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第38話 トクボ

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「現着!」

 黒髪ショートの女性が、搭乗しているロボットの無線機に叫んだ。

 泉崎夕梨花。奈々の7歳上の姉である。警察内部で「トクボ」と呼ばれる、警視庁機動隊特科車両隊所属のロボットチームの一員だ。

 元々機動隊は、警察署の警察官では対応できない大規模な事件や災害に対応する警備部隊として発足された。だが、近年増加の一途をたどっているロボットによる犯罪やテロ、そして謎の暴走には、これまでの装備では到底対応できない。そこでトクボである。それまでテロ等の鎮圧に使われる放水警備車の運用をメインとしていた特車(特科車両隊)内に、ロボットチームが作られたのだ。

 夕梨花は警視庁警察学校を抜群の成績で卒業していた。通常、警察学校のカリキュラムは、大卒の場合6か月、それ以外の場合は10か月で終了する。だが、高校入学と同時に、すでにロボット免許のA級ライセンスを取得していたこともあり、彼女は特例として大卒と同じ6ヶ月での卒業となった。

「現場の避難はどうなっていますか?」

 彼女の問いに無線機の声が答える。

「完了しています!」

 夕梨花のマシン、「キドロ」と呼ばれる機動ロボットは、秋葉原の中央通りに立っていた。三台のキドロは全て同型だ。その武骨なシルエットは、まさに質実剛健な印象を見る者に与えるだろう。

 いつもは人で溢れている電気街。だが、夕梨花たちが見つめるその先には、観光客も、客引きのメイドの姿も無かった。動いているのは巨大なロボットだけである。

 自家用とは違い重機と呼ばれる工事用のデカブツだ。自家用ロボットの倍以上の大きさで、腕力は数倍という非常にやっかいなシロモノなのだ。そいつが中央通りの少し末広町寄りで工事中のビルの前にいた。そして路上駐車の自家用ロボットを破壊している。まさに暴走である。

「SATとSITの皆さんは、後退してください。あいつを刺激するとマズいことになりそうなので、できるだけゆっくりとお願いします」

 夕梨花の声に緊張が混じっている。

 SITは警視庁刑事部に所属する、誘拐や人質を取った立てこもり等の事件を専門に扱う特殊班であり、各都道府県警に同様のチームが存在する。犯人が説得に応じない場合は強行突入するが、あくまで人質救出と犯人の生け捕りを目指している。

 一方のSATは警備部に属する特殊部隊で、東京の警視庁、大阪府警、北海道警、千葉県警、神奈川県警、愛知県警、福岡県警、沖縄県警の、8都府県警のみに設けられている。犯人の制圧を主な任務とし、SITと違って説得や交渉はしない。今回の場合、初動ではロボットの暴走なのか、運転者の犯罪なのかが判明していなかったため、両チームの出動となっていた。

「ここからは我々が対処します」

 そんな夕梨花の言葉に少し安心したのか、SAT隊長の声に安堵の色がうかがえた。

「ありがたい。我々の装備じゃ太刀打ちできそうになくて思案していた所だったのです」

 SATの装備のメインはハンドガンと短機関銃。今構えているのは、ドイツのヘッケラー&コッホ社が設計した短機関銃MP5だ。命中精度が高いため、対テロ作戦などでは非常に有用な装備である。だが、重機相手では分が悪すぎる。

 一方夕梨花たちが乗る機動ロボット、キドロの装備は強力である。30mmの大口径機関砲。戦闘用ではない重機のボディであれば簡単に貫通する。しかも連射だけではなく一発撃ちの単射が可能なスグレモノだ。陸自の用語に「ア・タ・レ」というのがある。「ア」は安全装置、「タ」は単発、「レ」は連発で、銃に付いている小さなレバー操作で切り替えが可能。キドロが右腕に持つ大型機関砲にも、同様の機能があった。

 SATとSITの包囲の輪が、少しずつ広がっていく。

「では、行きましょう」

 夕梨花の静かな声が無線機に向かって放たれた。

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