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第379話 箱根山決戦

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「あった!これやこれや!」

 箱根山のほど近く、深い緑に覆われた石碑を指差して両津が無線に叫んだ。

 奈々たちに登頂を許されなかった両津と正雄は、それぞれロボットに乗ったまま箱根山近くの旧跡を訪ねていた。

「ほら、陸軍戸山学校の記念碑て書いてある」

 ロボット部で訪れている戸山公園は、明治維新の後第二次世界大戦終結まで、陸軍戸山学校の敷地であった。今では緑地となり、その面影はほとんど見つからない。だが、唯一その形をとどめている旧跡が残っている。

「これなんや?!」

 突然大声を上げる両津。

「何があるんだい?ベイビー」

 正雄がすぐに両津の元に駆けつける。

「ひゅー!」

 まるで口笛のような音を発音する正雄。

 二人が見下ろす広場には、まるで円形劇場のような舞台跡が姿を現わしていた。

「石碑の横に何か書いてないかい?」

「えっと、これやな……。ここは陸軍戸山学校軍楽隊が演奏場としていた野外演奏場跡である。現在でも演劇の公演に使われることがある……やって!すごいなぁ」

「まさに名所旧跡だぜベイビー」


「箱根山って、やっぱり人気だね!」

 山頂にいるひかりが、ロボットの右手でふもとの方を指差した。

 そこには、見慣れないロボットたちが数台、箱根山を取り囲むように立っていた。

「あの人たちも観光ですかぁ?」

 愛理が首をかしげる。

「それはね愛理ちゃん、こーんな大きな口で提灯ぶらさげてるお魚さんだよ」

「それはあんこう!愛理ちゃんが言ったのは観光!」

「はーい、新しいお友達を紹介しまーす!」

「転校!」

「両津くんみたいにのろまな電車は、」

「どんこう!」

「両津くんはいつか警察に、」

「連行!」

「JKがお小遣い稼ぎに、」

「えんこ……」

 奈々がそこまで行った時、奈央が思い切りそれをさえぎった。

「ストップですわ!泉崎さん、それ以上言ってはいけませんわよ」

 奈々がハッとする。

「ひかり!なんてこと言わせるのよ!」

「てへぺろ」

「テヘペロ」

 マリエが復唱する。

 デジャヴである。

「でもあのロボットたち、なんだか様子がおかしいですぅ」

 愛理の言葉に、一同ふもとの一団に目を向けた。

 真っ黒な乗用ロボットが全部で六台。全て同デザインの機種だが、ひかりたちの記憶には無いマシンだ。なぜか箱根山を等間隔で取り囲むように立っている。いや、ゆっくりと登り始めたようだ。

 心音がいぶかしげな声を漏らす。

「なによ。ここはもう満員なのに、まだ上がってくる気なのかしら?」

 大和も首をかしげる。

「言ってあげた方が良くないかな? もう上がれないって」

 その言葉を聞いたひかりが、外部スピーカーで思い切りふもとに向かって叫んだ。

「真っ黒な皆さーん!箱根の山は天下の険ですよーっ!」

「いや、今はそれじゃないから!」

 奈々はひかりに突っ込むと同時に、ふもとの一団に向かって声をかける。

「すいませーん!今山頂は満員なので、もうしばらくお待ち下さーい!」

「それだ!」

 ひかりの火星大王が右手でサムズアップ、ワイプの彼女は満面の笑顔である。

 だが、黒い一団から返事は無かった。それどころか、包囲の輪を縮めるようにゆっくりと昇ってくる。

 その様子を見ながら、ひかりが首をかしげた。

「聞こえてないのかな? スピーカーじゃなくて、ロボット標準無線で言ったほうがいいのかな?」

 その意見を奈々が即座に却下した。

「どのチャンネル使ってるか分からないでしょ?」

「22番」

「それは教習所のチャンネルよ!」

「てへぺろ」

「テヘペロ」

 デジャヴである。

「あら?」

 その時奈央が、何かに気づいたのか訝しげな声を漏らした。

 皆、奈央に機体を向ける。

「どうしたの? 奈央」

 奈々の問いに、奈央が黒いロボットを指差した。

「よく見てください」

「なになに?」

「ナニナニ?」

 ひかりとマリエもスクリーンに目を凝らす。

「あのロボットたち、腰のあたりに大きなナイフみたいなものを装備していますわ」

 ハッとする一同。

 奈央の言う通りだ。ゆっくりと昇ってくる六台のロボット全てが、巨大なナイフ、あるいは棍棒のように長い物を装備している。

 奈々がハッとして奈央を見つめた。

「あれってもしかして、三井さんが警戒してた?!」

「そうかもしれません」

 三井良子は、奈央付きのメイドであると同時に護衛役でもある。ここ数日、身辺警護のため奈央に同行していた。だが、奈央が地底探査という特別任務中のため、今日はここに良子の姿は無い。

「狙われましたわね」

「そうね。探査任務がバレてるってことね」

 奈々がニヤりと笑い、皆に指示を出す。

「みんな、できるだけ山頂広場の中央に集まって!あいつらは私がなんとかする!」

「奈々ちゃん!私も頑張る!」

「わたしも」

 ひかりの火星大王とマリエのリヒトパースも、一歩前へ出た。

「じゃあボクも!」

 大和もうなづく。

「日頃の教習の成果を見せてあげましょ!」

「ラジャー!」

「らじゃー!」

 ひかりとマリエの声が揃った。

「えっと、らじゃーって何ですかぁ?」

 緊張の場面に、愛理の可愛らしい声が割り込んだ。

 戦闘の構えをとっていた火星大王が直立して愛理に向き直る。

「それはね愛理ちゃん、ご飯を炊く機械だよ」

「それは電子ジャー!」

「採寸の時に測る、」

「メジャー!今はこれやってる場合じゃないでしょ!」

「てへぺろ」

「テヘペロ」

 ペロリと舌を出しながらも、ひかりとマリエも戦闘態勢に移る。

 山頂広場の東西南北の四辺に、奈々、ひかり、マリエ、大和がそれぞれ陣取った。

 さあ、箱根山決戦である。

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