第381話 新型か?
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「まもなく明治通りです!」
トクボ指揮車内に、部員の声が響いた。
四台のキドロトランスポーターを従えた指揮車は現在、靖国通りを爆走していた。非常時のため赤いパトランプを回し、けたたましくサイレンを鳴らしている。これならトクボ基地のある曙橋から戸山公園まで、およそ10分ほどで到着できるだろう。
その時、先行させた監視カメラ内蔵のドローンからの映像が前面ディスプレイに映し出された。
「通報通り、飛び道具は装備していないようです」
田中美紀技術主任が画面を確認してそう言った。
指揮車では、AIによる画像解析が可能となっている。三機のドローンからの映像を絶えずスキャンし、その結果がデータとして表示されていた。
「黒い機体は、刀と呼ぶには短いですが、ナイフよりは長い刃物を所持しているようです。あれは……」
「守り刀でしょうか?」
夕梨花からの無線が指揮車に届いた。
「いえ、そうとは限りませんが、可能性はありますね」
白谷部長の顔がゆがむ。
「つまり、あの黒い一団は黒き殉教者のロボットの可能性があると言うことか」
「そうですね、違うとは言い切れません。ただし、これまでに確認された彼らの機体とは違っています。データベースと照合してみましたが、あの形状の機体の情報はありませんでした」
「新型か?」
「その可能性もあるでしょう。引き続き陸自と公安のデータベースも参照してみます」
黒き殉教者は、人類が宇宙に出ることに異を唱える国際テロ組織だ。手段を選ばないその破壊活動は、世界中で恐れられている。しかもトクボ部とは浅からぬ因縁のある組織なのだ。これまでに何度も戦闘となり、そのたびに取り逃がしている。特に夕梨花にとってその幹部アヴァターラとは、何度も相まみえながらも勝負がついていないのである。
その時、白谷と美紀の後ろに座るトクボ部員の声が響いた。
「明治通りに入ります!戸山公園はすぐに見えてきます!」
「あれ? あの機体は……」
ディスプレイを見つめていた美紀が不思議そうな声を上げた。
「泉崎さん、あれって?!」
「はい。妹のロボットです」
無線から聞こえた夕梨花の言葉に、指揮車内に緊張が走る。
白谷が低くうなった。
「と言うことは、あの民間ロボットたちは……」
「都営第6ロボット教習所の生徒たちだと思われます」
美紀の言葉に、白谷の目が丸くなる。
「教習用ロボットでテロリストとやりあっているのか?!」
危険である。より急がねばなるまい。
指揮車内の緊張が高まっていった。
「棚倉キーック!」
正雄のコバヤシマルが、箱根山に登ろうとしていた黒ロボ一機にキックをくらわせた。ふいを突かれた黒ロボはバランスを崩し隣の同型機に激突、二機が絡み合うように吹き飛んだ。
「真打ち登場や!まぁ、真打ちはボクやなくて棚倉くんやけど」
こんな状況の中、愛理の可愛らしい声で疑問が届く。
「しんうちって何ですかぁ?」
「それはね愛理ちゃん、みんなが大っ嫌いなテストのことだよ」
「それは抜き打ち!愛理ちゃんが聞いたのは真打ち!」
奈々は一機の黒ロボに応戦しながらそう突っ込んだ。
「とってもおいしいお弁当!」
「幕の内!」
「父のかたきーっ!」
「仇討ち!」
「いきなりキスしちゃうぞ!」
「不意打ち!」
「こそこそっと」
「耳打ち!」
「チッ!」
「舌打ち!」
ひかりのボケと奈々のツッコミが、黒ロボの攻撃をかわしながら続いていた。




