転て……それ、授業やないですやん」

「その通り!」

 南郷はうれしそうに笑った。

「いくらテスト運転をやっても、両津君はロボット免許を取れる訳ではない」

「そんなアホな……ちゃんと授業やって下さいよ!」

「あわてたらあかん。よう考えてみぃ、このテストが成功すれば、日々の教習に無茶苦茶役立つ新型ロボットの登場っちゅー訳や!そうすれば、両津君でもいつか免許を取れる日がきっと来る……どや、やる気がモリモリ湧いてきたやろ!」

「はぁ……」

 両津が返答に困っているのを尻目に、南郷は手の中のリモコンをピコピコといじっている。すると突然、格納庫の奥から大きなエンジン音が響き始めた。

「センセ、何ですか、この音!」

「だから言ってるやろ。俺の最高傑作が登場するんや!い出よ、ウルトラスーパーデラックスハイパワーロボット〜っ!」

「長い名前ですね〜」

「縮めてパワーロボや」

「最初からそれだけでええですやん!」

「物事には順序っちゅーもんがあるんや。正式名称があってこその略称なんや」

 ゆっくりと歩くロボットの足音が、格納庫の奥から両津達の方に近づいてくる。

「センセ……これ、普通の教習用ロボットやないんですか?」

「アホ言うたらアカン!よぅ見てみぃ……ほら、両津君のちっこい目をまんまるにして見るんや」

 両津達の目の前に、無造作に突っ立っているロボット……いくら目を皿のようにして見ても、普通の教習用ロボットである。

「わからんなぁ。これ、他のヤツと一体どこが違うんです?」

「両津君ともあろう者がわからんか?」

 両津はもう一度目を大きく見開いて、そのロボットの足先から頭まで、食い入るようにして見渡してみた。だが、結果は同じだった。

「僕にはちょっと……」

「情けないなぁ〜。こんな簡単なことがわからんのか」

「すんません」

「俺なら一言で言えるぞ〜!こいつはなぁ」

「こいつは?」

「中身がちゃうんや!」

「中身って……じゃあ、外見は」

「他のと同じや」

「じゃあ目をまんまるにしても分からなくて当然やないですか!」

「おお、気づいたか。さすが両津君!やっぱり俺の授業はタメになるなぁ〜」

 またもや両津の大きなため息が巨大な格納庫に響きわたった。


 ひかりの乗った火星大王はまだ暴れていた。A級ライセンスコースを楽々こなしているエリート中のエリート、奈々の攻撃をことごとくハズしている。

「いいかげん、おとなしくしなさいっ!」

「そうしたいんだけど、勝手に動いちゃうのよ〜!」

「だったら最後の手段よ……禁断の必殺技、泉崎ボンバー!」

 両手をそろえた奈々機は、目にもとまらぬ早さでダブルパンチを繰り出した。

「ひえぇぇぇ〜〜〜!」

 間一髪、ジャンプしてそのパンチをよけるひかり機。

「え?飛んだ?」

 空中でひらりと一回転すると、ひかり機は奈々機にキックをくらわせた。

「ひかりキィ〜〜〜ック!」

「何すんのよ〜!」

 両腕を顔面の前でクロスしてそのキックを受ける奈々機。だが、空中回転でついた勢いは奈々機のパワーを上回っていた。後ろに吹っ飛ぶ奈々機。

「奈々ちゃんごめ〜ん!つい……」

 受け身の体制で転がり、その勢いですっくと立ち上がる奈々機。手がプルプルと震えている。奈々の手の震えが、ハンドルを通じてロボットにまで伝わっているのだ。

「遠野さん……もう容赦しないわよ〜!」

 突然奈々機の動きが速くなった。まるで暴走ロボットがもう一台増えたかのように無茶苦茶な動きでひかり機に飛びかかっていく。奈々は切れた……。

「ひぇ〜〜!奈々ちゃんゆるちて〜!」

「がおぉぉ〜〜〜っ!奈々ちゃん奈々ちゃんて、いつ誰がちゃん付けを許したって言うのよ!」

 まるで猿のような奈々機の顔面ひっかき攻撃!

「きゃ〜〜〜っ!だって同じクラスだもん!」

「それは偶然!」

 奈々機のはがいじめ締め上げ攻撃!

「うぐぐ〜〜〜!それに寮だって同じ部屋だし……」

「それも偶然!」

 そのままの体制で、プロレスのようにバックブリーカーへ!

「とりゃぁぁ〜〜〜っ!」

「ありゃりゃ〜〜〜っ!」

 さかさまになるひかり機。コクピットのひかりも逆さになり、髪が逆立つ。あわててスカートを押さえるひかり。そのまま落下して、

 どご〜〜〜ん!

「ちゃん付けは友達にしか許さないのよ!」

 奈々は、まるで地の底から聞こえて来るような低い、しかもけして反論を許さないきっぱりとした口調で言い放った。

「ふ〜〜ん……じゃ、私奈々ちゃんの友達になる!」

「へ?」

 予想外の返事に一瞬虚を突かれてしまった奈々……決まった!これで反論できまい!そう思っていただけに、ひかりの言葉に全身の力が抜けていく。

「友達になるって……そう言うことじゃなくて!」

「なくて?」

 奈々の目の前のモニターに、まるで子供のような表情をしたひかりが映っている。何かステキなものを期待するように、でもそれが何なのかさっぱり分かっていないようにキョトンとして。

「あんたって子は……」

「何?何なの奈々ちゃん」

 しっかりとひかり機を締め上げていた奈々機の力が抜ける。

「どうして遠野さんがA級ライセンスコースに入学できたのかしらね……さっぱりわからないわ」

「うん、私も!……あ、あら?」

 奈々機の束縛を離れたひかり機が、再びゆっくりと動き始めた。

「遠野さん?」

「いや……あの……私じゃなくて」

 シャキーーン!

 ものすごい勢いで立ち上がるひかり機。あまりの勢いに、きおつけの姿勢のまま2メートルほど飛び上がってしまった。

「奈々ちゃん、私何もさわってないよ!」

「まさか、また暴走なの?」

 再びあさっての方角へ全力で走り始めるひかり機。

「ひぇぇ〜〜〜!またまた誰か止めてくださ〜〜〜い!」

「遠野さん、待ちなさい!」

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