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第399話 キドロの最新装備

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 トクボ本部の指揮所で、技術主任の田中美紀はキドロから送られてくる映像を真剣な眼差しで見つめていた。だが実は、彼女の心中は穏やかではなかった。なぜなら、マップ上で確認できる二機のキドロの位置に問題があるのだ。キドロが発見した、ダスク共和国特殊部隊の施設は、池袋の繁華街の真下にある。だが美紀の心配はそれだけではなかった。その地上には、彼女にとっての聖地「乙女ロード」があるのだ。

「よりによって、どうしてこんな場所を選んだのよ」

 美紀は毒づくようにそうつぶやいた。

 男性オタクの聖地が秋葉原なら、女性オタクの聖地は池袋にある。コミック、アニメ、ゲーム等の専門店や、執事喫茶、コスプレショップ等が200メートル以上にわたって軒を連ねている。それこそが「乙女ロード」である。そのランドマークとなっているアニメイト池袋本店は2023年に売り場面積を2倍に拡張する大型リニューアルを実施、10万点以上もの漫画やアニメのグッズを揃えるようになった。そんな乙女ロードの発信力に呼応するかのように、池袋ではマンガ・アニメ関連施設がいまだに増殖を続けている。そして年間を通して、コスプレイベントや同人誌即売会など、多彩なオタク関連イベントが展開される場所でもあるのだ。オタクの美紀にとって、聖地と言うより天国なのである。

「次の休みには執事喫茶に行く予定なのに、今ここで何かあったらパァになるじゃない。やっと予約取れたのに。ブラック・アイビスのこと、一生恨んでやるから」

 そんなつぶやきが聞こえたのか、白谷が美紀に視線を向けた。

「それは大変だな」

「はい!」

「では、そうならないよう今日のところは手を出さないでおくか」

 美紀の表情が明るくなる。

 もちろん、白谷の判断はそんな理由からではなかった。あの場所の直上は、恐らく多くの買い物客で溢れているだろう。何の準備もなく突入すれば、一般人に犠牲が出る可能性も考えられる。もちろん、美紀もそれは十分に理解していた。

 つまり白谷は、部下の趣味や心情にも配慮してくれる理想の上司なのである。

「では、CCTVシステムを?」

「設置して、しばらく様子を見ることにする」

 そのまま白谷は、無線に向かって司令を出した。

「白谷だ。その場所で戦闘になれば、地上への被害が考えられる。今日のところは手を出さなくていい」

「その代わり、CCTVを設置してください」

 CCTVは「ClosedCircuit Television Camera」、要するに監視カメラのことである。

 現在のCCTVカメラには、簡易的なものではあるがすでにダイナ通信システムが組み込まれている。地下トンネルからの映像を、地上の本部で確認し続けることが可能となっていた。

「了解」

 沢村機が、腰あたりに取り付けられているボックスから30cm四方ほどの大きさの装置をつまみだす。ロボットの指で側面のスイッチを操作すると、三本のカギ爪のようなものが飛び出した。これで設置場所に固定するのだ。

 沢村機が直方体の頭の部分をぐっと押すと、ガキッと爪が地下トンネルの壁面に食い込む。しかしこのままでは観察対象者に発見される可能性がある。次に門脇機が同様に、腰のボックスから何かを取り出した。ちょうどCCTVカメラに覆いかぶさるサイズの、やはり直方体の物体だ。門脇機はそれをそのままカメラに被せると、コクピットでスイッチを入れる。するとカメラはその場から、かき消すように姿を消した。

 いわゆる光学迷彩装置である。

 あまり大きなものや動くものを完全に隠せはしないが、数十センチ程度のものならほぼ完璧に姿を消すことが可能だ。しかもCCTVカメラは動かない。よほど近くで観察しない限り、発見することはできないだろう。しかもこの装置を使用すれば、単に肉眼で見えなくなるだけでなく、近紫外線、近赤外線、そしてサーモグラフからも見えなくなるのだ。

 この光学迷彩にはカナダの軍服メーカー「ハイパーステルス・バイオテクノロジー社」が開発したマテリアルが使われている。同社はこの技術を「Quantum Stealth(量子ステルス)」と名付け、軍事分野で大きな市場占有率、マーケット・シェアを誇っている。ウワサでは、数年中にはロボット一機をすっぽり覆って隠してしまえる光学迷彩装置を発売するとも言われている。

 そんなものをテロリストたちが利用したら大変なことになる。

 美紀はこの装置を目にする度にそう思い、いつも深いため息をついてしまう。だが、味方が利用すれば非常に有用な技術なのは確かである。全ての物事には裏と表がある。どんな道具も使い方次第で善にも悪にもなり得るのだ。

 ついそんなことを考えてしまう美紀なのであった。

「光学迷彩、設置完了」

「指揮所、映像と音声は届いていますか?」

 沢村の問いに美紀が答える。

「大丈夫です。ダイナ通信のおかげで、どちらも実に明瞭です」

「了解」

 沢村が安堵の息をもらした。

 配備されてまだ間もないダイナ通信関連の機材である。CCTVシステムも光学迷彩も、実戦で使うのは今回が初めてなのだ。

「では、キドロ02、03共に帰還します」

 そう言うと沢村機そして門脇機は、後ろ髪を引かれながらもその場を後にした。

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