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第39話 市街戦

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

 夕梨花たち三台のキドロの後方に、一台のバンが停まっていた。ハイエースタイプのロング仕様だ。機動隊特科車両隊所属のロボットチーム、トクボの指揮車である。

「では、行きましょう」

 夕梨花の静かな声が、指揮車の無線機に入電する。

「了解した」

 答えたのはスーツ姿のガタイの良い男。トクボ部長の白谷雄三警視長である。彼はいわゆるキャリア組だが、見た目で叩き上げのノンキャリに勘違いされることが多い。スーツやネクタイが少しヨレヨレで、まるで現場の刑事に見えるからだ。四十代後半、柔道、剣道共に5段の有段者である。

「街なかだ。できるだけ射撃はひかえるように」

 指揮車内に設置された3つのディスプレイに、キドロのメインカメラからの映像が映し出されている。

「分析したいので、なんとかコントローラー部分を持ち帰ってもらえるとありがたいです」

 白谷の隣でディスプレイを見つめている白衣の女性がそう言った。

 田中美紀。トクボの技術主任だ。黒髪ボブ、キレイな直毛である。まだ二十代後半に見える彼女は、その技術力の高さからトクボにスカウトされて来た。前職は国営ロボット技術研究機関の研究者である。

「了解。ベストを尽くします」

「よし、泉崎が格闘戦で相手の動きを止めろ。沢村、門脇両機は距離をとって補佐。いざと言う時は単射でコントロール部を仕留めろ」

 白沢の命令に《了解!》と、3つの声が指揮車内に響いた。

 キドロは本来市街地でのCQB(クロース・クォーター・バトル、近接戦闘)を目的として開発されたものだ。格闘戦は得意なのである。

 白谷が腕組みをして隣の美紀に視線を向ける。

「どう思う?」

「重機の制圧はやっかいですけど、泉崎さんなら大丈夫だと思います」

 美紀はディスプレイを見つめたままだ。

「でも……あの重機、なんて場所で暴れてるのよ。アニメイツの近くなんて」

 そうつぶやいた美紀は……オタクだった。

 指揮車の白谷、美紀、そして数人のトクボ隊員が見守る中、重機が駐車中の自家用ロボットの右腕をつかむ。それをぐいぐいと引き上げると、悲鳴のように自家用ロボットがきしみ始めた。重機はもう一方のアームで自家用ロボのボティを鷲掴みにする。ぐちゃんと嫌な音が響いて、自家用ロボの右腕が引きちぎられた。

「沢村さん、門脇さんはここで。私はマルタイの後ろから仕掛けます」

 重機の三方向から、囲むように近づいていたキドロの二台が動きを止める。

 夕梨花のキドロが特殊警棒を抜いた。キドロの格闘戦用に設計された特別製だ。三段の伸縮式で、材質は超硬合金。鉄やステンレスよりも硬く、ダイヤモンドに次ぐ硬さを誇っている。超硬合金は、炭化タングステンや炭化チタンなどの金属炭化物の粉末に、コバルトなどを加えて焼結して作られる。しかもキドロ用警棒は、そんな超硬合金の中でも通常より弾性変形しにくく、熱変形が小さい微粒子超硬で作られていた。要するにとことん丈夫なのだ。

 重機に近づいていく夕梨花。まだアチラさんはそれに気付いていない。重機を捉えているディスプレイに、その内部構造図がオーバーレイされている。コントローラー部がチカチカと赤く点滅していた。

 重機まであと数メートルに近づいた時、重機がそのボディをぐるりと回転させながら自家用ロボの右腕を夕梨花に投げつけてきた。だが、出動前にあらかじめ重機の設計図をチェックした夕梨花は、その回転式関節を把握していた。伸ばした特殊警棒で、飛んできた自家用ロボの右腕をはね飛ばす。

 そのまま勢いに乗って重機に肉薄した。重機がこぶし状の右腕を突き出して夕梨花機を殴りにかかる。機体を右によじってそれをかわし、引いた右のアームで逆に重機をものすごい勢いで殴りつける。

 ドゴンと鈍い衝撃音がアキバの街に響き、重機の平らな正面が大きくヘコむ。だが人の運転ではないそれの動きは少しも鈍らない。

「確かにやっかいなヤツだな」

 指揮車で白谷がつぶやいた。

「可能なら脚部を撃って動きを止めるのはどうでしょう」

 美紀の提案にふむと、しばし逡巡していた白谷が無線に告げる。

「沢村、門脇、マルタイの足を狙えるか?」

《いけます!》同時に答える。

「では沢村は右足、門脇は左足を単射。泉崎に当てるなよ」

《了解!》二人の声が指揮車に響いた。

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